青葉区荏子田にお住いの城所(きどころ)律子さん。私の知っている律子さんは本の専門家であり、支援活動の人であり、音楽を楽しんでいる人です。引き出しの多い方なので、他にもたくさんの顔があるとは思うのですが、ここではその三つを中心に、私の尊敬すべき先輩、律子さんの魅力をご紹介しようと思います。
絵本や本の楽しさを伝えたい
律子さんは私の子どもたちが通う小中学校の図書ボランティアの先輩です。本に関することならどんな質問にもすぐに答えてくれて、的確なアドバイスをくれる律子さんは、周りの人たちからとても頼りにされています。私自身、この一年間、律子さんと図書ボランティア活動や、図書ボランティアフェスタといったイベントなどで一緒に仕事をさせてもらいました。あるイベントの企画中に、私が集客数をあげるために提案した案について、「それって子どもたちは楽しいのかな?」とピシリと意見を言ってくれたことがあります。「子どもたちのために」というまっすぐな視点の律子さんに背筋をただされた気がしました。違うことは違う、こうした方がもっといいと、いつでもはっきり物事を言ってくれる律子さんを、私は心から尊敬しているのです。
本や絵本が大好きだという律子さんは、JPIC読書アドバイザー(※)という資格を持っており、この資格を生かし、読書の楽しさを多くの人に伝えていこうと活動をしています。
※JPIC読書アドバイザー:一般財団法人出版文化産業振興財団(JPIC)の行う養成講座で、読書や出版について体系的に学ぶことで得られる資格
日頃から常に3冊ぐらいの本を同時進行で読み進めているという律子さん。それが「知識の宝庫」と呼ばれる理由かもしれません。読書アドバイザーの仕事内容は多岐に渡ります。新刊本の書評、読書感想文の審査員など、机に向かう仕事のほか、さまざまな活動をしています。本に関わる経歴を伺うと、「バンコク子ども図書館」設立運動への参加といった国際的な活動から、地元青葉区や近隣地区での読み聞かせや講座企画運営など、その活躍は枚挙にいとまがありません。律子さんの経験の豊かさに驚かされます。
五感を使った読み聞かせ
律子さんは、小中学校や、イベントなどでも読み聞かせをしています。読み聞かせについて「五感を使って楽しんで欲しい」という考えから、律子さんはいろいろな工夫を凝らしています。
例えば、『うたうしじみ』(作・絵/児島なおみ、偕成社)を読むときには、子どもたちにシジミを実際に触ってもらい、また、『てがみをください』(やましたはるお・さく、むらかみつとむ・え、文研出版)では、登場する「かえる」と「男の子」がはがきとして使っていたいちじくの葉っぱに手紙を書いてもらう。このように律子さんの読み聞かせは常に体験を組み合わせるなど、子どもたちの目線に合わせて考えられているので、子どもたちは目をきらきらさせて絵本の世界を存分に楽しむことができるのです。
律子さんはイベントなどでは音楽とコラボした読み聞かせもしています。実は、律子さんの息子さん、城所素雅(そが)さんは将来を嘱望されているヴァイオリニストです。素雅さんは、国内外のさまざまななコンクールで優勝し、仙台フィル客員コンサートマスター、千葉交響楽団客員主席他、N響など様々なオーケストラで活躍中という、ただ者ではない若手音楽家なのです。素雅さんの演奏とコラボした読み聞かせの会では、絵本を楽しみながら本物の音楽に触れることができるのです。
絵本の魅力とセツルメント活動
絵本が大好きだという律子さん。「短い文章と美しい絵で伝わる力はすごい」と絵本の魅力を語ってくれます。それを確信したのは、大学時代に支援活動対象地域に移住しながら福祉活動を行う「セツルメント活動」をしていたときのことです。不登校の子どもたちと文集づくりをした時に、「短い文章を使って表現すること」「絵を描くこと」で「生き生き」とした自己表現できるようになる子どもたちを見て、「これだ!」と確信したそうです。「短い文章」「美しい絵」で構成された絵本に強く惹かれる理由はここにあるのだと言います。たくさんの子どもたちを「生き生き」させたいと、律子さんは大学で文章を学んだ後、専門学校に通い美術を学ぶ道を選びます。
支援活動の人
ご自分の持っている知識や経験、時間を惜しげなく、ボランティア、子ども向けの支援活動に使っている律子さんをみると、律子さんの中には「支援活動の木」が青々を生い茂っているのだと私は思うのです。
律子さんは、小中学校の図書ボランティア、荏子田地域の子育て支援「えころん」の主宰、一年生支援ボランティアと、子どもたちへの支援を中心に常に活動を続けています。また、律子さんはコーラスやトーンチャイム など音楽も楽しんでいますが、それらもみな、だれかを楽しませたい、喜ばせたいという方向に枝を伸ばしているのです。
