あざみ野のレストランに生まれた地域の居場所「コミュニティキッチンCocoron fromアンジュ」
東急田園都市線・あざみ野駅から歩いて約7分「レストランアンジュ」の一角に、今年の4月に地域の居場所「コミュニティキッチンCocoron fromアンジュ」が生まれました。運営側の総合プロデューサーの役割を担うNPO法人「みどりなくらし」の堀由夏さんに、プロジェクトの立ち上げの経緯や運営、地域の方にどのように使っていただきたいかなど、思いを聞いてきました。

「コミュニティキッチンCocoron fromアンジュ」(以下、Cocoron)では、月初めの週末に、ワークショップ、地域のお店や近隣農家さんが出店してお菓子や小物、野菜、手作りのお弁当を販売する「Cocoronマルシェ」を開催しています。月末の平日夜には、大人は500円、子どもは300円で食べられる、新鮮な川崎野菜を使った品数豊富な「季節のお野菜たっぷりプレート」を提供しています。

 

活動場所は、株式会社東京コールドチェーン(以下、TCC)が経営するレストラン「アンジュ」の一角です。元は20名から30名が利用できる団体席があった場所でした。コロナで団体客の利用が少なくなり、スペースの有効活用をするためにキッチンを設けました。平日はTCCがメーカーとの商品開発のためのキッチンスタジオとして使用し、休日はCocoronに場所を提供しています。

 

 

普段はレストランとして開店しているアンジュがCocoronの舞台に

 

TCCは、安心、安全な食を提供するというこだわりで、添加物不使用の冷凍食品をメーカーから購入し、主に生活協同組合パルシステム(以下パルシステム)などの生協に卸している会社です。「コミュニティキッチンCocoron fromアンジュ」というプロジェクトは、TCCの宍戸 正雄社長の「地域活動に貢献したい。でもやりかたがわからない」というパルシステムの元理事長への相談が始まりでした。

 

「サスティナブルボックス」は、TCCから提供された賞味期限の近い冷凍食品の詰め合わせ。デザートや総菜など3000円相当の品が1000円で購入できる。マルシェや野菜プレート提供日に販売

 

パルシステムつながりで、パルシステムの元常任理事であり、現在はNPO法人「みどりなくらし」代表の堀由夏さんに声がかかりました。「みどりなくらし」は、次世代を担う子どもたちに緑あふれる地球を残すため、「身の丈から半歩先に」をモットーに、食、農、エコな暮らしをテーマに、川崎市中原区を拠点に活動しています。コロナ禍では、育児講座や親子向けの料理教室など、多くの活動をオンラインで実施しました。他にも緊急事態宣言で地域の子育て支援センターが休館し、行き場がなくなった親子のため「子育てサークルみどりっこ」の立ち上げに尽力するなど、コロナ禍で外出しづらく孤独な育児をしているママたちの不安に寄り添う、きめ細やかなサポートをしています。

 

TCCの宍戸社長と堀さんとの共通点は、安心安全な食へのこだわりと、新しいかたちの子ども食堂への思いでした。

 

Cocoronの調理を担当するママ料理家さんたち。写真右から3番目が堀さん。3年前に農園フェスで一緒に活動して以来、食の情報交換を続けてきた。今回の話がきたとき、彼女たちが真っ先に頭に浮かんで即答できたそう。堀さんが信頼をおく自慢のチーム

 

「本当に困っている人は、聞かれたら『大丈夫』と言います。川崎市内で給食が始まっていない時、『ダイエットしているから』と昼食を食べない中学生がいました。スマホは持っているけれど、実は100円の昼食代すらもらえないほど生活に困窮していたことに、周囲は全く気付きませんでした。お金があって食べ物を買えても、作るのが苦手で食生活がおろそかになっている人もいる。こういう人だけおいでとか、ここはこういう場、と区切りをつけること自体が、そもそもおかしいのでは?心の貧困、食の貧困は外からは見えないし、人によって違います」と堀さんは熱く語ります。

 

天井が高く開放感あふれる店内

 

だから、Cocoronは、おしゃれにこだわりました。ジャズが流れる素敵なレストランには、各テーブルに1輪の生花が飾られています。

 

この日のメニューは全9品。レジのカウンターに手書きのメニューが置かれる。デザートには写真のロールケーキがTCCより提供された

 

野菜プレートの盛り付けもおしゃれにこだわり、写真映えする一皿です。辻クッキングスクールで10年、自宅教室で10年の講師歴を持つやじまゆかさんを中心に、食の分野で活躍するママたちが作るので、味は保証済みです

 

Cocoronには、子どもが生まれてからこんな素敵なところで食事をしたことがない、というママたちもやってくるそうです。

 

「贅沢な、という人もいるかもしれないけれど、レストランに入った子ども連れのお母さんが、わぁ、素敵、って疲れた心が明るくなって、月に1回人が作ったものを食べることで、1カ月間、心豊かに穏やかに、育児を頑張れるかもしれない。素敵なところでお食事できるよ、みんないらっしゃい、と広く門戸を開いたら、本当に困っている人も来るかもしれない。相対的に救っていくことで、地域や世の中が良くなっていくんじゃないか。虐待を防ぐことにもつながるかもしれない。それが私のCocoronに込めた思いです」と堀さん。

花田美香さんは川崎在住。3歳と1歳の男の子と来店。「普段は外食しようとは思いません。1歳の息子が動き回るので、他のお客様の目も気になりますし。でも、ここは子ども連れ歓迎なので、電車を乗り継いでも来たいと思っています」

 


