好きを集めるパターンオーダーの革靴tieni 春には私の靴でおでかけしよう。
ITのエンジニアたちが作った靴会社kutsulab(クツラボ)。720通りのパターンの中から素材の革やソールを組み合わせて、オンラインで自分の靴をオーダーできるtieniコレクションは、相棒のように一緒に歩いて歴史を刻む、おでかけしたくなる革靴です。

2021年の春、私は夫の誕生日プレゼントに靴を贈ろうと思いました。

年を重ねるにつれて仕事の大変さが増してくる様子をそばで見ながら心許せる仲間のように、働く彼を支えてくれる、履くとご機嫌になるような靴を贈ろうと考えたのです。

 

頭の中にあったのは私の友人である松原真由美さんの夫、松原大典(だいすけ)さんが作っている革靴でした。高校時代、同じバスケ部の先輩マネージャーで、今では姉妹のように仲のいい真由美先輩が「大典が靴の学校に行きだしたんだよ」とある日、カフェで話したことを鮮明に覚えています。

「こびとの靴屋さん」に出てくるおじいさんを想像して似合っている!と思っていたのですが、それはただの靴づくりではおさまらない物語の始まりでした。

 

あの日から7年の月日が流れ、私は革靴tieniにめぐり合います。

 

 

○お出かけしたくなる靴、tieni

私がひと目見て「ステキ!」と思ったのは、靴先の丸さです。tieniは指の動きが制限されないように、踏み出す時に親指がしっかり使える幅と高さをとって、大地を蹴る力がそこなわれないような、動きやすさを大事にしたデザインです。丸く見えすぎず、かつ足指のためにすきまが生まれるような工夫がされています。

私のサイズだとかわいく見えた丸さも、夫の大きいサイズだと大人の男性に似合う絶妙な丸さになります。アクセントが効いたフォルムは上品な個性が光り、私はとても気にいりました。この丸さのおかげでビジネススーツにもカジュアルにもしっくりくるので、お出かけシーンを選ばないこともうれしい点です。

男女兼用のデザインのtieniコレクション。日々の通勤にも使うので革は3種類の中から汚れや水に強い、耐久性のあるオリジナル(標準革)を選択

革靴は使い込むほどに足になじみ、表情が味わい深く、変わっていくものです。tieniで選べるいくつかの革は植物タンニンというなめし方で作られた革を利用しており、それらは一般的な革靴より足に馴染みやすいそうです。

年を重ねるごとに使い捨てのファストファッションより、質のいいものを長く大切に使うことに魅力を感じるようになった私は「丁寧にケアをして、自分の靴として大事に育てていく」kutsulabの基本的なコンセプトが、今の自分に合っているように感じました。

 

そしてとてもびっくりしたのですが、kutsulabはオンライン販売です。

オンライン販売を支えているのが、0.5cm単位で正確に測定できるようにオリジナル開発されたペーパークラフトの足測定ツールです。

足計測ツールは、購入者全員に郵送で無料配布されます。実際に私が測ってみるといつものサイズより2cmも小さくて驚きました

靴はサイズが合わないと履き心地に大きく影響しますが、靴メーカーによってそれぞれ独自のサイズ展開をしているので、ブランドが違えば同じ23cmでも靴によって小さかったり大きかったりします。靴擦れなどを心配して、小さいよりはと大きいサイズをなんとなく選んでいましたが、大きい靴だと履いていくうちに伸びてフィット感が落ちるので、この足測定ツールで自分のサイズが測れるのはありがたいサービスだなと感じました。

 

私も測ってみたのですが、10秒もかからず一目瞭然で、拍子抜けするくらい足の測定は簡単です。オンラインでポチッと注文した時はネットで初めて買い物をした時のようにドキドキしましたが、実際に購入して届いた靴は見事にぴったりでした!

私が注文した時はまだコロナ禍のため半年ほど待たされましたが、今は2カ月ほどで届くそうです。夫は初日、硬さや重さが慣れないようでしたが、今では足に馴染んできて仕事帰りに駅から30分ほど歩くのも楽しく、快適だそうです。

 

夫の靴を選ぶ時、随分迷いましたがそれもまた楽しく、心や時間を捧げることもまた相手への贈り物かもしれないと思いました。

実物は三軒茶屋にある美容院maruco potchで見ることができます。2/19、20には足の測定を体験できる初のパターンオーダー会を開催。詳しくはInformationをご確認ください

