映画の冒頭のシーンでは、光の射す枯葉の上を、色とりどりの帽子をかぶった子どもたちが、かごを持って歩いています。「さぁ、食べられる草を発見だ」という先生の声で、一斉に枯葉を掘り、緑の葉を摘んでいきます。「何の葉っぱかわかる人?」「七草!」今日は保育園で七草がゆを作る日です。青空の下、先生の七草の歌に合わせて、子どもたちは包丁で野草を刻みます。羽釜の火の番をし、刻んだ野草を釜に入れます。七草がゆの由来を園長先生に教わり、七草の名前を大きな声で唱和します。できたお粥を夢中で食べた子どもたちの顔は、満足感にあふれていました。自然の中で五感をフルに使う、生活に根差した豊かな食育と、子どもたちのたくましさが印象に残りました。
映画には「健康なお腹と畑が微生物でつながっている」ことを良く知る、発酵の楽園に住む先人たちが出演します。山梨県で「畑育」を実践しているみいづ保育園園長の日原瑞枝さん。長崎県のオーガニック野菜農家の菌ちゃん先生こと吉田俊道さん。青森県のオーガニック果樹農家であり、奇跡のりんごで知られる木村秋則さん。山形県のオーガニック稲作農家で和法薬膳研究所を主催する、有機農業の里高畠の菊池良一さん。先人たちの田畑での日々の活動や科学的な調査結果が、ドキュメンタリー形式で紹介されます。有機農業で田畑を耕すに至るまでの長い道のりを語る彼らの言葉の端々に、自然への畏敬の念や、次世代へ思いをつなげていく気概が感じられて、私は日本の有機農業の広がりに希望を持てました。
前作『いただきます ~みそをつくる子どもたち~』のテーマは、「You are what you eat 食べたものがわたしになる」。
玄米和食給食を実践する福岡県の高取保育園、神奈川県の麦っ子畑保育園を舞台に、伝統的な和食の素晴らしさが描かれていました。園の子どもたちのアトピーが、食の力で改善されていく様子に感銘を受けた私は、玄米食を取り入れようと、すぐにネットで精米機を購入しました。また、味噌だけでなく、手作り醤油にも初挑戦しました。
我が家は家族全員花粉症とハウスダストのアレルギーがあり、加えて息子は動物と、果物アレルギーがあります。小さいころから腸が弱く、ヨーグルトや乳酸菌飲料など種類を変えて継続しましたが、体質改善には結びつきませんでした。
私の叔父は佐渡で有機の米作りをしています。天日干しのはざかけ米は、抜群に甘くて香りが良いのです。叔父に頼んで玄米を送ってもらいました。息子は初めから、割とおいしい、と玄米を食べてくれましたが、白米好きな夫に合わせて、五分付き米から玄米食を始めました。夫は糠の味がする、と言いながらも、100%の玄米を食べられるようになりました。今では、まれに、玄米はおいしい、と思えるようになったそうです。私は便秘知らずです。安心して食べられる有機米を作り続けてくれる叔父のおかげで、我が家は玄米食を取り入れることができました。体質改善を目指して、今後も玄米和食を継続していきます。
世界がEU基準のオーガニックの流れに向かう中、日本は未だ遺伝子組み換え食品の原材料表示がなされず、残留農薬基準の大幅緩和を行いました。私は日本の食に不安を感じています。この映画の中では、地域ごとにオーガニックなコミュニティが生まれ、それを求めて移住する人がいたり、市の小中学校の給食がオーガニックのお米になるなど、「発酵」や「オーガニック」を軸に、確かな変化が始まっていました。
日本本来の食文化でもある「発酵の楽園」が各地で実現すれば、小中学校のオーガニック給食や、外食や中食もオーガニックが広がり、スーパーでもっと気軽に有機の野菜や米を買うことができるのではないかと思います。日本でも安全な食生活を送ることは夢物語ではありません。
私は映画を見て、初心者向けの野菜栽培の本を購入しました。今年の夏休みには、叔父にぼかし堆肥や、畑の土作りを教わろうと思っています。
あなたもこの映画で、発酵の楽園を訪ねてみませんか?
『いただきます ここは発酵の楽園』
2020年/日本/81分/カラー/DCP//16:9
プロデューサー・監督・撮影・編集 オオタヴィン
ナレーション:小雪
エンディングテーマ:坂本美雨withCANTUS
劇中挿入歌:ザ・ハイロウズ
出演:吉田俊道/木村秋則/菊地良一/日原瑞枝(みいづ保育園)/
小倉ヒラク(発酵デザイナー)/山本太郎(長崎大学)/
杉山修一(弘前大学)他。
制作:イーハトーヴスタジオ
2/29(土)よりシネマ・ジャック&ベティで上映!
(横浜市中区若葉町3-51)
上映時間等は公式HPでご確認ください。
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