市が尾駅西口からバスロータリーを右方面へ、国道246号線手前の急坂を登りきった左側に、落ち着いた黄色と白の綺麗な建物があります。この3階建ての建物が「くらしてらす」です。建物手前には駐車場や駐輪場も設置されています。
1階には生活クラブ生協のお店「市が尾デポー」、2階には横浜市認可「ピッピみんなの保育園」、3階には生活クラブの組合員や地域の方も利用できる会議室があり、建物の屋上には太陽光発電が備わっています。保育園や会議室へは建物正面左側のエレベーターから入り、エレベーターホール横には、太陽光発電による蓄電量がわかるパネルが備え付けられています。エコライフに興味がある私は太陽光発電と聞いただけでワクワクします。
1階のデポーの店内にはパン屋さんやお惣菜コーナーがあります。パン工房の併設やイートインスペースは生活クラブとして新たな試みなのだそう。2階の保育園のお迎えに来るお母さんたちが、夕食のお買い物ができたり、お子さんと一緒にイートインを利用できたりと、子育て世代にもうれしいつくりになっています。
森ノオト読者の皆さんには、生活クラブの存在をご存知の方も多いかもしれません。実は私も組合員の一人です。生活クラブを知ったのは、子育てを始めた頃のことでした。
子どもを産んで、悩んだことの一つが「この子に何を食べせたらよいのだろう?」でした。私の娘は小さく産まれて、食も細く1年経っても2年経っても母子手帳の発育曲線の一番下の線から上に入ったことはありませんでした。人と比べなくてもよいことですが「最初の子育て」でもありどうしても気になってしまいました。そんな時に当時住んでいた川崎市鷺沼からも近い「生活クラブ宮前平デポー」を知って生活クラブと出会い、単純な発想かもしれませんが、「人は食べたものでできている」、何かを変えるなら食べ物からだと思ったのです。おかげで、娘は好き嫌いも全くなく、とても元気に成長しました。引越しもあり生活クラブを一度退会しましたが、ご縁があって今は霧が丘デポーの組合員です。
そんな生活クラブの新拠点くらしてらすが市が尾にできたと聞き、ずっと気になっていたのです。今回、改めて生活クラブの成り立ちや仕組み、くらしてらすの魅力を紹介したいと思い、横浜北生活クラブ生協協同組合理事長の三浦紀子さん、理事の土肥美穂さん、建物を設計されたオルタスクエア株式会社常務取締役の坂内博さん、事業部次長の保原鉄治さん、の4人にお話を伺うことができました。
そもそも、生活協同組合とは、消費者一人ひとりが出資金を出し合って組合員となり、協同で運営・利用している組織のことを指し、全国にはさまざまな生協があります。
そんな生協組織である生活クラブは、全国に約40万人いる組合員が「出資」「利用」「運営」を支えています。「他の生協と比較としても目を引くのが、活動に当事者として関わっている組合員の数が群を抜いて多いことです」と、三浦さん。組合員リーダーを中心に、話し合いを基本にして、厳しい食品基準の中から消費材(生活クラブでは商品のことを消費材と呼ぶ)を選んでいったり、勉強会を開催したり、運営の意思決定をしているのです。活動の根本が「問題の解決」です。ないなら自分たちで作っちゃおうと、生産者との関係も対等に、一緒になって商品開発などをとことんやってしまうところがすごい、と感じます。
私の住む青葉区、近隣の緑区、都筑区、港北区、鶴見区を範囲としているのが、横浜北生活クラブです。同エリアの組合員は17,000人います。生活クラブに加入すると、消費材の配送サービスや、デポーでの買い物ができることを中心に、生活クラブ電気への切り替えや、共済、家事代行サービス、組合員同士の勉強会など、会員向けのサービスがたくさんあります。
そもそもデポーとは「荷捌き所」としての意味があります。今でこそ個別配送が9割を占めているそうですが、昔はご近所さんで「班」を構成して共同で購入するスタイルでした。
