5月末の暑い日、横浜市青葉区・たまプラーザのマンションを訪ねました。DIYで少しずつ手を加えリノベーションしているという漆喰の壁や、手作りの棚や机が配置された室内には、観葉植物や花が飾られ、まるで小さなカフェにお邪魔したような気分に。爽やかな笑顔で迎えてくれた家の主、盛井康祐さんはプランナーとしてアパレルや雑貨ブランドのディレクションやイベント・商業施設の企画を手がけ、NPO法人スーパーダディ協会で理事を務めるパラレルワーカー。青山フラワーマーケットを運営する(株)パーク・コーポレーションの事業推進を担当していると聞き、さりげなく飾られた花々のセンスにも、なるほど!とうなずきました。
男性が楽しんで家事することを促し、家族に対する意識改革をミッションに2017年10月3日(とーさんの日)にNPO法人として発足したスーパーダディ協会。男女共同参画社会の形成の促進と子どもの健全育成に貢献していくため、あえてパパサークルではなくNPO法人化を選択したそうです。家事や子育てを楽しくするイベントや、子どもの病気時の対応、お受験・進学など、知っておきたい情報を学ぶセミナーを開催し、理事メンバーに加えて一般会員が増え続けているようです。協会の理念と社会的意義に共感した会員が広域から集まることが、ご近所パパのサークルとの大きな違いではないでしょうか。メンバーは、代表理事でテレビプロデューサーの高橋一晃さんを始め、キャスターや飲食店経営者など様々なキャリアを持っていて実に多彩 。私は勝手にオシャレでハイキャリアで都会的な……そんなイメージを抱いていたのですが、盛井さん曰く、スーパーダディ協会はキラキラ全盛期のスーパーなパパ集団ではなく、仕事と育児・家事の両立を目標に、妻の人生も大切にする「スーパーマンのようなダディ」を目指す集団なのだそう。
「私たちが大切にしているのは、固定概念にとらわれず“いろいろなパパのあり方を認め合う”ということです。都心派もいれば郊外派もいて、できないことも悩みもいろいろあるし、夫婦ゲンカだってする。だけどみんな仕事も子育ても楽しみたいし、妻や子どもを幸せにしたい気持ちは同じなんですよね。だから違いを認め合い、楽しみながらできるアクションを増やす活動をしています。”ゆる家事”もその一つですし、ダディたちが主役になる日として、アウトドアイベントも企画しています」と盛井さんは話します。
「ゆる家事」は、文字通りゆるく楽しみながら実践する家事のこと。家族の暮らしを維持するためにマストなことを夫婦で積極的にシェアすることを大前提に、「タスク化しない」「家族が助かるだろうなと思うことをやる」ということが楽しく継続するポイントなのだとか。
靴磨きの延長で子どものランドセル磨きを習慣にしていたり、アイロンがけを極めたり、DIYで家を便利にすることをがんばるなど、ゆる家事の定義は家庭によって「多様」。盛井さん自身もパートナーの仕事と家事で大変そうな様子や、「もっとこうなれば」という要望を聞いては提案・改善を繰り返しているそうです。
我が家はと言えば、私も夫もハードワーク傾向で、余力は子育て優先、家のことは夫婦共に「ゆる(すぎる)家事」に陥っているので、ダディたちの能動的な姿勢に感動すら覚えましたが、ゆる家事の好事例を聞けば聞くほど、家事をしっかりやりたいタイプの女性には、パートナーのモチベーションを摘みとらないよう、互いを尊重する「ゆるいまなざし」を鍛えることがとても重要だと思いました(笑)。
もう一つ、私の注目している取り組みが「ダディだらけのお花塾」です。盛井さんのお仕事先でもあるパーク・コーポレーションとのコラボレーション企画で、「男磨き」と称してパパたちがブーケ作りやツリー作りなどを学ぶというもの。
横浜市青葉区在住でお花塾参加者の相澤毅さんは、次のように話してくれました。
「新米ダディとしては“スーパーなダディ”のイメージに不安感満載で臨んだお花塾でしたが、参加者たちはみなさん“一生懸命”な“親ばかダディ”であることがすぐにわかり、ほっとひと安心。みんな夢中になって家族のためにクリスマスツリーをつくる姿は、微笑ましいですよね。お祝いなどイベントの時だけじゃなく、なんでもない日に1本でもいいから家にお花を持ち帰る。そういった小さな変化が、家族にやわらかな空気を運び、それが集う地域というのは、おだやかで暮らしやすいのではないかな、と感じます。お花に触れることではなく“家族を想う”という心が大切なのか、とお花塾を通して気づきました」
「子育て世代で仕事も頑張っていると、どうしても地域はベッドタウン化してしまいます。もっと血が通ったコミュニケーションが生まれ、地元にお金も回るようにできたらいいですよね。僕自身も子どもたちが公園で拾ってくる自然のもので、ワークショップのヒントを得ることもあるので、そこにあるものを活かして、多様な人たちの想いがクロスする点を、地域でも作りたいです。夫婦喧嘩について語るシンポジウムとか、おもしろいと思うんですよね」
SNSなどでイメージが独り歩きしがちな今だからこそ、大切なのは「リアル」と「オリジナル」なのだとまっすぐに話してくれた盛井さん。
お話を伺って、好きで選んだ住環境をベッドタウン化してしまうのは自分自身なのだと、私自身の暮らしを見つめなおす大きなきっかけになりました。日々慌ただしく過ごしていると、地域と関わったりお花を愛でたりする時間はどんどん少なくなってしまいますよね。そんな中でも、横浜市青葉区に盛井さんや相澤さんのような方がいるように、「スーパー(になりたい)ダディ」マインドを持ったパパがさまざまな地域に増えていることに大きな希望を感じます。
「個人のこと」である「夫婦喧嘩」も、多様なロールモデルの一例としてオープンにできれば、「社会のこと」になってしまうから不思議。森ノオトとスーパーダディ協会共催の「夫婦喧嘩シンポジウム」が実現する日も、遠くないと思います。
愛着のある街をもっと心地よい場所にしていくため、家族のことを考えたり、多様性の交わるところへ出かけたり、身近なところから見つめ直してみるのはいかがでしょう。
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