忍者のぬくもり術 ~忍術道場師範代直伝~
忍者だから、何かぬくもるための道具があるのでは。はたまた忍術で火を操るとか。どちらも違います。日常生活の中でちょっと意識すれば、誰にでもできることばかりです。私、忍者酔鯨が稽古する旭区の四季の森忍術道場から、道場師範代直伝のぬくもり術をご紹介します。

ぬくもり術を教えてくれる野口 晃希(こうき)さんは、僅か20歳にして四季の森忍術道場の師範代を務めています。忍者としては「弥圓 佐助(やえん さすけ)」を名乗り、道場生からは「佐助さん」の愛称で親しまれています。稽古時には師範と共に道場生への指導に当たることもあるほか、忍者としての身体能力を活かし、舞台公演などでも活躍しています。

 

師範代:師範に次ぐ実力を持ち、師範に代わって指導に当たることができる者

 

道場の一般開放イベントで子どもたちに手裏剣打ちを指導する佐助さん

 

服装でぬくもる 末端を締める

普段の生活では和装で過ごすことが多い佐助さん、「寒い時期は、首回りや足回りなど体の末端を締めて、すき間を狭くすることが秘訣です」と教えてくれました。

佐助さんがよく着ているのは野袴(のばかま)と呼ばれるもので、動きやすいようゆったり目に作られています。身体と生地との間の空間にある空気が体温で温められることにより温かさを感じ、寒い時期はこのぬくもりを外へ逃がさないようにするわけです。

 

首周りにマフラー、足元に脚絆(きゃはん)、手首に手甲を巻いて、それぞれの末端を締める(手甲が分かりやすいように袖をまくっています)

「マフラーがなければ、手ぬぐいなどの布でも大丈夫です。忍者は身の回りにあるものを活用します。臨機応変ですね」と佐助さん。

 

 

腰をぬくもらせる 懐炉(カイロ)を使う

舞台上で激しいアクションを披露することもある佐助さんは、寒い時期は必ずカイロで腰を温めているそうです。「やはり体が温まっていると激しい動きでもやりやすいですし、怪我もしにくくなります」。

月(にくづき)に要(かなめ)で腰。字の通り、腰は体の要です。身体の中心である腰から、身体全体をカイロの熱でじわじわ温めていきます。

最近はカイロもオイル式や電気式のものなど、いろいろな種類があります。

 

AppliQuéでは、米ぬかや塩などで作る「ぬか袋カイロ」というものもあります。

電子レンジや蒸し器で温めて使うぬか袋カイロ。繰り返して使うことができ、中身も自然に還りやすい材料で、環境にやさしい

佐助さんも前述していますが、かつての忍者は身の回りにあるものを活用していろいろな道具や武器にしていました。まさに身の回りのものを活用するぬか袋カイロ、忍者が使っていそうな気がしますけど。

ちなみに佐助さん愛用のカイロを聞きました。

「使い捨ての貼るタイプです。寒かったらコンビニでも買えますしね……」。

身の回りにあるコンビニを活用する、これも忍者の生き方です。

 

身体操法でぬくもる 3つの呼吸法

外出先で上に羽織るものがない、カイロを売っているコンビニもない。さて、こんな時はどうしましょうか。

「『寒い』という意識を、一旦別のものに移してみることですね。私の場合、呼吸方法と歩き方を意識してみます」。

 

体が冷えてくると、呼吸が荒くなってきます。そこで呼吸することに意識を移し、少しゆっくり目に呼吸してみたり、少しだけ止めてみたりします。

さらに佐助さんが意識するのは呼吸方法です。これには、腹式呼吸と逆式呼吸があります。

 

・腹式呼吸:息を吸うときにおなかが膨らみ、息を吐くときにおなかが凹む
・逆式呼吸:息を吸うときにおなかが凹み、息を吐くときにおなかが膨らむ
両方やってもよいし、難しければどちらか一方でもよい

 

また、忍者の呼吸法として「二重の息吹(ふたえのいぶき)」というものがあります。

「吸う、吐く、吐く、吸う、吐く、吸う、吸う、吐く」の順番で呼吸します。江戸時代の飛脚など、長距離を走る人たちが使っていたとも言われています。

腹式呼吸または逆式呼吸を二重の息吹でやってみる。呼吸に意識を集中しているうちに寒さから意識が離れて、温まってきそうですね。

 

