(この記事は、消費者力アップ県民提案事業の委託事業の一環でお届けしています)
2017年8月5日に、静岡県の浜松市で第3回ソーラークッカー全国大会が開かれました。全国大会とは言っても、年に一度のソーラークッカー愛好家の集い、といった雰囲気で、想像していたよりも、のどかで、ささやかな場といった印象を受けました。
自作のソーラークッカーで参加者に料理を振舞ったり、新しいタイプのソーラークッカーを開発して発表している人、それぞれ普段の活動状況を持ち寄ります。私はここで、真空管タイプのソーラークッカーの実力を見せてもらえたのが一つの収穫でした。
エネルギーの講座で紹介すると、ソーラークッカーそのものを知らない、使ったことがない人の方がまだ圧倒的に多いです。アウトドアキッチンという発想で見ても圧倒的にピザ窯の方が人気が高いのは、やはり見た目のギラギラ感のせいでしょうか。携帯性でいうと、登山家などが使う、小さなガスコンロの軽さと威力には負けてしまいます。自然が大好きという人にも、若干敬遠されているなと感じるソーラークッカー。
ソーラークッカーは太陽熱を集光するためパラボラアンテナ型であることが多いです。宇宙っぽさ、設置する際にかさばる不便さなどから、おしゃれでナチュラルな暮らしのイメージとはギャップがあるかもしれません。それよりも、「面白い!楽しい!」というシンプルな視点から、ソーラークッキングにのめり込む人が増えていくのかなと考えています。料理がむしろ特別好きではないズボラさんとか、とにかく省エネを極めたい人など、料理上手ではない人の方がもしかしたらハマるのかもしれません。関東では冬場も晴れ間が多いので、日常に取り入れやすい熱利用の一つとして、もっと認知度が上がるようにしたいものです。
太陽の熱を、土や石、または何か黒いものにためておく蓄熱という考え方、単純に水を汲んで温めておく、とか、逆に暑い時期には、木陰をつくる発想で熱を室内に入れない工夫をする等々……は、生きていくために必要な知恵であり、それぞれの生活空間において誰もが参加して、考えることができることです。暮らしの中のパッシブなデザインは、断熱工事に比べたらお金もかからないのが良いところです。こうした考えを進めていくとパーマカルチャーの世界に通じていきます。
現代的な暮らしを前提に考えると、ソーラークッカーはなかなか手が出ない、続かないものとなってしまいますが、太陽の熱、ソーラークッカーを使うことを前提にして暮らしていると、確実に自分が変わると実感しています。とても些細なことですが、森ノオウチで細々と開催しているソーラークッカーを使った料理シェアイベント「宇宙キッチン」で、ソーラークッカーを使う大人を見ている子どもたちがいることは、小さな誇りです。
ソーラークッキングの他に熱の働きを利用した暮らしの知恵として、打ち水が挙げられます。打ち水は、水を撒くから涼しいのではなく、撒いた水が蒸発するときに、アスファルトや石の表面の熱を奪うから涼しく感じられるのです。非電化冷蔵庫というのも、冷やしたいものが持っている熱を水に伝えて、それを冷たい宇宙空間に放射するという仕組みになっています。非電化冷蔵庫は、やはり今の暮らしが前提になっていると、暮らしに取り入れるのが難しいのですが、建築家と協力して、最初から非電化冷蔵庫が付いている家をつくれれば、イメージが変わるだろうと思います。曇りが続くと冷えないという弱みがあるので、電動のものと併用するのが現実的かもしれませんが、冷蔵庫無しの生活をしている人もちょこちょこ出てきてることを考えると、単純に、北側の寒い部屋は最初から冷蔵庫として使うというのもアリですね。
温泉がでる地域では、温泉のお湯や蒸気で調理が出来る場があったり、雪が降る地域では氷室があったりと、その地域ごとに、電気に加工しなくても利用できる自然界の熱はたくさんありそうです。素材に敏感になり、東西南北の方向感覚に敏感になり、季節に敏感になる。自然エネルギーへの感度を高める人生はとてもクリエイティブですよ。
……夜話(やわ)とは、
(1)夜間にする談話。また、それを書き記した書物。
(2)気軽に聞ける話、また、そのような内容の本。
(3)禅宗で、夜に修行場の訓話をすること。
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