多様な⽣き⽅、多様な保育スタイルがあっていい。「⻘空保育ぺんぺんぐさ」ってどんなところ?  
多少の雨でも、⾃然の中で過ごす「⻘空保育ぺんぺんぐさ」。想像するだけで元気な⼦どもたちの声が聞こえてきそうです。発足10年を迎え、横浜市青葉区鴨志田町に拠点を設けたぺんぺんぐさの保育について、代表の⼟井三恵⼦さんにお話を伺いました。(写真提供、NPO法人青空保育ぺんぺんぐさ) 

私は今11歳、7歳、1歳の3人の子どもを子育て中なのですが、長男、次男と0歳から保育園に預け月曜から金曜までみっちり働いてきた今までの生活スタイルに限界を感じ、もう少し自分にも子どもたちにもゆとりが欲しいなと思っていました。 

子どもが小さいうちは働かなければいいのではという声も聞こえてきそうですが、自分の気持ちとしては「働きたい」。自分も家族も心身ともに健康的な日々を送るために、末っ子の娘をどんな場所にどんなふうに預け、どんなふうに暮らしていけばよいか。保育園に預けようか、それとも幼稚園に行くまで一緒にいようか、一時保育などに預けて少しずつ働こうか。ああでもない、こうでもないと思い悩んでいました。 

 

数年前から、「ぺんぺんぐさ」という名前は、森ノオト界隈や、私が娘を出産した助産院のバースあおばでの友人まわりでは何度か⽿にしており、その時は「ぺんぺんってなんだろう?」くらいに思っていて、特に深くその先を聞いたりしてこなかったのですが、何やらそのぺんぺんは、今年団体発足から11年目になるそうで、しかも活動の拠点も構えてしまったというお話を聞き、なんだかぐんぐん成長している団体さんなんだろうなぁ。どんな保育や活動をされているのだろう。娘の預け先のヒントになるかもしれないな。と私の興味のアンテナがピコーン!と立ったのでした。 

 

今回は森ノオトで「ぺんぺんぐさ」を取材させていただけることになったので、そもそも「ぺんぺんって何ですか?」というところから代表の三恵⼦さんにお話を伺いました。  

 

 

ぺんぺんて何ですか?   

NPO法⼈⻘空保育ぺんぺんぐさ」は、2012年に4⼈のお⺟さんと代表保育士の⼟井三恵⼦さんとで青葉区内のつつじが丘第一公園や桜台公園で当初自主保育としてスタートしました。「⼦育てはひとりじゃない」をモットーに、現在は スタッフ制の「森のようちえん」というスタイルに変わり、保育⼠5⼈を中⼼にお⺟さんも少しずづ加わる⼿作りの預かり野外保育です。  

 

新緑の季節、青々とした木々と子どもたち。何を見ているのかな? (写真提供、NPO法人青空保育ぺんぺんぐさ)

保育は⼩さい⼦組(1歳半〜2歳児が週2⽇)、⼤きい⼦組(3歳児が週3⽇。年中、年⻑が週4⽇3歳児が週3⽇。年中、 年⻑が週4⽇  *2022年4月より日数が増える予定)、親⼦組が⽉2回。そして保護者であるお⺟さんも⽉に1回程度ずつ保育サポートに⼊り、時にはお父さんも一緒に寺家町のふるさと村や桜台公園、⾥⼭や畑など、園舎を持たず⾃然の中での⾃由遊びを⼤切にしています。 

ぺんぺんぐさ代表の⼟井三恵⼦さん

 

 

多少の⾬でも自然の中で過ごす保育とは?   

私の知っている保育園のイメージは、午前中1〜2時間は外遊び、ご飯を⾷べてお昼寝をしたら、午後は軽く園庭で遊ぶとか、室内で過ごすイメージです。ご飯も眠くなっても外でと聞いて最初は驚きました。  

なぜずっと自然の中で過ごすのか三恵⼦さんに伺ってみました。  

外でスヤスヤ。気持ち良さそう(写真提供、NPO法人青空保育ぺんぺんぐさ)

「⾃然の中での遊びを⼤切にしている保育園で働いていた頃、落ち着かなかったり、トラブルを起こしがちな不安定さを抱える⼦が、⼭道に⼊るとスーーっと落ち着くのを何度も経験していました。狭い室内の中って⾳の刺激や友だち同⼠の距離が近くてイライラしやすいけれど、外にいるとトラブルが激減するんです。ということはイライラさせない環境をつくることができたら、⼦どもの“育つ⼒”への邪魔を極⼒減らせると思いました」と三恵⼦さん。  

泥だらけで思いきり遊ぶ子どもたち。輝いてます(写真提供、NPO法人青空保育ぺんぺんぐさ)

確かに、⼦どもは⾃然の中で遊んでいる姿が⼀番⽣き⽣きしていて、私も⾒ていると幸せな気持ちになります。でも、半⽇だけとかではなく、ずっと外で過ごす必要はあるのでしょうか?  