○ITエンジニアが作る靴会社kutsulab

松原大典さんが靴づくりを始めたそもそものきっかけは、妻の真由美さんに合う靴がなかったからだそうです。皮膚が薄くてマメができやすい、お出かけすればやたら歩くので、いつも靴選びに試行錯誤していたのを私も知っていました。もちろん、それだけではなく「靴が好きだ」という前提があり、移動自体も好き。家族全員が旅好きで、旅をするときはいつも靴の悩みがあり「靴は課題の多いもの」と感じていたそうです。

たくさん歩けて、どんな服装にも合う靴、理想の靴ってどんな靴だろう?奥さんの足に合う靴はどんな靴?考えが膨らんでいきました。

「ものづくりが好きで“靴って作れるものかな?”と、ホントに単純な疑問からはじまったんですよ」、と笑う大典さん。

またITのエンジニアとしてのサラリーマンの仕事は自己表現が難しいと感じた時期があり、世の中に自分が主体的に価値あるものを提供するためには、違う方向を模索してみようと考えたことも靴づくりを学び始める背景としてありました。

 

2014年、「何かを人に伝える時には、その中身を知る必要がある」と会社の仕事の傍ら、靴職人が教える靴教室へ大典さんは通い始めました。靴用のミシンを自宅に用意し、いろんな製法を試しながら木型、デザインからきちんと教えてもらい、仕入れから一通り、靴工房の職人として独立できるような学びを2年ほどかけて終えました。

大典さんが木型から作った真由美さんの靴。いろんなところを一緒に旅してシワもたくさん刻んだ相棒。kutsulabの靴では一度も靴擦れしていないそう

「終わりのない探究が靴にはあると思う。“100人いたら200通りの足の形、足の性格がある”と言われている」と大典さんは教えてくれました。

片足ずつ足のサイズが違ったり、その人の満足のいくものを提供することに終わりはない、と人が気持ちよく履ける靴を世の中に提供していくことに魅力を感じたそうです。

 

ただ、魅力を感じた靴づくりは力のいる重労働で、一人で自分の思う品質を安定することは難しく数にも限界がありました。安定して良質のものを作ってくれる所に任せることで、自分が試行錯誤して作ったものを世に出せるのではと考えます。こうして、靴づくりの新しい仕組みをつくろうとkutsulabという新しい一歩を踏み出したのです。

ITのエンジニアとして、靴づくりの効率化や新たなサービスなどで、何か靴づくりの業界にできることはないか?と、当時働いていたIT会社の「社内起業プログラム」に仕事仲間の小笠原圭祐さん、数野翔太さんとともに応募し、それが「kutsulab合同会社」の始まりとなりました。

テクニカルな部分を支えてくれる「ものづくりの天才」数野さん(右)と、人との繋がりを作ってくれる「エンジェル」小笠原さん(左)と、親しみと敬意をこめて話す大典さん(中)(写真提供:kutsulab)

需要を満たす数量を期間内で作ることや品質を安定することを考えて靴工場を探す中、いろんな方々の協力を得て貴重なご縁が繋がり、日本を代表する革靴のメーカーである老舗の宮城興業さんの協力を得ることができました。kutsulabの靴づくりの始まりです。

山形県にある80年の歴史を持つ靴工場の宮城興業さん。こだわりの組み合わせができるパターンオーダーのtieniの靴を一足一足、熟練した職人さんが作っています(写真提供:kutsulab)

○720通りのパターンオーダー靴

tieniティエニと名付けられたこのコレクションは、ITのエンジニアたちが作ったkustulabという靴会社のファーストプロダクトです。

3種類のデザイン、10種類の甲革、6種類の底材、4種類の腰裏(足裏と接触する内側の底)、720通りのパターンの中から、お出かけシーンに合わせて好きなものを選び、私だけの「好き」を選べるパターンオーダー靴です。

 

おでかけや旅先でよく歩く大典さんは、柔らかく軽いスニーカーよりも革靴は歩きやすくて全然疲れないと話します。革靴はつま先をまもり、かかとの硬さで着地をしっかりとぶれずに支え、足底は底から足を押し上げてくれ最低限の力で歩行をサポートしてくれるので筋肉に負担がかかりません。

tieniがグッドイヤーウェルテッド製法という、分解して修理ができる製法で作られているのは、履けば履くほど足になじむ靴に愛着を持ち、たまに気を配ってあげたり修理したりして履き心地を育てていくためです。長く使って自分の相棒のように育てて、表情が変わっていく様子や靴との歴史を楽しむ。そんな靴との関係はかつて憧れていたけど、いつのまにか忘れてしまっていたことでした。