Cocoron
の特徴は、企業と生活協同組合、市民活動団体とが連携して運営していることです。一般的な子ども食堂では、働く人の多くは手弁当のボランティアです。食材を集めるのにも苦労して、疲弊している場も増えているそう。Cocoronの食材は、お米をTCCが、それ以外はパルシステムが提供してくれるので、新たに購入する食材は、地産地消や身土不二でこだわっている川崎野菜のみです。場所も提供するTCCは、野菜プレート提供時には調理配膳、後片付けにも社員が任意参加しています。スタッフとの調理やお客様と接する楽しさに目覚め、リピート参加の社員もいるそうです。また、TCCがみどりなくらしのNPO会員になることで、料理スタッフへの謝礼も出すことができています。

 

こちらはお子様ランチ。私もプレートを食べましたが、当日朝に仕入れる川崎野菜がシャキシャキと新鮮。当日の9種類のおかずは野菜たっぷりでヘルシー。おかわりがしたくなるほどでした

 

「企業は、今SDGsやエシカルなど、CSR活動を積極的に推進しています。子ども食堂と企業が連携することで、企業側は社会貢献活動を社会的にアピールできる。生活協同組合の食材の提供は、営業活動の一貫です。チラシや食材でパルシステムを広めることで、新たな仲間が増え商品の購入につながる。私たち市民活動団体は、この場所を地域にオープンにしていきます。人材、お金、商品など、それぞれの得意分野を出し合い地域を良くしていく。誰も損をしないので、これからの子ども食堂のモデルケースになれたらいいなと思っているんです」と堀さん。

 

企業や協同組合は、金銭面以外でも将来的なメリットが明確であれば、先行投資をしてくれて、市民活動団体と協力体制が組めることに納得しました。コロナ禍の緊急事態宣言で、外食産業に営業制限がかかる中、余剰在庫を抱えている企業や協同組合、生産者に出会える可能性が、今は高いかもしれません。でも、一般の子ども食堂には、そういったパートナーとの出会いがなかなかないのでは?と聞くと、「自ら発信し、あちこちで声をあげ続けることが大切」と堀さんは答えてくれました。声を聞いた人がつなげてくれるそうです。堀さんも場所を借りたいとあちこちで言い続けたら、今の拠点である古民家「NAYA」を貸したい人がいる、と情報が入ってきたと経験談を語ってくれました。

 

あざみ野は、開発により若い世帯も転入してくるけれど、昔から長く住んでいる人もいる地域です。老夫婦の世帯や一人暮らしのお年寄りもいます。

「今はコロナ禍なので、マルシェと野菜プレートの提供にとどめていますが、ゆくゆくは、アンジュのキッチンスタジオで、地域住民が中心になって運営し、みんなが集えるコミュニティがつくれたら、と考えています」と堀さんは、今後の展望を話してくれました。例えば地域のおばあちゃんが講師のつけもの講習会に、若いママたちが習いに来てくれるようなつながりをつくっていきたいそうです。「マルシェも、地域のお店に出店していただきたいし、野菜プレートも、青葉区の農家さんの野菜も使っていけたらと考えています。地元あざみ野の方や青葉区の方にぜひ来ていただきたいです。私は地域も広い範囲で捉えていますので、地域を良くするという意味で、地域は広く活動は狭く掘り下げて一つひとつやっていけるのが理想です」と堀さん。

 

地域貢献活動は、継続することで地域に根ざし、地元の方が気軽に集える場所になると私は考えています。Cocoronは、息の長い活動ができる条件がそろっています。コロナが落ち着いたら、野菜プレートを料理家のママたちと参加者が一緒に作ることも、レンタルキッチンを地域に開放して地域発のイベントを開催することも可能になります。これからが楽しみで、地域の皆さんがうらやましいです。

 

私の住む地域では、コロナで今年も夏祭りなどの行事が中止。学校行事も参観の禁止や制限があり、地域に住む人たちとの交流の場は激減しています。外出制限を通じて、私は地域の人とのちょっとした挨拶やたわいないおしゃべりが、生活の潤いになっていたことに、あらためて気づかされました。程度の差こそあれ、多くの人がコロナで交流の断絶を経験した今、地域に開かれたCocoronは、人々の対面での交流をゆるやかに再開できる場所として、これから地域の皆さんの拠り所になっていくことでしょう。

Information

コミュニティキッチンCocoron fromアンジュ

https://comu-cocoron.jimdosite.com/


住所:横浜市青葉区あざみ野南1-17-1
東急田園都市線・あざみ野駅東口から徒歩約7


<マルシェ>

毎月月初の週末に開催。次回は87日(土)。子どもも楽しめるおにぎり弁当や手作りグミなどの夏休み企画があるほか、森ノオトでおなじみのお店も出店予定。

<季節のお野菜たっぷりプレート>

月末平日夜に開催。728日(水)と8月24日(火)17時~19時。


マルシェのお弁当、ワークショップ、野菜プレートは、ホームページからの事前申し込み制です。詳細はホームページをご確認ください。

 

みどりなくらし

https://midorinakurashi.jimdofree.com/

珈琲&レストランアンジュあざみ野店

http://www.tcc-andyou.net/

中島裕子
この記事を書いた人
中島裕子ライター
川崎市中原区在住。高3男子の母。現在は、地元のタウン誌やfacebookで記事を書く。美味しいものや手作りが好き。今の関心テーマは、食と教育。趣味は書道。今年の目標もダイエットの成功と断捨離。森ノオトでは、ライターとして経験を積み、イベントに参加して世界を広げたいと思っている。
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