 

「以前働いていた保育園で、保育園の給⾷時間のため、本当は帰らなきゃいけなかったんだけど、ギリギリまであともうひと遊びしてみた時、トラブルがちだった⼦がものすごく穏やかな表情になり、それを何⽇か繰り返すことで、その⼦に大きな変化が⾒られたことがあって、とても驚いたんです。同時に”遊びこむ”ことの⼤切さを痛感しました。  

そのことがあって、おにぎり持参で散歩に出かけることを無理⾔って保護者に1カ⽉お願いしたことがありました。⾃然の中で⾷べること⾃体が楽しみの時間となり、⾷べた後は⼼が開放されて、さらに遊びこむ姿が⾒られたり、こういうスタイルの保育への確信が⾼まりました」と笑顔で話してくれた三恵⼦さん。  

どんなものでも遊ぶ材料になります(写真提供、NPO法人青空保育ぺんぺんぐさ)

⻑時間⾃然の中にいると、⾃然が遊びに⾏くところから、「過ごすところ」に変わり、⾃然の中での⾝のこなしや、発⾒、付き合い⽅が違ってくると三恵⼦さんは感じたのだそうです。  

確かに都会で暮らしていると、「⾃然」はどちらかというと、わざわざ遊びに⾏くところ。という感じになっている気がします。  

本来は「⾃然」はわざわざ⾏くところではなく、「過ごすところ」だったはず。三恵⼦さんの話を聞き、現代の⼈々の暮らし⽅についても考えさせられました。  

活動10周年を迎えたぺんぺんぐさ。コロナもあり、悪天候時の活動場所に困 っていた時にご縁があって、子どもたちが活動する里山や畑に近い青葉区鴨志⽥町に拠点を借りることができたそう(写真提供、NPO法人青空保育ぺんぺんぐさ)

「⼦どもたちが四季折々を⼼とからだいっぱいに感じる姿や、⾃然との⼀期⼀会の偶発性を楽しむたくましさや、寒さ、暑さ、⾬、⾵など思い通りにいかないものを受け⼊れる適応⼒や、どこでも何もなくても遊べる柔軟性が、⻑時間の⾃然保育のよさだと思っています」と話す三恵子さんは瞳の奥が力強く輝いていました。 

「ぺんぺんぐさ」という団体も自然の中で育つ子どもたちのように、柔軟性のある、たくましい団体なんだろうなぁと感じました。 

 

  

ぺんぺんでは、あえてお母さんが保育の場に入るスタイルをとっています。 

「保育をサービスと捉える保育園もありますが、保護者を消費者にしたくないと思っています。⾃分の⼦どもだけでなく、他の⼦どもの育ちも見たり、保育者と保護者でともに育てる⼦育てのしかたを⼤切にしていて。みんなで⼦どもを⾒守るということが、⼦どもにとっても、お⺟さんお⽗さんにとっても安⼼感につながって、その安⼼感が⼦どもの育ちを促してくれるということを感じています」  

ともに育てる⼦育てのしかたで、お⺟さんお⽗さんにも無理なく少しずつ当事者感を持ってもらうことを⼤事にしていると三恵⼦さんは話してくださいました。  

 

 

多様な⽣き⽅、多様な保育スタイルがあっていい   

私の⻑男が通っていた保育園は東京都の区⽴の保育園で、園での様⼦が具体的にわかるのは⾏事の時くらいでした。まだ⾃分で話すこともままならない息⼦が普段どんなふうに過ごしているのか、きちんとわかっていなかった気がします。0歳から保育園に通っていた息⼦はいつの間にかオムツが外れ、⾃分でトイレに⾏くようになり、保育園でトイレトレーニングもしてくれて楽チンだな〜なんて思ったこともあったのですが、今思うと、一⽇一⽇成⻑していく息⼦の姿をもう少しゆったりそばで⾒守ってあげたかったなあと思ったりします。  