 

 

重心を意識した歩き方

「忍術というより古武術の考え方なのですが、普段からも重心を意識した歩き方をしています」と佐助さん。

 

普段の歩き方は体の中心が横軸で、上半身と下半身を分けて動くイメージ。地面を蹴って前に進む

 

重心を意識した歩き方は、体の中心が縦軸で、左右に分けて動くイメージで。膝は楽にして曲げておき、前へ出した足に体重を乗せる。軽くなったもう一方の足を更に前へ置く

 

足を若干内側に向けておくと、重心の掛かり具合がよく分かる

 

「汗をかくほど行う必要はないです。汗で逆に冷えてしまいますからね」と佐助さん。

舞台公演にて自分の出番が終わると、一旦舞台袖に引き上げます。そこで次の出番を待つのですが、汗びっしょりの衣装を着替えることができない時などは、身体が次第に冷えてきます。そんな時は、前述の呼吸法を用いて寒さを軽減しているそうです。

呼吸方や歩き方の論理的かつ具体的な実践方法など、佐助さんはどのようにして編み出し、会得していったのでしょうか。

 

 

3歳から始まった忍者としての修行

佐助さんが四季の森忍術道場の扉を叩いたのは3歳の時。その一番最初の稽古で教わったのは、立ち方、座り方、そして前述の歩き方でした。当時は師範から言われるがままに行い、感覚として覚えていましたが、それら全てが「重心」を意識した動きであるということが分かったのは、ずっと後のことだったそうです。

 

普通の立ち方。前屈みになって「よっこらしょ」と腰を上げる感じ

 

重心を意識した立ち方。体の斜め前方に重心を移し、頭のてっぺんを上から糸で吊り上げられるような感じで立ち上がる

 

中学3年生の時、訪日外国人向けに日本文化体験を企画する会社を通じて、ホテルの宴会場やホールなどで忍者演武を披露することを始め、高校生なってからは実際に外国人へ忍術を教えるようにもなりました。「小さいころからずっと感覚で覚えていたので、いざ人に教える時、どうやって伝えたらよいのか、それを言語化するのにとても苦労しましたね。『重心』を言葉として捉え始めたのもこの頃です」と佐助さん。

 

 

重心の掛け方で相手の動きを読む

舞台で殺陣を行う際、佐助さんは相手がどちらの足に重心を掛けているかを見ているそうです。台本では「まず相手の左側から斬り、次に右から」などと動きが決められていますが、うっかり間違える可能性もあります。殺陣でのミスは命取りです。

「台本では自分の左側を斬ってくることになっているのに、相手の重心が左の足に掛かっていたら自分の右側を斬ってくると分かります。そこで間違いに気づき、こちらも交わすことができます」と佐助さん。激しい動きの中で瞬時に見分けるのは大変だろうと思いますが、「臨機応変に対応する、それがプロの仕事です」ときっぱり言い切っていました。

稽古用の刀を仕舞う佐助さん

 

私自身も忍術に関する記事を書く際、どう言語化したらよいのかといつも考えているので、佐助さんがかつて悩んでいた気持ちはよく分かります。ましてや佐助さんの場合は外国語ですから、もっと大変だったはずです。

今回のぬくもり術、お分かりいただけたでしょうか。

Information

<四季の森忍術道場>

241-0001 横浜市旭区上白根町1306-8

URL : http://yamatoryu.daa.jp/

TEL : 045-530-0259

E-Mail : info@yamato-world.co.jp

・弥圓佐助さん

Twitter : @sasuke329sinobi

Instagram : @sasuke_nin_ja

この記事を書いた人
小池邦武ライター
生まれも育ちも神奈川区鶴屋町。いつも工事中の横浜駅がそばにある。急激に再開発の進む臨海部と、まだまだ緑の残る内陸部と、その違いに興味を持っている。数年前から忍術修業を始め、いつの間にか森ノオト編集部に忍び込んでいる次第。忍者名は「望月 酔鯨」。猫好き。
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