産後はいつまで続くのか。 卒乳を通して気づいた、大切なこと。
出産してからずっと、お世話になっていた逗子母乳育児相談室の助産師である田口史子さんのところへ、先日、残った母乳を出し切ってもらう、最後のおっぱいマッサージのために行ってきました。そのときに、「授乳が終わったその先にある、私の体」の話を聞きました。妊娠、出産、育児のはじまり……。激動の時が、ほんの少し落ち着いたとき、あらためて「私の体」を考えてみませんか?

「3人目を産む予定がないのであれば、卒乳するときにマッサージにきてね。そして、乳がん検診を受けてね」

 

3歳の息子、1歳の娘、それぞれ授乳期にトラブルがあればいつもお世話になっていた、逗子母乳育児相談室の助産師田口さんから言われていたこと。「卒乳」の文字がずっと頭の片隅にありつつも、なんとなく行きそびれていました。息子の時は、1歳半のころ、「もう、終わりにしようね」と声をかけて、それから2~3日間、「おっぱい欲しい!」と息子に泣かれ、私も泣いた卒乳。一方、娘は1歳を過ぎたころに、「あれ、そういえば最近授乳してないな」といった具合で、気が付いたら終わっていたという卒乳でした。そんな卒乳事情と日々のバタバタに追われて、タイミングを逃していました。

ほとんど授乳をしなくなってしばらく経ったころ、「いいかげん行かねば!」と、重い腰をあげ、田口さんのところへ行きました。

 

 

自分の体に驚く

本来は持っていかなければいけない、施術時に使うタオルやTシャツなどを一通り忘れた私。乳房のハリと乳口炎の疑いで10カ月前に伺ったのが最後でした。久しぶりだった、ということもありますが、きっと何にも考えていなかったんだと思います。「田口さんに言われたから行っとかなきゃだけど、トラブルがあるわけでもないし、もう授乳してないし、ビールも解禁しているし。私の産後は終わっている」。そんな心持ちでした。

 

卒乳からしばらく経った体でも、「まだまだ結構母乳出るんですね」なんて会話をしつつ、田口さんはこれからのことを教えてくれました。「マッサージを終えて、母乳を出し切っても、乳腺はまだ拡張しています。この状態で乳がん検診を受けても、見えづらいです。これから3カ月後に検診の予約をして診てもらってください。あと、日常的に自分で調べる方法を教えるので、それを生理の後、排卵前にやってみてください。これから年を重ねていくと、がんにかかることは身近になります。早期発見できるようにしていきましょう」

 

乳腺が拡張している状態が、これからまだ3カ月続くとは。まだまだ私の体は産後仕様なのか、と驚きましたし、妊娠・出産という一種特別な世界から、乳がんというリアルに引き戻されたという感覚を受けました。

 

そもそも私は、卒乳のときにマッサージに行くのは、卒乳をスムーズに行うため、また卒乳時のおっぱいトラブルを回避するためだと、捉えていました。田口さんの話では、「断乳をしよう、と決めたタイミングから母乳の量を徐々に減らしていくために、飲ませなくなった前後10日ぐらい(個別差があるので、要相談)の間で、何回かマッサージをすることが大事。当院では卒乳後のマッサージは7~10日目でケアをするのが基本的な進め方です」とのことです。

逗子母乳育児相談室のベッド。授乳していた日々、ここでたくさんの不安を吐き出し、心も体も楽にしてもらいました。

私にとってこの時間は、「授乳からの卒業」というよりも、「これからの自分のはじまり」を感じる時間になりました。これから先病気も身近になっていきます。自分の体と、どんなふうに向き合っていったらいいのか。女性の体をよく知る田口さんの話を聞きたくて、取材を申し込みました。

 

 

毎年9万人がかかっている乳がん

日本では乳がんにかかる人が年々増えていて、毎年9万人がかかると推定されています。また、40歳前後で乳がんで亡くなる方が増え始め、30歳~69歳では乳がんが、女性の死亡原因の1位となっています。公益財団法人日本対がん協会では、「乳がんは、無症状のうちに検診を受診すれば早期発見につながり、適切な治療によって治癒の確率も高くなります」と乳がん検診を勧めています。

(引用:日本対がん協会HP

 

乳がん検診には、乳房X線(マンモグラフィ)と超音波(エコー)があります。マンモグラフィは小さながんを発見するのに威力を発揮しますが、乳腺の状況に影響を受けます。田口さんから3カ月たってから検診してね、と言われたのは、この点においてです。エコーは放射線を使わないので妊婦の方でも受けることはできます。

先日、病院で検診の予約をするときに、「マンモグラフィとエコーどちらがおすすめですか?」と聞いたら、「可能であれば両方受けてほしいです。見え方が違うので、発見できるものが違います」と看護師の方から言われました。

 

 