けれど今より10歳以上も若く、⼦育て初⼼者だった私は、保育園に⼊るためには週5で働かなきゃ⼊れない。という情報の圧⼒から、正社員で働き、毎⽇ヘトヘトになっていました。  

保育園に預けるには労働時間が⻑くないと預けられない。という壁があると思い込んでいましたが、探せば⾊々な保育の形があるのだと思いました。  

週5ではなく、もう少しゆったり⼦どもを預けたいという⼈も少なくないのではないでしょうか。  

 

一時保育に預けて数時間働くということもできるかもしれないし、ぺんぺんのように年齢によって週2〜週5で預けて、育ちの様子をたくさん味わうこともできる。その⼈のライフスタイルに合わせた保育を選ぶことができるのです。  

「多様なお⺟さんの⽣き⽅があっていい」という三恵⼦さんの⾔葉は、⼦どもを育てる保護者の⽅々の背中をさすってくれるような気がしました。  

コロナ禍で対面でのコミュニュケーションが取りづらく、⼦育てがしづらいと⾔われる今の時代、保育者と保護者でともに育てることで、孤⽴をなくすことにもつながるといいます。  

コロナ禍で大人も子どもも友だちをつくる場が減ってきている今⽇。⾔葉を交わすきっかけにしてほしいと始めたストラップのプロジェクト

このストラップをぶら下げてご近所で声を掛け合うきっかけになれたらと、お母さんたちが一つひとつ時間をかけ、思いを込めて作りました。裏には「同じ空の下、子育ては一人じゃない」というメッセージが。 

OBでもある、イイダ傘店」さんから布と図案を提供いただき作ったそう。  

 

 

ストラップは園児や父母のほか、あそぼう会参加者や寄付のお礼に渡しており、追加で欲しい方にはカンパで分けてもらえます。 

 

ぺんぺんは親も⼦も育ちあっていく。そんな昔ながらのあたたかい保育の場所です。⼦どもを預けて映画やショッピングや仕事に出かけるというのがあってもいい。でもぺんぺんはその逆の発想で、⼿間を少しかけて、親も⼀緒に、ともに⼦育てすることで、⼦育ての仲間ができて⼦育てが楽になる。 どちらの預け方があってもいいんじゃないか。  

 

「多様な⽣き⽅、多様な保育スタイルがあっていい。」  

三恵⼦さんの⾔葉を、10年前の私に聞かせてあげられたら、もっと肩の⼒を抜いて⼦育てができたのになあ。と感じます。  

 

ぺんぺんでの取材を終えて、たくさんの⼦育ての選択肢がある中で、⾃分のライフスタイルに合ったものを選び、⼦どもも⼤⼈も気持ちよく、そして楽しく暮らしていけたらいいなあと感じました。  

Information

<NPO法人青空保育 ぺんぺんぐさ >

https://penpengusa.org/ 新しくなりました! 

Facebookページ 

https://www.facebook.com/AozorahoikuPenpengusa 

Instagram 

https://www.instagram.com/aoba.penpengusa/ 

 

 

土井三恵子さん寄稿の9回のコラム 

「大きな空の下の、ちいさななかまたち」 

https://morinooto.jp/tag/penpencolumn/  

 

土と水と草と虫と『あそぼう会』(毎月開催) 

◎ぺんぺんぐさは「預かり野外保育」だけでなく、ひとりでも多くの人たちに「おたがいさまの安心子育て」や外遊びのきっかけづくりも行なっています。 

自然に囲まれて、同じくらいの年の子がいれば、なんにもなくてもいい顔をして遊ぶ子どもたち。 

ひとりで子育てを抱えないで、おしゃべりも楽しみにいらっしゃいませんか。 

生後8カ月ごろから、どなたでもどうぞ。 
コロナ状況下での、外遊びのコツや、気をつけることなどもお伝えします。 

 

・基本的に毎月第3木曜日(4月は第4)に、桜台公園を中心に開催しています。 

・詳細、お申し込み先はHPをご覧ください 

http://jisyuhoikupenpengusa.blogspot.com/p/blog-page_9159.html 

 

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この記事を書いた人
佐々木茜子ライター卒業生
静岡県南伊豆町の山奥で生まれ育つ。故郷の緑が恋しく、現在は町田市の里山地域(百足たまに発生)に暮らしている。出版社で絵本の編集を担当しながら、ライター活動もちびちびと継続中。2男1女の母。
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