公園らしくない公園、ワクワクする場所を残したい〜野津田・雑木林の会〜
町田市野津田町にある豊かな自然に囲まれた野津田公園。スポーツ総合公園として開発されている中、人の手が入っていない場所、どんな出会いがあるかわからないワクワクする公園であってほしい、その思いで、たくさんの動植物を育み、また遊びに来る人たちに癒しと笑顔になれる雑木林や草原を大切に守ってきました。(2021年ライター養成講座修了レポート:木津明子)

2020、私はサッカーチームFC町田ゼルビアのホームグラウンドGIONスタジアムがある町田市野津田公園の近くに引っ越してきました野津田公園は多摩丘陵の豊かな自然に囲まれた町田市野津田町にある40ヘクタールの大きな総合公園です。 

現在この公園の西側5割ほどが陸上競技場、サッカー観戦競技場、野球場、テニスコートと様々なスポーツをメインとした運動公園となっています。その一方で公園の東側には、自然豊かな里山の風景も大きなスケールで残っています。 

野津田公園東側にある「上の原広場」の原っぱ。娘が通う保育園でも日々この原っぱで元気に遊びまわっています。そしてこの場所は子どもたちのいちばんのお気に入り。春から夏にかけて夏草が育ち、子どもたちの格好のかくれんぼできる遊び場に!

 この土地に昔からある自然が、公園の開発により壊されそうになった際に、地域住民に呼びかけ、何度も町田市と対話し必死に守ってきたのが野津田・雑木林の会です。1980年に野津田公園予定地を総合公園として整備する都市計画が決定。その後、運動施設を中心とした基本計画が発表され、地域の豊かな自然環境を守るべく、地域住民や地域の学校・施設の関係者が主体となり1986年に野津田・雑木林の会の前身「野津田公園を考える会」が発足しました。 

 

現在、会は主に野津田公園の東側に残っている野原と林「上の原広場」をベースに活動しています。会の代表を務める久保礼子さんに今の思いや今後の展望についてお話を伺ってきました。 

 

私は久保さんにお礼を言わなければと思い、取材の最初にこう伝えました。「野津田公園って、すごく素敵な公園ですよね。私は夫婦喧嘩した時などによく来るんです(笑)。小鳥のさえずりや大きな木に触れた時のひんやりとした温度、ススキの群生を見ていると本当に癒やされます。この豊かな景色を守ってくださって本当に感謝しています。もうこの自然が壊されることはないんですよね?」 

 

「そうとも限らないんです。『トップが変われば方針も変わる』ものなので、私たちはまだまだ安心できません。これまでも、何度も振出しに戻っていますし……。今後はわからないんです」と久保さんは憂いた目で話します。 

 

「私たちは争いたいわけではありません。ただ、公園らしくないわずかに野生が残るこの風景、野原と林が好きで、自分たちの世代だけ楽しんで終わらせるなんてもったいない。今の子どもたちや、もっともっと先までずっと、この楽しくて豊かな場所を残してあげたいだけなの。だからできる限り市や管理会社とは仲良く手を取り合って活動するようにしているんです 

野津田公園の管理会社と一緒に作成した看板。ビオトープや虫たちの生息する環境などについてわかりやすく説明がされています

自然を守っていくには、真っ向から開発を進める市に反対するのではなく、市と手を取り合っていくこと、立場の違う相手に、そこに生きる動植物たちのこと、自然の大切さをわかってもらうことこそとても大切なことなのだと私は感じました。 

 

会は現在、どんな活動をしているのでしょうか? 
野津田公園には都市部にはいなくなってしまった動植物がまだ生息しているの。昔は当たり前に身近にいた虫や当たり前にあった草花が、今は絶滅危惧種や希少種になっているので、会では公園に住む生き物を観察して記録に残すフィールドワークを行っています。『きつねはらっぱ冒険あそび』といういわゆるプレーパークと呼ばれる遊びを開催したり、町田市立中央図書館4Fの児童書理科の一角に足元の自然と関連の本を紹介するや『小さな自然コーナー』を設置したり、虫博士、植物博士などその道のプロを呼んでのワークショップを開催したりなど、この野津田公園に残る自然を生かし、大人から子どもまで幅広い年齢層を対象に里山のことを伝える活動をしています 