自分好みの靴をお出かけシーンに合わせてパターンオーダーで選んだり、靴の中底に好きな文字を刻印したり、 kutsulabの靴は自分の好きなアレンジを加えることに重きを置いています。今のファッションは、ブランドを決めるだけで他に自由が少なく、靴を買う時にも欲しい色がない、底を選べない、バリエーションがないなど選択を委ねられていないように、大典さんは感じたそうです。受け身でなく自分からアクティブに好きなものを選択して、自分自身をプロデュースすることの楽しさや満足感を、靴を通して提案するサービスそのものがtieniというコレクションなのです。

 

 

○オンラインショップ開設

宮城興業さんという力強い味方を得たものの、kutsulab初期メンバーにいた仲間が海外赴任で離脱したり、IT会社の本業の仕事の忙しさや、オンラインショップの制作が滞ったり、宮城興業さんの担当者の退職により話がふりだしに戻ったりと数年に渡り、様々な困難な事情がでてきたそうです。

そんな中でも、靴の素材を探したり、木型の微調整をしたりと試作を重ね、kutsulabのHP、オンラインショップ等のシステム構築を模索し、地道にコツコツと仕事を進めやっとオンラインショップを立ち上げられるところまできたところで、新型コロナウィルスが現れました。ファッション業界ももちろん大打撃を受け、宮城興業さんの工場の生産もストップ、しばらくtieniの販売や生産が保留となる期間を超えて、紆余曲折の末、2021年7月kutsulabオンラインショップが公開され販売がスタートしました

 

積み重なるアクシデントの中、どうやってくさらず、心折れず前向きな意欲を持ち続けたのか?と尋ねると「自分のプロダクトを信じているから」と大典さんは答えました。

 

「tieniは素材の革やソールを組み合わせて自分の靴をつくるという世の中にない新しいサービスで価値があると思う。そして、まじめに実直に靴づくりをする方々の靴をみんなに知ってほしいし、まわりの人の支えでできているこの製品を世に出したい。そして、あきらめることがそもそも得意ではない」と、笑って話してくれました。

移動をすることが人生、移動することは自然の摂理(写真提供:kutsulab)

風がなければ空気は澱み、水が溜まり続けると腐るように、閉じた世界にいること自体が不自然。葉が落ちて土となり芽吹き、また木になるように循環すること、移動することそのものが価値だと自然の摂理は教えてくれている。移動を通して人は新しい文化、人に出会い、気づきの中でまた新しいものが生まれ、心が循環していく。

その移動を支えるのが足の機能や歩行をサポートしてくれる靴だ、と話してくれました。

 

tieniとはフィンランド語で「私の道」という言葉です。

私たちは日々の暮らしの中でたくさんの選択をして、自分の人生を作っています。いくつもの選択が自分を彩り、世界を広げたり、豊かにしたり。

夫に靴を贈るという選択は「私の道」へと背中を押してくれ、今私は自分の靴を選んでいます。

自分の好きを選ぶことで私だけの靴が生まれ、私が歩いたところに「私の道」ができる、そう思うとわくわくしてきました。

 

一度きりの人生、私の道を行こう。春には私の靴でおでかけしよう。

 

Information

「ポップアップストア(パターンオーダー会)」について

日時:2/19(土)、20(日) 9:00-18:00

場所:タタタハウス(旧 タカノ洋品店)内

〒158-0082 東京都世田谷区等々力2丁目18

東急大井町線、尾山台駅より徒歩3分。

※新型コロナウィルスの動向により、予定が変更になる可能性があります。

 

 

kutsulab合同会社 (kutsulab Inc.)

東京都世田谷区太子堂2-17-5 4F

Mail: info@kutsulab.com

公式HP: https://kutsulab.com/

Instagram: https://www.instagram.com/kutsulab_shoes/

Note: https://note.com/kutsulab

 

 

▷実際に靴を手に取って見ることができます。

maruco potchマルコポッチ

https://maruco-potch.com/

〒154-0004 東京都世田谷区太子堂2-27-10

TEL&FAX 03-3421-6804

この記事を書いた人
新楽 津矢子ライター
横浜市青葉区在住。地元鴨志田を中心に、フリーのヨガインストラクターとして活動中。生きる素は、ヨガ。笑顔の素は、おいしものを食べること、自然を感じること、親しい人と笑いあう時間。エコで丁寧な暮らしを田舎でしたいと思いつつ、身の丈にあうことが一番!と一歩ずつの生活を楽しんでいる。
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