牛や豚丸ごと一頭を、集まった家族で部位ごとに分ける。魚もしかり。みんなで必要な部位を平等に分けていたそうです。当然そこには「話し合い」が生まれます。一つの部位を何人もの家庭が欲しがることだってあるはずです。「めんどくさいところからの話し合い」が始まる。その根本にあるマインドは、今のデポーという形でも、消費者と提供者ではなく、一緒になって考えていくスタイルを変えていません。「めんどくさいからこそありがたさを実感できる」、「めんどくささを失ってはいけない」。三浦さんも土肥さんも同じことをおっしゃいました。
地域に貢献できる建物に
くらしてらすの建っている場所には以前、横浜北生活クラブの配送センターがありました。神奈川県内にある5ブロックある生活クラブのうち、最も古い建物であり、神奈川生活クラブ生協発祥の地でもあります。
老朽化と耐震性の問題で建て替えの検討をしている時、みたけ台デポー(藤が丘)の移転のタイミングと重なったことから、くらしてらすの構想が始まったそう。新拠点としての機能はもちろん、「地域に貢献できる建物にしたい」という視点で認可保育園に入ってもらったり、地域の誰でも利用できる会議室を設けました。原子力発電や、化石燃料に頼らないエネルギーの独自生産を計画し、現在は屋上に太陽光パネル123枚を設置。設置費用は寄付によって集めました。館内で使用する電気の一部を賄うほか、余った電気は蓄電池に保管して非常時に建物内で使用できるそうです。取材時の2月末は、建物の2階3階の電力は、太陽光発電で賄えているとのことでした。これから日が伸びていくとどれくらいの蓄電ができるのかも興味のあるところです。
蓄電については、「災害時に店舗で販売ができるように備えています」と坂内さん。普段のあたり前が通用しない災害時にこそ、いつものお店が開いていることや安全な食が手に入ること、「助け合いの文化」を持つつながりが、私たちの心を救うのではないかと、皆さんお話を聞いて感じました。
地域を照らす灯台に
暮らしを照らす、「くらしてらす」。名称の由来は、運営会議で挙がったたくさんのワードを合わせて出来た造語なのだそう。ソーラーパネルもあることから、まさに地域を照らす灯台のような印象を受けます。
1階のデポーでのイートインのコーナーを設置や、2階の保育園では給食で生活クラブの食品を調理して提供していたりと、建物全体が地域との接点を持てるような工夫があります。また今回の取材でも伺った3階の会議室は、組合員に関わらず利用できる地域交流の場です。
三浦さんは3階について、「まだまだ知られていないのですが、次世代・多世代交流ができる場を目指していきたい。ほかにもアートやお笑い、音楽などの文化的交流の場、地域の方々のアソシエーションの場としていきたい」と期待を込めます。今後どんなイベントが行われるか楽しみです。何かやりたい方は利用方法も問い合わせてみてくださいね。もしかしたら私も何かイベントをしているかもしれません!
生活クラブの新しい試みで建てられた「くらしてらす」の魅力は、安心で安全な食の提供、電気という明るさの提供、人が集まり笑顔になる場所の提供、イベントなどの地域情報の提供をできることが挙げられると思います。こんな素敵な拠点ができたことは、組合員としても地域住民としてもとてもうれしいことで、これからどんどん利用されてほしいと思います。
今回の取材を通じて「くらしてらす」は地域を明るく照らす灯台になるべく建てられたのだと実感しました。今の時代、地球規模で思いも寄らないことが起こってきています。災害時はもちろんですが、何かが起こった時に頼りになるのは地域の「互助」の力です。この建物はそんな気持ちの集大成だと私は思います。
これからたくさんの方たちが集まり、話し合いによってますます使いやすくなっていくように思います。「くらしてらす」から始まる今後のつながりも楽しみです!
<生活クラブのHPはこちら>
くらしてらす:市が尾デポー
https://kanagawa.seikatsuclub.coop/service/depot/ichigao.html
横浜市青葉区市ヶ尾町1161-8
開所時間:11:00-19:00(水曜定休・祝日開所)
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