

文=まんまるプレイパーク・西田清美 /写真=まんまるプレイパーク
*このシリーズでは、「子どもを育てる」現場の専門家の声を、毎月リレー方式でお送りしていきます。
近所のまんまるプレイパークにいるおばちゃん・西田に先日、とっても嬉しいことがありました。私には、不似合いなカフェに入ったときのこと。アルバイトをしている大学生に見覚えが……。
でもちょっとりりしくなっていて人違いかな……。自信がないので声をかけられないまま注文をしたものを待っていると、
「お待たせしました……あー!に・し・ださーん!うわーびっくり〇▼□」
カフェには不似合いな歓喜の声を上げた彼。店内の人々が私に注目。
一緒にいた友人も思わず大笑い。
「いやー、まんまるに行きたいなって思ってるんですよ。みんな元気ですか?」
そんな会話をしながらコーヒーを受け取り、ほっこりとあたたまった夜でした。この笑顔の素敵なアルバイトの学生さんとの出会いは、10年くらい前。彼が小学校3・4年生の頃でした。まさしくギャングエイジといわれる年頃です。仲間と一緒に来て、けんかをしたり、大人にも憎まれ口を言ってみたり……。

まんまるプレイパークは、いつの時代もこの年頃の男の子たちが常連。いつも誰かがけんかをしているし、ひどい言葉で言い争いもしているけれど鬼ごっこやサッカーなどで盛り上がって、また翌日も遊びに来る
東日本大震災、2011年3月11日の地震の後のこと。
放射能の濃度がニュースになって、鴨池公園こどもログハウスの側溝からも高濃度の放射性物質を含んだ土が出たと発表されました。まんまるプレイパークにも「今の時期に小さな子を外で遊ばせるのはどうかしら?」と心配で声をかけてくださる近隣の方もいらっしゃいました。話は外れてしまいますが、地震の直後「このまま子どもたちが外で遊べない世界になってしまうのだろうか……」とあの時感じた大人としての絶望感と罪悪感を私は今でも忘れません。

NPO法人結ぶの「わすれない3・11(2012年)」というイベントに参加。風車のワークショップやチョコレートフォンデュのお店を出し、その収益を福島の子どもたちが来るキャンプにあてるという企画を進めた実行委員の子どもたち
話を元に戻します。
そのころ私たちは、ちょっとしたご縁で山形県と福島県会津坂下町と東京都西東京市の子どもたちとの交流がありました。まんまるの常連の子どもたちが、2012年1月に会津の雪中裸綱引きに参加させていただき、今度はまんまるに招待することになり、数名の子どもたちと実行委員会をつくり、手作りの宿泊イベントを考えようとしているときでした。
遊びに来た前述の彼が、「えー福島? 放射能? こわーい」。
世の中の情報が、そのように報道されていたのですから当たり前の反応だったと思います。でも2カ月前にその福島に行った常連の子どもたちは、少し違う気持ちでした。これから迎える福島の子どもたちに対してそんな気持ちを持ってほしくなかった。というのがそのときの私の正直な気持ちでした。でも彼がそう思ってしまったことも事実……。
それが、翌週の実行委員の会議に彼が来ていたのです。
「えっなんで……」と思いました。だって、実行委員の子どもたちは、彼とは学校も違うし、年も違うし接点がない(と、思っていました。)なぜ彼が来たのか、その理由は実行委員の子どもたちと彼は共通の趣味があったのです。まんまるプレイパークで過ごす中でお互いに鉄道好きだと気づいて、彼を実行委員に誘ったということでした。
春休みに福島の子どもたちを迎えるまでの2カ月間、毎週1回の会議を開催。(毎回全然進まなくて……)しおりを作り、(おもしろけりゃいいという人と少しの誤字脱字も見逃さない人……)当日の司会進行まで、(忘れてたり、その場にいなかったり、案内役が道を間違えたりもしましたが……)。
彼を含めた8人のこども実行委員がドラマチックに取り仕切ってくれました。福島から来た同学年の子どもたちと当たり前に一緒に楽しみ、自分たちの企画した地下鉄車両基地見学では、張り切って案内していました。

地下鉄グリーンライン川和町の駅から徒歩15分。実行委員の子どもたちと一緒に動いてくださったのが、「都筑をガイドする会」の三宅さんと大橋さん。お二人は、毎月1回のまんまるで紙芝居もしてくださっています。もう10年近いお付き合い