 

野津田公園から小野路町にかけての図師・小野路歴史環境保全地域で春を見つけにいくハイキングのイベントの一コマ。久保さんが絵本を見本にどんな春を見つけられるかお話しています。じっと聞く子どもたち

 
また、野津田・雑木林の会は「自然と人のつながりの拠点」となる「のづた里山の家」を2015年にオープンしました。こちらは、公園に隣接する農村伝道神学校の敷地内にある平家を借用した家です。 

こちらが里山の家。玄関前には乾燥した丸太が3本。「丘の上秋まつりの時にこれを使って演奏会があったの。いい音するのよ〜」と久保さん。実際に叩いてみると、3本の木の音が異なりきれいな音やゴツゴツとした感じの太めの音がしました。面白い!

 久保さんに案内され家に入ると、モグラやウサギの写真、昆虫や草花などの写真が飾ってありました。 

「これってモグラですよね?」と私が尋ねると、「そうなの。子どもってすごいのよ。自然観察会の時にね、『土がモゾモゾ動いてる』って言うから、すぐに『捕まえて!』って言ったの。そしたら子どもがすかさず手を土に入れて、その土ごと持ち上げたら、その中にいたのがこのモグラなのよ。子どもの俊敏さって、捕まえる能力って、本当にすごいわよね!!」と、久保さんはとても楽しそうに話しました。 
また、棚の上にはウサギの写真とともにうんちも飾ってありました 

 

公園内の草地調査中に偶然出くわしたで野ウサギ。昼間に出会うなんて!と感動と驚きにその場は包まれたそうです。私もいつか出会って見たいな

 「そう、ここにはまだ野ウサギが生きているのよ。ワクワクするわよね。木津さん、普通の公園ってワクワクする?」 

 

突然の質問に私は悩んでしまいました。 

「ワクワク……。楽しいとは思います。心の底からワクワクするかと聞かれると、違う気も……。どの公園も人の手が隅から隅まで入ってますしね」と私が答えると、「そうなの。私たちはワクワクする公園でいてほしいの。公園らしくない公園ってステキじゃない?」そう話す久保さんはまるでいたずらっ子のようでした。 

 

「これ、イベントの時にいつも掲げるの」と久保さんが見せてくれました。 

 

イベントの際に掲げる会の思いが綴られた看板。木の板や麻ヒモなどで手作りしてあります。この思いが公園を作る側にもあったら……と考えてしまいます

 「これが会の全てかな。ワクワクする場所をいつまでも残せるように、これからも楽しんで会を続けていくの。アートや音楽、映画、文学、社会学、いろんなジャンル、性別、年齢関係なく自然を守り、生かしてつながりを作っていけたら……」と久保さんはにっこり微笑みました。 

 

帰り際に、私は久保さんに野津田公園のいちばん好きな場所を尋ねました。 

「やっぱり上の原かな 

私と同じだ。みんなあの場所は心惹かれる魅力的な場所なんだ。うまく言葉では表現できないけれど、この記事を読んだ人にぜひ訪れてみてほしいです 

 

 

そして久保さんの言った「トップが変われば方針も変わる」。この言葉が、インタビューを終えた今も私の心にずしりと響いています。私たちの選び方一つで、今では“貴重、特別”となってしまった環境がさらに大きく変わってしまうこと。自然に癒やされている私や子どもたちだけではなく、そこに住み生きている木々や草花、動物たちのためにも、久保さんの言う「ワクワクする場所」をいつまでも残していきたい、楽しみながら見守っていきたいと思います。 

 

Information

野津田・雑木林の会 

http://www.nozuta.net 

この記事を書いた人
木津明子ライター
長野県出身のイラストレーター。雑誌や書籍、ウェブなどで仕事をしている。かつては都会に憧れていたが、今は自然の中にどっぷり浸かっていたい。山登り、ハイキング、骨董、美味しいもの探し、キャンプが好き。食べられる草花を勉強中。のんびり、楽しく暮らせたらと思案中。2児、3ニャンコの母。
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