支援活動がライフワークとなっている律子さん。一体どんな子ども時代を過ごしてきたのでしょうか。
律子さんは能登半島、海の近くでのびのびと育ちました。たくさんの動物たち(サル、ニワトリ、フクロウ、ヤギなど)に囲まれて暮らしていたのだそう。子どもの頃はいたずらをずいぶんとしたそうですが(ここには書けないようなものも)、ご両親から怒られたことはほとんどなかったそうです。
お父さんはあるとき、「1日1回律ちゃんをほめる運動」を家族の中で始めたのだとか。どんな些細なことでもいいところを見つけ出して褒めてくれるお父さん。そんな子ども時代を振り返って、「怒らない子育てっていいわね」と律子さんは言います。
お寺である律子さんの実家では、お父さんが住職と小学校の校長を兼任していた時期もあり、夏休みになると寺子屋を開いていたそうです。ラジオ体操の時間になると、毎日30人ほどの子どもたちが集まってきていたのだとか。律子さんは自然と低学年の子どもの世話をしたり、勉強が遅れ気味の子どもに勉強を教えることも増えていったそうです。
どうやら、律子さんの中の「支援活動の木」はご両親が種まきをし、愛情をかけて、その寺子屋という環境の中で大きく育っていったようです。
市民が主催のチャリティーコンサート
音楽好きな律子さんが今、力を入れて進めているのは、3月8日にフィリアホールで行われる自然災害復興のチャリティーコンサート『あおばカノン』です。
第一回目のあおばカノンは、青葉区の全ケアプラザとあおば区民文化センターフィリアホールの主催で2018年3月に行われました。一回のみの開催予定だったあおばカノンですが、「この支援活動を続けたい」と考えた律子さんは、所属するトーンチャイムの仲間と、市民ボランティアグループ「レントの会」を立ち上げ、2年目からの同コンサートを引き継ぐことにしました。
市民ボランティアが主催ということで、立ちはだかったのは、お金の問題でした。律子さんたちは資金集めに奔走します。フリーマーケット出店、賛助会員の募集、助成金を受けるためのプレゼンテーションなど、できる限りのことを今も続けています。そして、フィリアホール、青葉区社会福祉協議会、個人や団体の協力を得て、『あおばカノン 2019』を開催できることとなったのです。
MECPへの支援
今回のコンサートで集める募金の寄付先に選んだのは、律子さんが以前から支援したいと思っていたMECP(Music Explorer Concert Project)です。MECPとは、東日本大震災の復興支援をしたいと考えた桐朋女子高校音楽科3年生の数名が2013年に立ち上げた音楽団体です。MECPは、力仕事も金銭的な支援もできないけれど、音楽を通して支援をしようと、小中学校や被災地などでみんなが音楽を楽しめるワークショップを開催しています。律子さんは、この若者たちのボランティア団体を支援したいと考えたのです。
律子さんは言います。「支援というのは、貧困層の人にだけ行うものではなく、何かを成し遂げたい若者たちにも必要なものだと思います」
『あおばカノン2019』
3月8日(金)にフィリアホールで開催される『あおばカノン2019』は出入り自由です。プログラム前半はアマチュアグループの演奏が中心に、後半はMECPによるワークショップがあります。
また、ホワイエ(ロビー)での出店も充実しています。カフェがあり、休憩コーナーがあり、雑貨や小物の絵本の販売もあります。子どもが音楽に飽きたら、ホワイエで遊ぶというのもいいですね。誰もが、一日中楽しんで過ごせることでしょう。
『あおばカノン』は支援という輪で作られていると律子さんは言います。
東北復興支援、「MECP」への支援、ホワイエに出店してくれる福祉施設への支援、普段は小さい子ども連れでコンサートには入れないママたちへの支援にもなります。そして、来場してくれた人たちも自然災害被災地への支援ができるという素敵な支援の輪です。
律子さんは「支援活動は続けなくては意味がない」と言います。本当に必要なことを見極めながら、「ちいさき人、よわき人、一生懸命な人」たちを応援する律子さんは温かくてかっこいい人なのです。
『あおばカノン2019』
日時:2019年 3月8日(金)11:00〜15:00
会場:青葉区民文化センター フィリアホール
(青葉台東急スクエアSouth-1 本館5階)
東急田園都市線「青葉台駅」より徒歩3分
入場無料:募金にご協力ください
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