花や緑との対話で人生をより深く美しく。女性樹木医第一号、塚本こなみさんインタビュー
あしかがフラワーパークの大藤の移植で知られる塚本こなみさんが、10/19(土)青葉公会堂にいらっしゃいます。今も造園家として、また樹木医として、現役で全国を飛び回る、こなみさんの生き方・考え方に、きっと多くの方が感銘を受けることでしょう!(トップ写真:提供ーはままつフラワーパーク)

6月末の晴れた日に、私と編集長北原は森ノオト初の新幹線出張取材でJR浜松駅に降り立ちました。目指すは、浜松駅からバスでおよそ40分、広大な敷地の中に、四季折々に花を楽しめるエリアを配した、はままつフラワーパークです。

 

塚本こなみさんは、現在、あしかがフラワーパークからは離れ、はままつフラワーパークの理事長をつとめられています。

 

「ここは本当に美しいです。心が行き届いていて、人に優しい。心も体も解放されるようにつくっています」と、こなみさんは、静かに、かつキリリとした口調で話されます。

取材に行った北原と、インタビュー前に体感せねば! と、フラワートレインで園内を周遊し、温室で珍しい熱帯植物に出会ったり、本当に心も体もリラックスして楽しみました

こなみさんが理事長になった当時(2013年)の公園は、いまと全く違っていたそうです。今では、立派な藤の木も植わり、芝生は早春から青々としています。女性のガーデナーと組んでつくったボーダーガーデンも美しく、レストランでは、こなみさんの畑でつくられた無農薬の野菜が使われたメニューもあります。ちなみに、7月・8月は誰でも入場料無料。季節ごと、花の見頃によって変動する料金制は、あしかがフラワーパークで型をつくり、はままつフラワーパークでも採用されているものです。

 

しかし、はままつフラワーパークの仕事は「非常勤なんです」とおっしゃるこなみさん。ご自身の会社も経営されていて、山形、松江、新潟等々、全国各地で仕事をされています。手帳には、びっしりと予定が書かれており「私は、一年360日は仕事しています。私は仕事人間」だと、きっぱり言い切る姿に新鮮な感動がありました。なにせ森ノオトは足元の地域と暮らしがテーマのメディアです。でも私には、各地を転々と巡る仕事が、そのまま暮らしになっているこなみさんの生き方も素敵だと感じました。そんな母親の背中を見てきた3人のお子さんたちが、どんな暮らしや仕事をしているのかについては聞きそびれてしまったので、また、お会いした時に伺いたいと思っています。

忙しさを感じさせない優雅な佇まいのこなみさん。写真奥に写っている三角形の花壇は、地域の子供がデザインしたものだという

「結婚して、尊敬している夫の造園業を支えていくんだと思っていましたが、当時の造園業界では土地の造成が盛んで、木がどんどん抜かれていって、本当にひどいと感じていました。造園業者側も何かをつくったらおしまい。つくるばっかりで、つくった後の手入れが本当は大切なのに、誰もそれをやる人がいなかったんです。それで夫に相談したら、いいよと言ってくれたので、自分で会社を立ち上げました」と語るこなみさん。今でも造園業界は男性社会だと思われますが、思い切った行動ですよねと応じると、「幸い、女性の感性が必要だと言われて、ありがたいことに最初から仕事がどんどん来たのです。その後、女性で初めて樹木医の資格を取ったということで、マスコミに取り上げられて注目されたおかげもありますね。仕事が好きというよりは、喜んでくれる人がいるからです。お客さんが、わたしの手がけたお花や木々を観て、時には涙を流して喜んでくれたりするのです。それを見るとよかったな、役に立ったって。それが原動力になって仕事を続けています」

 

そんな、タフなこなみさんですが、一度だけ体が悲鳴をあげて入院することに。病院のベッドからただただ空を眺めていた、束の間の至福の休息をよく覚えているそうです。

 

「自然に勝る芸術はないです。青い空と、雲をずーっと見ていました。あの時は本当に幸せでした。私も、偉そうなことを言っているけど、人は、葉っぱ一枚つくれない。私たちはおおいなる自然の一員です」

 

