2020年は社会が大きく変化し、立ち行かなくなりそうなお店や企業の経営や事業に対し、国や行政からもさまざまな支援金や補助金が出ました。またインターネットを活用した寄付の仕組み「クラウドファンディング」でも、これまで一般的だった新規事業の一部の資金を調達するプロジェクトよりも、コロナ禍の影響を受け資金難に陥ったために立ち上がったプロジェクトをたくさん見かけました。私もSNSを中心にしてたくさんの「お金」にまつわる情報に触れ、知っているお店や団体、会社がクラウドファンディングに挑戦していること見かけては小額ではありますが寄付する側、になることが多い1年でした。
寄付って、きっといいこと。
でも「寄付しました!」と言葉にすると何だか恩着せがましい感じがする?
でも「寄付してほしい!」とお願いされると、急に相手との心の距離感が出てしまう?
そんな自分の内側にある疑問に答えるように、寄付にまつわる本をいくつか読んでみました。その中で特に印象に残ったのが、この言葉でした。
「我々は寄付の“文化”を持たないのではなく、特に明治維新以降、国家による公共への依存の期間が長かったせいで、寄付の“体験”を十分に育んでこなかっただけです。寄付を体験し、そしてそのお金で世の中が少しでも良くなったと言う実感を得られる、そんな成功体験を積めば、きっと寄付はもっと一般的になっていきます」。(引用:『「社会を変える」お金の使い方』駒崎弘樹著、P53-54・鵜尾雅隆さんの言葉より)
欲しい未来を自分で選択して、そこに対して投資するのが寄付で、その結果、世の中が少しでもよくなったと実感できる成功体験を積んでいくが重要だと、この本には書かれています。大人になって、お金にも気持ちにも余裕が出たらできると思っていた寄付ですが、もし子どもの頃から、その実感を持てる寄付体験を積めるとしたら、おもしろい未来になりそう!そう感じた私は、この機会に小2の息子と「寄付」について一緒に考えてみることにしました。
わが家では普段から子どもたちにも「お金」の話をよくしています。両親の給与から住まいにかかる費用、旅行や買い物にいくら使っているのかなど。それもあってか、小2の息子はお金に関心が高く、将来はお金持ちになりたいし、年末の宝くじが当たるかどうかもドキドキしています。息子が冬休みに入ったタイミングで、寄付について考える日を設けました。
息子は学校でまとめてユニセフを通して寄付した経験があり、「寄付とは、お金を集めて困っている人たちに届けるためのもの」と理解しているようでした。いわゆる募金箱にお金を入れるだけじゃなくて、クラウドファンディングだったり、物資支援、プロボノ支援など寄付にもいろんな形があることをまず私から話し、これまで私がしてきた寄付的なアクションの経験談を話すと、よりイメージが伝わった手応えがありました。
息子から「ぼくも寄付してみたい!」と声があがりました。いいぞいいぞ。相談の結果、寄付の原資は彼のお年玉から。例年、祖父母や親戚から頂いたお年玉の総額の4分の1程度を、彼の好きに使ってよいお金として渡し、残りを貯蓄にまわしています。今回は実家への帰省を見送ったので、彼にとっては残念ながらお年玉をもらえる機会が減ってしまいそうなので、受取り予想で算定して、寄付額を決めました。息子の寄付に使う予算は5,000円。さて、息子はどんなところにお金を託すのでしょうか?
社会問題を知る入り口に
寄付額が決まったら、次は「どこに」寄付をするかというところ。どんなところに寄付したい?と聞いてみると「生活に困っている人……かな。テレビで観たことがあるんだけど、お金を盗まれちゃった人とか、地震とかでお家が壊れてしまった人とか……」と息子。私が思っていたよりも具体的な寄付先のイメー ジがありそうです。
大人が「ここに寄付するのがいいよ」とおすすめすることは簡単ですが、息子自身が社会にある問題や活動している人たちがいることを知る機会になるとよいなと思っていました。もう少し、視点を広げてみるために「社会問題見えるカルタ」を使ってみました。
「大西洋の魚の4分の3からマイクロプラスチック検出」
「世界中に埋まっている地雷の数 5,000万個」
「世界では3人にひとりが トイレを使えない」
「不登校の小中学生13万4,398人」
カルタの札の裏に書いている文字を「へ~」とか「え?トイレがないって大変だね……」などと言いながらめくります。日本だけでなく世界のほかの国で起きていることを、カルタというゲーム性もありながら学べるのが魅力的です。
寄付先を考えるために、もう一つ。『世界を変えるお金の使い方』では、どんな団体が、いくらで、何人に、どんな支援をやっているのかが丁寧に紹介されています。100円からというわずかなお金でも、具体的に何人のためになる支援なのかがとてもわかりやすく、息子も興味津々。数字がイメージできたので、こちらの本に掲載されているプロジェクトから寄付先を選ぶことにしました。ちょうど学校で習っているかけ算も使いながら、気になった支援内容で、寄付金額の計算をしていきました。
息子が選んだのは、「100円で、バングラディッシュのストリーリチルドレン20人がコップ1杯の牛乳を飲むことができます」(NPO法人シャプラニール=市民による海外協力の会)と、「700円で20個のおにぎりを路上生活者に提供。温かい食事と温かく見守る気持ちが彼らの自立を支えます」(フードバンク)の2つのプロジェクト。予算5,000円を分けて、2つのプロジェクトに寄付をすることに決めました。ほかにも候補があった中で、その2つのプロジェクトを選んだ理由を聞くと、「だって、こっちのほうがたくさんの人にあげられそうだから」と息子。なるほど、数が多く届くというシンプルで明快な理由が気持ちよいなと思いました。
息子が初めて託したい先を自分で選んだ寄付体験。しっかり者の息子は「前に本で読んだことがあるんだけど、寄付したところ(団体)が悪いことにお金を使ってしまうこともあるんだよね?」と一言。そうなんです。寄付して終わりではなく、託したお金が、どんな風に使われて、その団体がどんな活動をしているのか、そこも一緒に見守っていくことを息子と約束しました。息子の寄付体験が、彼をどう育てていくのだろうか、その未来を考える私がとてもワクワクしています。
社会課題を少しでも良くするためのアクションは、寄付にお金に限らずさまざまあります。お金のこと、寄付のこと、ぜひ家族と子どもと一緒に考えてみませんか?
社会問題見えるカルタ
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