





東急田園都市線・藤が丘駅からけやき通りを歩いて15分。もえぎ野交差点近くに、陽ざしが気持ちいいテラスが見えたら、それが食堂POCOです。

食堂POCOの名前は、店主の平野育子さんのお子さんが小さい時、ポッコリふくらむおなかを見て思いついたそうです。酵母がぽこぽこ沸いてくる、そんな様子も一緒に表しています。以前この場所でお店を開いていた「喫茶とごはんと ここにわ」さんから期間限定でお店を借りていたご縁もあり、この場でのオープンにつながったそうです
食堂POCOに私が初めて訪れたのは、まだ寒い冬の日でした。店内にはストーブが焚かれ、その上にはやかんがしゅんしゅんと沸いていて、おいしいにおいが満ちていました。扉を開けるとそこには居心地のいいあたたかな空間が広がり、心がほっとゆるみました。

赤ちゃん連れにもうれしい小上がりとテーブル席やカウンターがあり、友だちや家族とも過ごせるし、一人で訪れてもくつろげます
2017年9月に食堂POCOはオープンしました。
お店を切り盛りする平野育子さんは埼玉県秩父郡にある4代続く老舗うなぎ屋で生まれ育ちました。子どもの頃はキッチンが遊び場で、今では4代目を継いでいる弟さんと、どちらの料理が美味しいか、とよく料理対決をしていたそうです。
ファッションの専門学校に通った後、一度はアパレル業界で働いたものの、激務による過労とストレスで体調を崩したそうです。そのことをきっかけに「服以外でやりたいことを考えたら、食だった」と料理の道へ進みます。
食べることで体を大事にしようと、マクロビオティック(穀菜食などの食養生を基本とした長寿法)の料理が学べる学校へ通った後、マクロビオティックに基づいた料理を出す飲食店で経験を積み、29歳の時に結婚を機に青葉区へ移り住みました。
その後も、子ども3人の出産、育児をこなしながら自然派レストランで働いて料理の腕を磨きます。一人目の長男の子育ての時には、その食や生活の知識を生かして自然な育児をがんばったものの、しんどかったと振り返ります。
「例えば食で言うと、すべてマクロビオティックを基本にするときつくなってくる。本当はしんどいと思っているのに、自分の声を無視して自然派育児を美化していく自分に気づいた」と育子さんは話します。
まわりにいた保育園の友達にもまれながら、「テキトーな自分」を思い出していったそうです。今では「子育ては苦手」と笑い飛ばす育子さんの話を聞きながら、私自身も無添加や布おむつの生活の中で、子どもを一人で寝かしつけながらしんどいと感じた夜があったことを思い出しました。

小学生や保育園に通う3人の子どものママでもある育子さん。「旅行は家族の了解をとる前に予約して、強硬突破!」と笑います
「使える素材が限られると料理が楽しくなくなる。自分が食べたいものを、自分がおいしいと思ったものを来てくれた人に食べてもらいたい」と、今はマクロビオティックだけにこだわらず「おいしくて、出所がわかって安心できる、自信をもってお客さまに勧められるもの」を使って育子さんは料理を作ります。食堂POCOでは鳥取県から取り寄せている自然栽培のお米をはじめ、できるだけ自然栽培(肥料・農薬に頼らず植物と土の本来持つ力を引き出す農業)や無農薬、オーガニック食材を使っています。

お肉と魚が選べる人気のPOCO定食。KIDS向けの定食やカレーもあり、自然派ワインまで用意されていて大人にも子どもにもうれしいメニューです

注文が入ってからお野菜はていねいに盛り付けられ、お肉はふわっと焼きたて、フライや春巻きなどはカリッと揚げたて
育子さんの作るごはんはとても丁寧で細やかな工夫が凝らされています。
シャキシャキ感たっぷりの葉物野菜だったり、ホクホクがおいしい芋類だったり。素材そのもののよさが育子さんの手でもうワンランクおいしくなり、どれを食べても「美味!」と口の中に幸せが広がります。定食にいくつも入っている小鉢は、一品一品の味つけや食感、色味などが仲良く調和して、全体がバランスよくまとめられています。
そして何より、ピカピカのご飯にお出汁のおいしいお味噌汁! 「あー、日本人でよかった」と一粒残らず、一滴残さず食べたくなるおいしさです。食堂POCOのお出汁は実家の老舗うなぎ屋でも使われている真昆布と鰹節を使った、育子さんが子どもの頃から親しんだ味だそうです。

