





横浜市青葉区は美味しいパン屋さんの宝庫 です。そんな青葉区の住宅街にお店を構える「前田パン」。郵便局の斜め向かいにある赤いひさしが目立つお店に、7年前のオープン間もない頃、「何屋さんだろう?」と気になり入ってみました。あれから7年、パン屋さんの激戦区でもある青葉区で地元の方たちに親しまれるパン屋さんになっています。

茶色のお店入口とアイボリーの工房入口に映える赤いひさしの店構え。ついのぞき込んでみたくなる
お店ではパンを焼く香りと、店主の前田さんと奥さまが優しい笑顔で出迎えてくれます。お二人で切り盛りするお店は、親しみやすくシンプルで潔いとも言える分かりやすい名前の「前田パン」。今っぽさのある名前にするのでなくフランス語や英語でもなく、あえて「店主の苗字+パン」を屋号にしていることに、店主のこだわりがあるのでは? と気になり伺いました。
「パンはつくり手そのものです。前田が作るパンだから前田パンなんです。だから恥ずかしいものはつくらないしつくれない」。
店名の潔さは、前田さんのパンづくりに対する信念が込められているからなのかと感じました。

ボーダーTシャツに帽子のフレンチスタイルがお似合いな優しい笑顔の店主。おつかいの子どもたちとも親しげに会話
幼い頃はシャツのボタンをはめることも苦手だったくらい不器用だったと笑う前田さんがパン屋さんになろうと思ったきっかけは、海外で働きたかったからだそうです。大学生時代に海外を旅したことから、海外にも店舗のある人気のパンのチェーン店に就職。そこからパンの修業 が始まりました。
決められた焼き上がり時間に決められたレシピで規定どおりつくりあげることで 腕を磨き、その後フレンチレストランからの誘いで転職しレストランのパン部門を一人で任されました。そこから「前田が作る前田パン」に向けての試行錯誤が始まりました。レストランで提供される食事に合うパン。それを自分のレシピでつくり 食べてもらえる、買ってもらえるようになったことが嬉しかったと話す前田さん。この頃から「前田がつくるから前田パンだね」と言われるようになったそうです。

美味しそうな焼き色と香りに包まれるお店。夕方には売り切れてしまうパンもあるから、お目当てがあるなら午前中がオススメ
その後東京都内の代官山のパントリーで働き、横浜市青葉区の住宅街にある今の物件と出会い7年前に独立を果たした前田さん。「地元のお客様に支えられえきた」と言います。
同店で人気のバゲットフランセーズは、 口コミサイトにお客様の感想が掲載されてから、電話での問い合わせや遠方からのお客様も増えたけれど、だからといって自分のつくれる以上にたくさんパンを焼いて質を落とすことはできない、「今だけでなく地元のお客様に長く愛されるパンをつくりたい」と、無理に多く焼くこともなく丁寧なパンづくりを続けたそうです。

噛みしめるほどにじんわりうま味が広がり食事に合うパン。カンパーニュは意外にもお味噌汁にも合うそう!お味噌も天然酵母も同じ発酵食品だからと
「こだわらないことにこだわっている」ときっぱりと話す前田さん。
小麦の味がじんわりと広がる食事に合うパンや、おやつに嬉しいデニッシュ系、スコーンなど色々ありますが、パンの種類によってフランス産小麦や、国産小麦、天然酵母、イーストなど材料は使い分けられています。ただそれはパンをつくる入口のひとつであって、あくまでもゴールは美味しいかどうかである、と前田さんは言います。美味しくつくるために、こだわらないことにこだわっていると……。

国産小麦と無縁バターをたっぷり使ってさっくり仕上げられたスコーン。季節限定スコーンに出会えることも

4種類のラム酒漬けレーズンをカンパーニュ生地に贅沢に詰め込んだキャトルレザン。ドライフルーツたっぷりのパンは食事にもお茶の時間にも合う
取材中も訪れるお客さまと会話が広がります。通りかかったご近所の方、ジョギング帰りの方、そしておつかいに訪れた小学生の男の子。初めてのおつかいが「前田パン」というご近所のお子さんも結構いらっしゃるとか。お客さまの成長とともにお店も成長して営む赤いひさしの「前田パン」に、また訪れてみたくなりました。

「前田パン」
住所:横浜市青葉区黒須田33-5 タウンコートあざみ野1F
あざみ野駅からバス10分
電話:045-482-9420
営業時間:8~18時
定休日:日曜日

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