本記事の前編では、オープンから3カ月を経たnexusチャレンジパーク早野の現在地を紹介しました。後編では、その場を支えるプロジェクトメンバーが、どんな思いでまちづくりに関わっているのか、聞いてみました。
nexusチャレンジパーク早野のプロジェクトメンバーからは、三渕卓さん・清水寛之さん・清水健太郎さん・中上慎哉さん・金井純平さん、森ノオトからは理事長・北原まどか、編集長・梶田亜由美、事務局長・宇都宮南海子が参加し、キャンプテーブルを囲んで語り合いました。
(前編)東急さんに聞いてみた!前編〜nexusチャレンジパーク早野の”生活者起点”のまちづくり、を紐とく。
2022年、東急株式会社は創設100周年を迎えます。その次の100年に向けた生活者起点の新たな郊外まちづくりとして動き始めた「nexus構想」。その第1弾の取り組みである「nexusチャレンジパーク早野」のプロジェクトは東急社内でも多くの賛同を生んだそうです。
三渕さん(以下、敬称略): 社内向けにオンライン説明会でチャレンジパークのことを紹介したら、200人ほどの社員が参加しれくれて、そのほとんどがこの取り組みに賛同してくれました。それを見ていた関連会社の方たちは「東急は全社員に同じ言葉と思想がある」と驚いていました。
金井: 確かに、まちが良くなるにはどうしたらいいか、多くの社員が常に何かしら考える機会が多くて、「生活者起点」という言葉が暗黙知的に受け入れられ、そこに違和感がないと思います
それぞれの原体験が重なりあう、まちづくり
森ノオト: 私たちもこれまで、東急社員の方とまちづくりの分野で出会う機会が多くありましたが、SNSですぐに友だち申請が来たり、企業の方というより、ひとりの人としてフレンドリーにコンタクトをとる方が多い印象です。そんな東急社員でもあるみなさんがどんな思いでまちづくりに関わるっているのか、一人ひとりの原体験や、「こんなまちをつくりたい」と大事にしていることがあれば教えてください。
三渕: ぼくは7年くらい前から「みとめあう」というキーワードで、まちづくりをしたいと思っていました。どういうまちが選ばれるかという時に、心の深い部分で認め合える地域というのが、これからのキーワードだと思っています。このコンセプトは、今回のnexusチャレンジパークの中にも、しれっとデザインに入れています(笑)。ぼくが事業構想大学院に行っていた時に、主婦と若者50人に、1対1のインタビューをしました。1人3時間を50人に。夫や親にも言えないような人の心の奥底にあるものにふれて、まちづくりや地域に対する期待というのもそこで感じたんです。そこで自分にわいてきたのが「認め合うが最大化するまちづくり」でした。
清水(健): ぼくの原体験を辿ると、実家が学生向けの下宿をやっていたんです。家族、親戚、下宿している学生たち。たくさんの人が出入りする家でした。下宿をやめて建替えた後も、屋上で毎週、みんなでワイワイごはんを食べていました。みんなで食卓を囲んでごはんを食べていると、たいていの悩みは解決するんじゃないかと思うんです。そんな「共空間」が今の社会には求められているし、そうした場をつくりたい、というのが自分の根本にある思いですね。
清水(寛): 私は4月からこのチームに加わりました。東急には2004年に中途で入社して以降、主に住宅事業に従事してきました。その間、新築マンションや戸建ての分譲事業をはじめ、築30年以上のシニアの住み替え支援事業の立ち上げやリノベーションマンション事業の推進を担当してきました。幅広い住宅メニューを揃えることで、多様なニーズに対応するとともに、住みたいまち、住んでよかったと思えるまちをつくりたいという想いがあります。今、nexusで取り組んでいることも、お住まいになっている方々の満足度をどう高められるかということでもあると思うんです。お住まいになっている方々の満足度が上がれば、「あのまちは住みやすいまちらしい」「あのまちに住みたいね」と新しい人の流入にもつながるのではと思っています。
