寺家の空の下で 〜花と子ども〜
横浜市青葉区の寺家ふるさと村の自然を舞台に、子どもたちがのびのびと遊び、自然の素材を使って創作をする「子どものワークショップ」。四季の家や水車小屋の畑、畑の隣にある「育ちの森」など、寺家ふるさと村全体が活動フィールドです。今回、このコラムでは、その水車の畑とそこで様々に働きかけている子どもの姿をお伝えします。
(文=子どものワークショップ代表・浦部利志也 / 写真提供=子どものワークショップ)
※このシリーズでは、「子どもを育てる」現場の専門家の声を、リレー形式でお送りしています。

寺家ふるさと村に水車小屋があります。ご存知ですか。
水車小屋の正面には、一段低くなった面に田んぼがきれいに広がっています、その辺りに立って辺りを見渡すと、とても眺めが良く、四季の移ろいも感じられます。また、夕暮れ時の田園風景もお勧めです。その水車小屋の隣には、程よい広さの畑があって、それは「水車の畑」と名付けた子どもたちの活動の場です。

春がすみの中の水車小屋

まずは、水車の畑についてです。ちょっと、遡ってみます。寺家ふるさと村構想の整備の頃、ここは田んぼだったと聞きました。でも、私が初めてこの畑と出会ったのは、ここの畑のおじいさんが秋にコスモスをいっぱい咲かせていた頃。そして時折、寸胴のバケツを置いてその花を売っていました。そのおじいさんは、寺家で牛も育てていて、お邪魔して牛舎を覗くと可愛い子牛の姿が見られました。牛糞は貴重な肥料として大切に利用されていました。今、あらためて想うと、すごいこと。今の子どもたちにも、そんな営みを見せてあげたいですね。

土にふれると大人も子どもも笑顔に

実はそのお孫さんは、寺家で子どものワークショップの活動をはじめた頃に一番に来てくれた子どもの一人でした。そして、おじいさんから畑を子どもためのためにとお貸し頂いたのは17年程前のこと。それから今へとつながります。

どろんこになると遊びも開放的に

今でも、季節ごとに花を育てていて、春は菜の花、夏はひまわり、背丈はかなり違いますが、共に黄色い花です。寺家の景観をちゃんと彩り、拠り所としての役割も担っています。花の頃を楽しみにしている道行く人も多いこと。でも、近くで見れば分かると思いますが、なんと!雑草も育っているのです。これにはちゃんとした理由と大人の言い訳もありまして、一つは、花だけでない命、虫や小動物と出会える場を目指しているからです。

小さな命にこんにちは。寺家ふるさと村の夏はカエルの大合唱が毎晩聴ける

もう一つは、人手が少なく、手間が程よく追いつかないからです(ちなみにスローに畑仕事を手伝ってくれる方を募集しています)。とにかく、そんなことが重なり、今は、子どもが主体となれるちょうどいい畑となっています。

裸足になって種まき。大きく育ちますように

では、子どもたちは畑でどのような活動をしているのでしょうか。種まきや、雑草取り、収穫など一連の農の体験をします。クラスには2歳児からの親子の組もあります。小さな靴下をポイと丸め、裸足で土を踏みしめたりして、はじめての土の感触に驚きます。でも、しばらく慣れると笑顔で土に触れ始めます。高学年のクラスでは、ある子が「僕も耕耘機を運転したい」と言い、機械の振動で腕をブルブルさせながら一緒に耕したこともあります。

子どもたちの背丈を超えるほどに育ったひまわり

農的な体験とは別に、子どもたちはこんなことも続けています。それは、おじいさんがやっていた「花売り」です。夏にひまわりの花を畑で販売します。
花売りでは、子どもが全てに関わるようにしていて、始める前にどうしたら売れるか。いくらぐらいにするか。販売の方法や看板なども考えます。そして、畑に行きます。ちょっとボロの木板をテーブル代わりにして、新聞紙、キッチンペーパー、はさみ、新聞紙をその上に乗せてお店を出します。道行く人が「お花買えるの?」と尋ねてくると、「はい。このはさみで、好きなお花を選んでお切りください。お売りできるのは5本まで。1本50円です」と言って、初めて出会う大人と関わり始めます。子どもの背丈を超えるひまわりの道を行き、お客さんの側で、切った花を持ってあげたりしていました。少し慣れてくると「こっちの花がキュッとしていていい花ですよ」とおもてなしも満点に。お客さんからも「おばさんねー。毎年楽しみにしているのよ」とか「今年は意外に咲くのが早かったねー」とか、「この前ね、畑に入っている人が居たからちょっと注意しといたよ」とか、いろいろと子どもに話してくれます。私たちが居ない時も、いつも畑の成長を見てくれている人がいるのですね。

子どもは、摘み取りから戻ると、抱えたひまわりをテーブルの上に置いて横にして、お客さんを前に、あたふたと新聞紙で包みます、そして代金をいただいて、その方に花束を渡しました。そんな時の子どもの表情は何ともいい感じ。ドキドキしながらも、相手のために、自分の力を出し切ります。お客さんの顔をチラッとみると、同じ表情!それは、ひまわりのように、まん丸く見えるほどの微笑みでした。

小さなお花屋さん、準備中

これは、子どもたちが、種を蒔いた時からはじまっているワークショップです。花を育てて、咲かせて、その喜びを人とわかち合うのですが、花を介して出会ういろんな大人の方との直接的な関わりを持つのも大切な機会です。ゆったりとした自然の中では、みんな心を開いて、それぞれの想いも深まるのだと感じています。
やっぱり、心も動く学びは、空の下にいっぱいあるようですよ。

2月の終わりの頃、今年も菜の花が咲くことでしょう。

Information

子どものワークショップ(横浜市青葉区寺家ふるさと村)

http://www.childws.com

寺家・ソダチの森

http://www.childws.com/sodachinomori/sodachino_senburogu/sodachino_senburogu.html

「森のクッキングDAY

日時:2018112日(金)   10:0013:00

対象:親子(3歳以上・小中高生)、小学2年生以上は一人でOK

定員:8

参加費:1,500円(親子2人分、1人の場合は800円)

要予約:mori@childws.com 090-1215-0585

持ち物あり、直接ご確認ください

 

「森のこども道場:森の忍者道場」

師範:こいずみなおき

日時:2018114日(日)   12:3014:00(予定)

対象:おおむね小学生

定員:20名程度

参加費:100

要予約:mori@childws.com 090-1215-0585

すぐでき!コーナー(コンパクト体験プログラム)

日時:2018114日(日)   10:0014:00

対象:どなたでも

参加費:体験するものによってそれぞれ金額が違います

予約不要(当日受付)

<プロフィール>

浦部利志也子どものワークショップ代表)

寺家ふるさと村を拠点に、里山の自然を題材にした子どもの自然体験と芸術教育「子どものワークショップ」を展開する。今年「ソダチの森のあそびの日」大作戦!子どもゆめ基金助成事業がスタート。

毎月誰でも参加できる「あそびの日」「森のクッキングの日」を定期的に開催している。

そのほか、子どもの環境デザイナーとしての活動や、大学で造形表現の分野で教鞭をとるなど、多方面で活躍している

子どものワークショップ(横浜市青葉区寺家ふるさと村)

http://www.childws.com

寺家・ソダチの森

http://www.childws.com/kodomo_ws/zidomonowakushoppu.html

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