つらいことに気づけない産後

「妊娠・出産・育児は、ひとつの転機だと思います」と田口さんは話します。
「今までとは違う心と体になります。その人が、どういう風に体と心に向き合ってきたか、それがお産によってわき出てきます。お産を通して、より健康に、より活動的になる人もいます」。私自身、特に一人目の出産後、心も体もバキバキでクタクタだったので、より元気になる人がいるなんて、と驚きました。

 

「産後の女性は、自分の人生の中で、最も自分に意識を向けにくくなっています。妊娠中はお腹にいた赤ちゃんが、自分の中から出て目の前にいる。それに集中して、意識と心が離れている状況になっています」。一人目を産んで半年ぐらいのころ、私は、田口さんのマッサージに行って、「背中がカチカチですね」と言われて、自分の体がひどい、ということに気づかされていました。最近になって友人から、「一人目を産んですぐのあなたは、心身ともにやばかったね」と言われ「確かに!」と二人で笑いあったのを思い出します。振り返ってみれば、体も心もきつかったな、と思えますが、その頃は、自分自身としては普通のつもりだったのです。

 

「冷えや、凝り、栄養状態など、体の状況が調わないまま育児をしている人が多いです。自分の体がどれだけきつくなっているか、ということに気づかないんです。妊娠・出産・産後を通して生じる、なんらかの不調は、体からのサインです。医学的に問題があるかないかは別だけど、何かがうまくいっていない、ということです」と田口さん。ご自身も、お二人のお子さんがいますが、一人目の出産後、半年ほど発熱や湿疹などに悩まされたそうです。

 

産後、家から徒歩圏内に、いつでも何か相談できる助産師さんがいたことは、自分に何が起きているのか、これから何が起こるのかわからない時を生きていた私にとって、大きな心の支えでした。地元で出産を迎える友人には必ず田口さんのことを紹介しました。森ノオトエリアの方にとっては、逗子は遠いかと思いますが、ご自身の近くで、産後ケアをしている人を見つけることができるといいな、と思います。Informationに横浜市助産師会、川崎市助産師会の情報を載せておきます。

 

 

産後48年。変わり続ける私の体

「産後48年とかでいいんじゃないですか?」

 

産後はいつまでが産後なのか、と質問すると、田口さんからそんな言葉が返ってきました。私は、無意識に、産後はいつか終わると思っていました。「妊娠前の体型に戻す」「妊娠前の働き方に戻す」など、産後があけたら私は前に戻るんだと。

 

でも、それは違うと気づきました。
妊娠、出産、育児。自分の心も体も環境も変化し続けています。あらためて考えれば当たり前のことなのに、私はどこかで戻れる、戻らなくてはいけない、ものだと思い込んでいました。

 

海に続く田越川。横道にはいって少し歩くと、逗子母乳育児相談室はあります

以前の私は、痩せたいから自炊する、運動する……。痩せたほうがきれいだし、ちやほやされるし、なんて世間の常識で自分の体を縛っていました。小学生のころから背が高くぽっちゃりだった私は、自分の体を好きだと思ったことは一度もありませんでした。でも、2回の妊娠を通して、そんな自分の体を好きだと思う瞬間がたくさんあったのです。帝王切開の出産当日までヨガをすることができたり、子どもを抱っこ・おんぶするのも楽々できたり……。色んな場面で、自分の体に感謝することが多くありました。

 

私の体は変化し続ける。その事実をはっきりと理解したときに、あらためて自分の体との向き合い方を、捉えなおしていきたいと思いました。

 

自ら探し続けること

「妊娠、出産、育児の始まり。この3年経験したことがないことばかりで、あたふたする日々で」という私に、「自分にとって、また自分の家族にとって、何がいいのかを探す。探すことが大事です」と田口さんは言います。
いろんなことがあります。体、心、環境、わけのわからない変化が押し寄せてきて、潰されそうになることもあると思います。そんなときは、ふと立ち止まって、今の自分を見つめて、これからの自分をどう生きていくのかを、探して選んでいけばいい、そう思います。

Information

逗子母乳育児相談室
助産師 田口史子

住所:神奈川県逗子市桜山(詳細は予約時) 蘆花公園すぐそば
電話:07011890101
HP:https://www.zushibonyu.com/
Instagram: https://www.instagram.com/zushibonyusoudan
営業日:月曜~金曜
受付時間:午前9時~午後5時
診療時間:午前9時~午後5時
料金:初診料2,000円/乳房マッサージ料6,000円(1時間程度)/相談料3,500円
※ご予約はお電話でお願いいたします

横浜市助産師会
https://www.jo34.yokohama/midwife_list/

川崎市助産師会
https://kawasaki-josanshi.com/about-josanshi/kawasakijosanshi-list/

この記事を書いた人
松田朋子ライター
神奈川県逗子市在住。約12年間、猛烈サラリーマンを経験。出産を機に仕事以外への視野が広がり縁あって森ノオトライターに。ワークライフバランス、子どもの教育、食や健康に興味あり。趣味はヨガと海。
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