小田急線鶴川駅は東京都町田市に位置しますが、南口を少し歩くとそこは川崎市麻生区岡上。この岡上は昔ながらの風景が残され、耳を澄ませば水路の音が心地よく、豊かな田畑が広がる……家庭料理「しばた」はそんな場所の一角にあります。
藍染の暖簾をくぐり、玄関の引き戸を開けると……
「しばた」は店主の柴田玉栄さん、栄治さん親子のご自宅の一部を開放し、野菜中心の家庭料理をいただけるお店です。メニューは玉栄さんが前日までに考えたものと、足りないものは当日仕込みの時点で決まるのだそう。地場野菜や季節の食材を中心に、保存食や冷蔵庫を見ながらのバランスと思いつき、さらに天候なども考慮し、玉栄さんと栄治さんのあうん呼吸で仕上げ、お客さまを笑顔で迎える準備を整えます。
炊き上がったご飯は、一番美味しくいただけるタイミングでおひつに入れます。季節のご飯には桜ご飯、みょうがご飯、大根ご飯、せりご飯、コーンご飯、黒米入りご飯、大豆ご飯、むかごご飯などがあり、「しばた」に伺う大きな楽しみの一つでもあるのです。
お二人はこうしたお料理のコツやレシピを取材でなくとも惜しみなく教えてくれます。「真似してくれることが嬉しい」と栄治さん。「お料理教室をしてほしい、と言われるけれど、いらした時に何でも聞いてくれれば良いのよ」と玉栄さん。
店内はお二人がすれ違うのがやっとの小さな台所と玉栄さんの押し花作品がずらりと飾られたリビングとダイニング。まるでおばあちゃんのお家にいるような懐かしくあたたかい空間の中でゆったりお食事をいただけます。
親子二人三脚で開店して15年を迎える「しばた」。実は驚いたことに、当初はサンドイッチとマフィン、ケーキの詰め合わせのデリバリーと併行していたのだとか! その美味しさが口コミで広がり大忙しだったのだそうです。中でもポテトサラダが大好評で今でも要望があるとランチでお出しすることも……「しばた」のサンドイッチ、いただいてみたかったな。
「しばた」のお食事をいただくと、野菜って本当に美味しいし楽しいと思うわたし。それは仕上がりの美しさと、パリパリ、シャキシャキ、サクサク、トロリ、シャクシャク、コリコリ、ホクホクなど一つひとつしっかりと野菜の食感を感じられるからです。お二人は野菜の切り方、茹で時間、塩の使い方、そしてお鍋と相談しながら火加減に細心の注意を払います。野菜の採れたてはものによってはやわらかく繊細であったり、季節や天候により野菜の水分量が違うため、このような調理方法でずっと変わらぬ味になるよう努めているそうです。
また、大切にしていることを問うと、「愛情、うちの調味料は愛情」。と栄治さんは答えてくれました。それは当たり前かもしれませんが、胸を張ってそう言えるお店は多くないのではないでしょうか。「しばた」の食材は特別なものではなく、どの家庭にでもあるもの、家庭料理なのです。美味しくいただけるよう、コツと一手間、そこに愛情が加わることで笑顔あふれる食卓に。なんて豊かで幸せなことでしょう……。
「しばた」のお客さまは毎月予約を入れる常連さんやリピーター、小さなお子さま連れのママたちも多く訪れます。また、大切な方をお迎える日に必ず「しばたのお弁当!」とオーダーする学校法人、数量限定のおせち料理を毎年楽しみにしている親子などバラエティーに富んでいます。そんなお客さまに優しく寄り添う玉栄さんと美味しいご飯を囲みながら、自然と会話の輪が広がることも魅力の一つです。
お食事は前日までの予約制。おひつご飯と野菜たっぷりの家庭料理で季節を楽しみたい方、ぜひ、玉栄さんにお電話してみてくださいね。きっと会いに行きたくなりますよ。
「しばた」
住所:川崎市麻生区岡上785(小田急線鶴川駅より徒歩約20分)
電話:044-988-2575
営業時間:11:00〜(メインはお昼ご飯。10名からの団体さまのみ晩ご飯の予約可)
定休日:月曜日
- 前日までの予約制(2名さまから)
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