マルシェを楽しむ
横浜市神奈川区羽沢町で、毎週土曜日14時から3時間だけ開催されるきよ・マルシェを訪れました。
開店5分前、建物に足を踏み入れると、4列になる50人くらいのお客さんの行列。その視線の先には、葉付人参、葉付大根、キャベツ、レタスなどの定番野菜からコールラビ、ケール、ヤングコーンなどの珍しいものまで、28種類もの野菜が並んでいました。(2018年5月19日取材時)
14時ぴったりになると、「時間になりましたので、どうぞ」というお店の方の合図にお客さんの列はゆっくりと進んでいき、棚にある野菜は、お客さんのかごに次々と吸い込まれていきます。スーパーでは見慣れない新鮮な野菜、人々の活気、私もいち早く目当ての野菜を手にしたいという焦燥感……たまりません。だから直売所は大好きなのです。
商品棚を2周して、じっくり見定めた野菜を手にレジへ。そこには、かごいっぱいの野菜を手にしたお客さんの列ができていました。
進化しつづけるマルシェ
さて、買い物も終わって本題の取材です。駐車場の誘導をされていたきよ・マルシェの代表平本喜誉作さんからお話を伺いました。
すっかり運営スタイルが確立されていたマルシェですが、はじまりは6年前。平本さんの敷地に三好種苗さんが引っ越してきたことがきっかけでした。
「“空きスペースを利用してみんなで直売所をしてみませんか?”と三好さんから声をかけてもらってね。それまでは農家個人でばらばらで直売所をやってたんだよ。農家ではない三好さんの一声は(影響が)大きかった」と笑う平本さん。
市場にキャベツなどを出荷していた横浜市神奈川区羽沢町の農家10名が中心となって、マルシェははじまりました。
「運営当初は、簡易テントを張って、軽トラックの荷台に野菜を載せて販売したんだよ。雨の日はカッパ着て、それでもお客さんは来てくれたんだよ」と平本さんは目を細めます。
レジを購入し、今の建物になったのが3年前のこと。パートさんを雇い、当番制で農家さんが運営しています。その運営方法は少しずつ変遷してきました。
「お客さんの要望も多いし、営業日か営業時間を増やしたい。収入を増やして加工品もやってみたい」と平本さん。多くの人に自らつくる野菜を届けたいと夢はふくらみます。
これからも進化しつづける、きよ・マルシェが楽しみです。
「安くはない」の信念
取材も終盤になり、記事の掲載内容について確認していると、「“安い”って書かないでほしい」と平本さんから一言。
「野菜は決して安くはないのでね、安いと思って来たお客さんががっかりするといけないのでね」と柔らかな口調で平本さんは続けます。
その時は何気なく聞いた言葉でしたが、自らつくる野菜は「安い」ということを売りにしない、価格に見合った野菜を提供しているという平本さんの農家たる心意気をみた気がしました。
同時に、何を基準に野菜を購入するのか私に問いかけるものでもありました。
もちろん「安い」ということは私にとって大事な要素ですが、それだけではない気もします。(何をもって安いと判断するかも違いますが……)
きよ・マルシェを見渡せば、両手にあふれるほどのリーフレタス、先まで青々とした葉付きの大根、水滴の残るキャベツなど、見ただけでみずみずしいとわかる野菜がならびます。
そして、その一つひとつに農家さんのイラスト付きのポップが並び、「マルシェに立っているあの農家さんは、もしやこのイラストの○○さん?」と想像できるのです。農家さんというひとくくりの職業ではなく、○○さんという距離感で、生産者を感じられます。
平本さんたち生産者を知り、今、こんな野菜を収穫できる季節なのだと肌で感じ、それを直接手にして味わうことで、私は横浜での暮らしに、より愛着がわいてくるのでした。
それからもう一つ。多くの人のなかで、目当ての野菜をなんとか手に入れようとすると、ちょっと闘志がわいてくるのは、私だけでしょうか。
そんな戦いから手中におさめた野菜は、より格別な味わいなのです!
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