3/16(土) 17:00-20:00(LO) 「出汁と酒のつどい」。鰹昆布出汁や鶏ガラ出汁を使ったおつまみやご飯を、「無類の酒好き」と笑いながら自称する育子さんセレクトの自然派ワインや日本酒などと一緒にワイワイ楽しむイベントです。1500円(ワンドリンク+おつまみ)
食堂POCOでは、時々開かれる「Sunday market」や「ベツバラ」という名のお菓子のブッフェ、料理教室や味噌づくり、生演奏の音楽イベントなど、わくわくするおもしろそうなイベントがたくさん開かれています。
「自分ができることは限られているから、それぞれの分野のスぺシャリストと一緒に、お互いに高めあえる場があれば自分は楽しい。それに賛同してくれるお客様が来てくれるといいなと思う」と育子さんは話します。
育子さんがお店と関わるスペシャリストたちに敬意を払い、彼らを大切にしていることが、お店で出される珈琲や使っている器、飾られている絵やドライフラワーなどを見ていて伝わり、それらが食堂POCOの雰囲気を作っている気がしました。

お店の奥には、お店で使っている作家さんの器や食堂POCOのオリジナル手ぬぐいを作ったイラストレーターさんの絵が飾られていて、なごやかな雰囲気です

私の大好きなキャロットケーキ。食事のあとについ食べたくなるお菓子たちは、旅で見つけたおいしい味を食堂POCO風にオリジナル開発したパイナップルケーキや、定番のショートブレッドやPeanut butter cashew nut chocolate cookieなど、何があるかはお楽しみだそうです
事前予約をすればランチをお弁当にしてテイクアウトをしたり、お菓子を注文することもできるそうです。私の周りでもたくさんの女性が仕事を抱えながら家事をして、膨大な「to do list」を日々こなしています。忙しい毎日の中で、安心安全な食材や手間をかけたおいしさを家族に食べてもらいたい、でも時間がない!と葛藤している人は多いのではないのでしょうか?そんな時、食堂POCOのごはんで、たまには主婦業をお休みする心の余裕を持つこともいいと私は思います。

このお弁当、お味噌汁付き。小さいお子さまのいる方はおうちでお友だちと食べたりもするそうです。これからの季節、お花見やピクニックにもいいですね
よく笑い、快活な声で次から次へと楽しそうに話してくれる育子さんは、生命力にあふれているように私は感じました。その育子さんが「いい!」と選んだ食材もまた生命力にあふれていて、大切に料理された食堂POCOのごはんを食べると私は元気になります。

「旅行で訪れた台湾では朝ごはんを外で食べることが普通だったし、夜の屋台では自然と子どもがごはんを食べていた。そんな風に皆で子どもを育てていくのもいいな、と思った」と育子さん。台湾料理の「神山鶏の鶏肉飯(チーロー飯)」や「鹹豆漿」など「自分が食べたいものを作る」と話す育子さんのこれからのメニューも楽しみです
食堂POCOの湯気のたつ温かいごはんは「ごはんできたよー」と呼んでもらえた子ども時代を私に思い出させてくれます。そして、お母さんが作るごはんのようでいて、まねのできないプロの料理人の味に「食べることは幸せだ」と改めて感じました。
ごはんは生命の恵み。何度食べてもまた食べたくなるおいしいごはんが食堂POCOにあります。これからもずっと通い続けたいお店です。

食堂POCO
〒227-0047 横浜市青葉区みたけ台44-1グレイスムラタH号室
045-511-8363
www.instagram.com/syokudou_poco
火-土:11:00~17:00
定休日:日、月

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