夜を一緒に過ごすことが、こんなにもわくわくすることなのか……。この日をきっかけに「まんまるキャンプ」がはじまりました。実行委員が、そのまま、まんまるキャンプ係に。私たち大人は、あくまでお手伝い。言い出しっぺがいて、一緒にやる人がいたときだけ、まんまるキャンプは開催しています。(現在、新たな実行委員がなかなかでてきません)
放射能についての問題は、離れた場所の関係のないことではなく、自分たちの問題として考えたい。一緒に過ごすことで、ニュースで聞く「福島」が、友だちのいる「福島」になる。
彼は中学生になって、夏休みにボランティアで来てくれました。やりたいと思ったことに素直に進むまっすぐな彼の良さをそのまま残して、小さな子どもたちに優しくて、気配りのできる素敵な少年になっていました。
思ったことを思ったまま口にする子どもたちで、いっぱいのまんまるプレイパーク。
つい先日もプレイリーダーのはんすと作ったツリーハウスに、自分より大きい男の子が座っていて、「どいてほしいんだけど。いやなんだけど。いたら乗れないんだけど。気持ち悪いんだけど」と、連発していた小学生。
言い続けたところで大きい男の子もここが大好きだからどかない、しかもリーダーと一緒にツリーハウスを作っているのは大好きなお父さんだから絶対ここにいたい。大きい男の子は、言葉で返すことなくずっとそこに座っていて、周りにいる大人も見守るだけ、小学生は、言うのをあきらめて最終的には自分も乗って遊んでいました。

山形・福島・西東京の子どもたちとの交流が始まるきっかけになったのが、「まんまるまつり」でした。鉄道好きの男の子たちが、警備員としてかかわりました。トランシーバーで見回り。落とし物を探し持ち主に返却。緊急時の避難経路などもパソコンで作って配布してくれました。大人の範疇にはなかったおまつりの参加に感動させられました

女子は、自分たちのお店を繁盛させようと工夫を凝らしたチョコフォンデュ屋さんを開店しました。おいしいものとかわいいものに目がない女子。かわいい紙コップやイチゴが高くて、もうけはほとんどなかったみたい……

その女子が、男子たちと実行委員として福島の子どもたちを迎えた後、こちらもこどもたちが企画する「つづきっこまつり」というお祭りに参加して 被災地のためにカンパをしました。その内容が、おもしろい。お客さんが、箱の中に入る。(まっくら)外から怖い話を聞かせる。途中で霧吹きで水をかけたり、箱を揺らしたりして怖がらせるというもの(笑)
自分の放った言葉で相手がどんな気持ちになるのか。そこに気持ちが至らないのは、相手を傷つけたいからではなく自分の気持ちに正直なんだと、まんまるプレイパークで子どもたちと過ごしていて気づかされます。それは、時間をかけて成長過程を見守らせていただけたからです。
同時に、言われた人の悲しい気持ちを考えます。寄り添える人がいてほしいです。直接言葉にしなくてもその場にいて感じてくれるだけでも何か違うのでは……と思います。
子どもたちが、傷ついたこと、傷つけたことが育つ糧になっていくためには、そばに親だったり先生だったり、友だちだったり、よそのおばちゃんやおじちゃんだったり。もしかしたら犬や猫のペットだったりを見守る人と、たくさんの時間が必要なのではないかと思うのです。たくさんの時間をかけて、子どもは大人になっていく。こたえは、そんなに早くは見つからないし、1つでもないのです。
そんなあたりまえのことを私は、時間をかけてまんまるに来る子どもたちから教えてもらってきました。おばちゃんも時間をかけておばちゃんになっています(笑)。

福島の子どもたちが来たとき、グループに分かれてセンター南駅からくろがね青少年野外活動センターまでミステリーツアーを楽しみました。途中世話人やその家族や中学生たちも協力してくれてワクワクドキドキの旅でした

これは、石の銅像に扮したプレイリーダーのまさみっちょ。大人がここまでやる。大人もとことん楽しむ。これが大事ですね

<まんまるプレイパーク>
毎週月・火曜日 毎月第2・4日曜日 11時から17時
都筑区鴨池公園内まんまる広場
http://manmarupp.ciao.jp/
<まんまるセミナー>
3月9日(土)13:30~16:30
横浜市立川和小学校コミュニティーハウスにてお話させていただく機会をいただきました。
NPО法人結ぶ

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