人間が主という考え方は違うのだと言う、こなみさんは、「次の世代にどんな地球、大気、空気、水を渡したいか? 考えて行動しなければなりません。ここ(はままつフラワーパーク)では除草剤を極力使っていませんが、本来植物に農薬はいらないんです」。 そして、「植物には人間性を回復する力がある」と確信を持って語ります。実際に、精神を病んでしまった青年が園内で働くことで、自信を回復し、新規就農して独立したという話も聞きました。

控えめな印象だが、言うことははっきり言います。誰よりも早く身軽に動く姿は、「風の谷のナウシカ」のもう一つの未来の姿?などとも感じた

自然の一員として、また、疲れたり不安で乱れた心身を回復させるために、こなみさんが勧めるのは「マイツリー、マイフラワーを持って、毎日対話すること」です。

 

「小さな子どもたちに、実際にマイツリーとの対話を毎日続けてもらったら、一カ月で、みんなびっくりするほど変わったのです。もちろん、木が実際に話してくれるわけではなくて心で対話するのよ。だけど、乱暴だった子が落ち着きを取り戻したり……私もよく対話していますよ」と、にっこり笑います。樹木医として、実際に数々の木々の命を長らえてきた人が言うと、言葉の重みが違います。

藤の満開の季節は逃しましたが、今年、初めてあしかがフラワーパークを訪ねました。こなみさんが移植した大藤に対面し、その厳かな佇まいと迫力に圧倒された私は、フラワーパークというもの自体を侮っていたと反省したほど

時代の要請なのか、見て楽しむだけでなく、積極的に植物に触れる時間の大切さが、福祉や教育の面からも求められています。はままつフラワーパークでは、学校に通うのに困難を抱えている子どもたちに花育の場を提供しているそうですが、それは、つくることより、育てること、手入れすることの重要性にいち早く気づき、実践してきた、こなみさんの強い意志があるからなのだなと感じられました。

 

幸い、青葉区には公園も街路樹もたくさんあり、個人邸の庭も立派で、里山も残っています。学校や病院でも、多くの人が花壇づくりに関わっていたりします。お気に入りの一本、一花を見つけるのは、難しくないでしょう。フラワーダイアログあおばでは、花や緑を通じて人が対話し、交流できる風土づくりを進めていますが、たった一人からでも始められる、花や緑そのものと対話することも、「フラワーダイアログ」なのだと、こなみさんの話を聞いて、改めて気づかされました。

 

こなみさんのお話は、まだまだ尽きないのですが、この続きはぜひ青葉公会堂で、直に聞いてください。当日は、区内の園芸屋さんや造園屋さん、花農家さんも登場し、植物と、それに関わる魅力を伝えてくれるはずです。

 

小さな「花端会議」の輪が波紋のように、あちこちで広がってハーモニーとなるような、そんなイメージを共有すべく、会場にも花緑をつうじた仕掛けで楽しめるように準備を進めています。

講演会への参加申し込み受付も始まっています!

Information

10/19 (土)「花端会議をはじめよう!」

塚本こなみさん講演会&花と緑の交流セッション

 

日時:2019年10月19日(土) 14:00〜16:15(開場13:30)

会場:青葉公会堂(青葉区市ヶ尾町31–4)

参加費:無料

申し込み方法:event@morinooto.jpに①参加者全員のお名前②申し込み者の住所③メールアドレス④電話番号⑤保育の有無をお書き添えの上、メールでお願いします。Eメールをお持ちでない方は、上記内容を明記の上、青葉区企画調整係へFAX(045-978-2410)でお申し込みください。

 

未就学児の保育のお申し込みは、開催2週間前の10/4(金)までにお願いします。お申し込み時にお子さんのお名前、性別、月齢をお書き添えください。赤ちゃん、乳幼児をお連れの方は、親子室をご利用いただけます。

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この記事を書いた人
梅原昭子ライター
引き算の編集が好きです。できないこと、やりたくないことが多過ぎて消去法で生きています。徒歩半径2キロ圏内くらいでほぼ満ち足りる暮らしへの憧れと、地球上の面白い所どこでもぶらりと行ける軽さとに憧れます。人間よりも植物や動物など異種から好かれる方が格上と思っている節があります。
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