中上: 私は、川崎市役所から東急に出向中です。川崎市役所に入る前は、建設会社で現場監督をやっていました。これまで携わってきた仕事は、どちらかというとハード面を考える仕事で、きれいな建物や道を整備したり、いかに安全で使いやすい建物を建てるかということを考えてきました。完成して引渡した時の達成感はあるものの、その後その建物がどう使われるのか、使う人の満足感や本当に求めているものにまで、踏み込むことができていなかったと思います。東急に出向してこのプロジェクトに関わることになって、地域の方と接していると、自分の住む地域への愛と熱をすごく感じています。これは東急が何十年も前からこの地域にまいてきた種が開花し、一長一短でできないまちづくりを、行ってきたからなんだなというふうに感じるんです。これからのまちづくりは、行政や企業が、一方的にサービスを提供する時代ではないと感じています。育った種が別の種をまいていく。この地域の方たちに、そのポテンシャルをすごく感じます。これから種をまく主役がどんどん広がっていくでしょうし、ここに遊びにきてくれた小学生が、未来の種をまいてほしいなと思っています。
金井: 私は3月からこのプロジェクトに入りました。 nexus とは違う文脈で、まちづくり構想を考えてきていて「新しい豊かさってなんだろう?」をテーマに別の部署で考えていました。 nexus の話を聞いた時に、この素朴な疑問を机上の空論ではなく、実際に実験してみたいと思って、三渕さんに直談判しました。
これまでの東急のまちづくりで、便利で快適な暮らしはもう当たり前になりました。その一歩先の豊かさが「自己実現」だと思うんです。自分のやりたいことを実現するだけではなく、他者への貢献によって、自己肯定、自己実現につながる。そして、それをまちに落とし込む。そこに東急が表に立ってサービスを提供するわけじゃなく、そういう場所があること、支援すること、気軽さ、手軽さを用意して後方支援ができるといいのかなと思っています。
森ノオト: プロジェクトに関わるお一人おひとりの、バックグランドやまちづくり思想が重なりあって、良いチームができているんだなということを感じました。ここに来たら、東急社員の運営メンバーのみなさんが常駐していて、こうしてまちづくりや、チャレンジパークでやってみたいことを語ることもできる。それもまたこの場の魅力のように感じます。まだスタートしたばかりですが、今後このチャレンジパークがある地域の未来はどのように変化していくと思いますか?
三渕: ここに隣接した虹ヶ丘団地、すすき野団地、合わせて3,000戸もある。そのコミュニティに対して、どういう関わり方ができるのかが、次のステージになると思います。例えば、大きな蓄電池をここに置いて、緊急時のエネルギーの「共助」ができたり、高齢者のモビリティとして、電動キックボードがあってもおもしろいかもしれない。
人口が減少していくと行政の収入も減り、サービスレベルも低下という、行政の限界がくる。そんな社会構造の変化の中で、「まちの共益費」をどうデザインしていくといいのか。それに対して企業ができることは何なのか。そうしたことをみんなで考える「共助」を実装していきたいです。そのベースにあるのが、顔の見える関係。ぼくらも一人ひとりが名前で呼んでもらえるようにしたいと思っています。
大企業の取り組みとなると、どうしても主語が企業名として語れることが多いかもしれません。でもそこに関わる人が、どんなまちの未来を描いているのか、なぜ今ここに辿りついたのか。それぞれのストーリーがあることを知って、彼らもまた生活者であり、人の数だけある生活者起点の一つであることを、あたたかに感じるインタビューとなりました。
森ノオトは「自然や地域と調和した社会と、その担い手をつくる」をビジョンに掲げています。都市の中にある自然を残しながら、そこに住む人が自分らしく生きられ、いつでも一歩を踏み出せる地域をつくりたいと思っています。私たちのような地域のNPOにできることは小さなことかもしれないけど、東急さんのような大企業とその価値を共有できたことが、私たちにとってとても心強く、地域の希望のように感じました。
nexusチャレンジパーク早野の始まったばかりのチャレンジが、どのように根を張り、つながりを広げていくのか楽しみです。
(撮影:齋藤由美子)
<Nexusチャレンジパーク早野 >
https://nexus-challengepark.com/
https://www.instagram.com/ncp_hayano/
https://www.facebook.com/ncphayano
神奈川県川崎市麻生区早野1150-2
OPEN :10:00-18:00(冬季17:00)
東急社員の運営メンバーが常駐。営業時間内はいつでも訪問可能です。
「気軽に雑談や、チャレンジパークでやってみたいこと、やってほしいことを教えてください!」とのこと。
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