〜祭囃子が聞こえる〜 驚神社の例大祭(後編)
お囃子にのって勇壮な神輿が集い、獅子が優美に舞う、青葉区で最古で最大といわれる驚神社(おどろきじんじゃ)の例大祭。後編はいよいよ本祭り当日。大迫力の神輿の揉み合いから驚神社での合同礼拝まで、まるでタイムスリップしたような伝統が息づく1日をレポートします。(共同編集:梅原昭子・宇都宮南海子)

(前編はこちらから)

 

いよいよ例大祭本祭り日の10月7日。午前11時、あざみ野の平崎橋交差点付近(さどや前)に神輿や山車が集結すると聞き、あざみ野駅まで来たものの、駅周辺は「本当に今日祭りがあるの?」と思うほど、いつもと変わらぬ様子です。ひとまず、現地目指して歩き出すこと約10分、かすかに聞こえるお囃子と太鼓の音……。歩みを進めるほどにその音は大きくなって、さどや前に到着すると、色とりどりの袢纏を身にまとい、ギュッとハチマキを結んだ老若男女の凛々しい姿が目の前に! 意気揚揚としたかけ声が飛びかい、まさに活気あふれる祭りの始まり。あぁ、祭りの話は本当だったと信じられた瞬間でした。

 

各地区で袢纏の色やデザインが違うので、見比べてみるのも楽しい。ハチマキや手ぬぐいの巻き方がビシッと決まっていて、祭りへの意気込みが感じられる

 

「保木」の大太鼓のドーンドーンという音が高らかに鳴り響き、「平川」のピーヒョロロとお囃子が気分を盛り立て、「荏子田」「船頭」「宮元」、旧石川村の各谷戸宮が、「そいや!そいや!」とそれぞれの方角から神輿やお囃子の威勢の良い声とともに、さどや前に集まってきます。この様子を、空撮できる鳥の目が欲しい!と思うほど、各谷戸から集合してくるシーンは圧巻です。

 

全ての神輿が揃うと、いよいよ3基の神輿の揉み合いが始まります。担ぎ手はもちろん、観客の「さぁ、はじまるぞ」という身を乗り出す空気感に胸が高鳴りました。道路は人でごった返し、中央では神輿がもみあう。よく車で通る道が、まるで違う場所にいるかのような活気あふれる情景でした。

 

ぶつかりそうでぶつからない距離感で3基が迫力の揉み合い

 

神輿の揉み合いが終わってしばらくすると、次は奉納行列の始まりです。まずは先導役の保木大太鼓が出発! お囃子の音色とともに旧道を練り歩き、最終地点である驚神社を目指します。この日は気温も高く、日射しも強い。時々歩みをとめて休憩時間をとりながら、ゆっくりゆっくり進んでいきます。道中では地元の店がご祝儀を渡す場面も見られ、昔からこのような場面が繰り返されてきたのだな、と地域のつながりを感じる瞬間でした。

 

旧道を通って驚神社に向かう奉納行列がスタート。威勢のよいかけ声とともに、少しずつ進んでいく

 

驚神社に到着すると、互いの健闘を讃え合い、宮元自治会館前では神輿のもみあいが始まります。神輿とかつぎ手が大きなひとつの塊のようになって、右へ左へと移動しながらぶつかりあうさまは迫力満点!

 

お囃子の音色をバックにふたたび神輿がもみあい、入り乱れる!

 

わたあめ、くじ引き、ヨーヨーすくい。参道はさまざまな屋台でにぎわう

 

その後は各地区の代表者が集まって、驚神社への合同礼拝、続いて神社の境内にて「牛込の獅子舞」の奉納が始まります。笛や法螺貝の音色に合わせてゆるやかなテンポで踊る様子は優美そのもの。間近でずっと見ていると、時代が遡ったような、不思議な感覚に引き込まれていきました。

 

驚神社にすべての地区が集結したあと、合同礼拝が行われる

 

快晴の青空の下、大人が担当する笛や法螺貝、唄に合わせて、牛込の子どもたちがバチを打ちながら舞う。約一時間、舞いは続く

 

獅子頭は三頭で、剣角(けんづの)と巻角(まきづの)を持つ雄獅子二頭と、雌獅子一頭。鶏の羽で飾り、赤い布をたらしている

 

帰路の途中で印象的だったのは、祭りに参加した人達が浮かべる、清々しく穏やかな表情でした。これまでの練習の成果を出し切った充実感、無事に終わった安堵感、それぞれの想いが祭りの伝統とともに地域の仲間や子どもにも伝わって、受け継がれていくのだなと思いました。

 

驚神社に行くだけでも祭りの雰囲気は楽しめますが、やはりこの祭りの醍醐味を味わうなら、さどや前の神輿や山車の集結、そこから驚神社までの道中、最後の獅子舞まで、まるごと楽しむのがおすすめです。今年は祭り全体の迫力を楽しみましたが、来年は各地区の細部に目を凝らし、その魅力にも注目しながらじっくり見てみたいと思いました。お話を伺いながら掲載していない方々もいて、来年改めてインタビューをしたいと思っています。

 

今回、事前のフィールドワークからお祭り本番まで、この地に根付く歴史と伝統を知り、これまで見ていたまちの風景が違って見えるようになりました。几帳面に区画整理された道の横で、かつて人や馬が地をならした旧道が通り、現在の地図には載っていない旧地名の「小字」から土地の特徴を想像する。郊外住宅地の利便性がありながら、伝統芸能が形を変えながらも受け継がれてきたまち。青葉区に新しく移り住んで来た者として、この土地がさらに好きになる、そんな学びともなりました。

 

 

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この記事を書いた人
団桃子ライター卒業生
編集の経験を経て、森ノオトライターに。森ノオト編集部内では圧倒的にエコ度が低いことに引け目を感じつつ、“はぐれ森ノオト”目線で書ける記事もある、と開き直って記事をお届け。エネルギー源は、ヨガ、キャンプ、音楽、読書、コーヒー、美術館でのんびりすること。男子と女子、二児の母。
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