世界全体で年間数百万トンのプラスチックごみが海へ流出し、それらが波や紫外線などを浴びて細かい片(マイクロプラスチック)になることで、魚など海洋生物が誤飲するなど生態系へ悪影響を及ぼしているとされています。このままいくと、2050年には魚の重量を上回る量のプラスチックごみが海洋を占めると予測されています。あまりにショッキングなこの予測、森ノオト読者のみなさんは聞いたことがありますか?
このマイクロプラスチック問題に、青葉区内の小学生が中心になって活動を始めた団体があると聞き、取材してきました。
10月上旬の晴れた週末。あざみ野駅に近い早渕川沿いで、マイクロプラスチック・ゼロ・コミュニティ「Welc0me」の清掃活動が行われていました。約1時間ほど川の中に入ってゴミを集めます。「前に比べるとペットボトルが減った気がする」「今日の大物は毛布だったね」と、集めたゴミを種類別に分けながらその量も記録していきます。
Welc0meでは毎月、早渕川を中心に清掃活動を開催。代表の笹井涼くん(鉄小・6年)は「今日ゴミを拾ったこの場所でやるのは3回目。なかなかゴミは減らないんですけど、いろんな人が活動を知ってくれて参加してくれたり広がってきているのかなと思います」と、爽やかな表情で話してくれました。この日初めて参加した子も含めて、約20名の親子が汗を流していました。
Welc0me立ち上げのきっかけとなったのは、2021年の春。代表の涼くんが、ドキュメンタリー映画『マイクロプラスチックストーリー ぼくらが作る2050年』と出会ったことから始まります。
涼くんの父親である笹井淳さんは「小さい頃から涼は本を読むことが好きで、世界の国旗だとか文化や背景なども関心があって、その中で地球環境問題を知ることになったんです。本人の中では、このままだと未来が大変なことになるという問題意識はとても強いんだけど、学校の周りの友だちに話しても興味を持ってくれる子がいなく、涼も自分で何かできるとは思っていなかったと思うんです」。
そんな時にドキュメンタリー映画に出会い、アメリカ・ニューヨークの小学5年生たちが、自分たちで問題の根本を調べて、解決に向けてアクションを起こしていくまでの様子に、感銘を受けた涼くん。日本語吹き替え版の声優オーディションに応募。「環境問題・プラスチック汚染問題に関心を持っていること」という応募条件の中、全国から578名の応募があり、選ばれた45名のうちの一人として、カマリという登場人物の吹き替えを務めることになりました。監督からは、「みんなは環境活動家として頑張ってほしい」というメッセージもあり、収録後も声優メンバーは「マイクロプラスチック・ストーリー アンバサダーズ・ジャパン」として、定期的な活動報告会を継続しているのだそう。
「一緒にゴミ拾いしてみない?」
環境問題へのアクションとして声優というチャレンジはできたけど、「プラスチックゴミをゼロにしたい」という大きな目標のために、ほかにできることはないだろうか。他のアンバサダーの子たちが全国各地でアクションを起こしていく中で、何をしていいのか分からずに、もどかしさを感じていたという涼くん。
そんな涼くんに笹井さん夫妻は、元々知り合いでもあった横浜市議会議員の藤崎浩太郎さんに手紙を書いてみることを提案しました。
同作品のオンライン上映会の案内と一緒に、海洋マイクロプラスチックを減らしたいことなど熱い思いを書いた涼くんの手紙を受け取った藤崎さんからは「一度会ってお話しましょう」と返事が来ました。
「涼くんの”海洋プラスチックごみをゼロにしたい”という目標は大きすぎるので、踏み出せないままその火が消えてしまうかもしれないと感じたんです。まずは一緒にゴミ拾いしてみない?と一緒に早渕川を見に行ったことを思い出します」と、涼くんと初めて会った時のことを語る藤崎さん。
時を同じくして、アンバサダーのミーティングで、同じ青葉区内に住む高橋桃寧さん(たかはしもね・Welc0me副代表・元石川小・6年)や、県内に住むメンバー、西田諒一くん、田村のどかさんと出会い、一緒に活動をしてみない?と声をかけた涼くん。一気に仲間が増えました。くすぶっていた思いが、そこからは怒涛の動きにつながっていきます。
2022年3月初開催のゴミ拾いの準備と並行して、藤崎さんと相談しながら、神奈川県知事へ「使い捨てプラスチックの廃止」の要望書、横浜市には「学校給食からストローをなくしてほしい」という要望書を提出しました。すぐにアクションを起こせるゴミ拾いという活動と、そもそも使い捨てプラスチックを使わない社会にするため、未来を生きる子どもたちから要望書を提出するという両軸での動きは、新聞などの取材も受け、活動の認知も少しずつ広がってきました。
「さすがに、涼もその頃はヘロヘロになっていましたね」と父親の淳さんは振り返ります。それでも、学校という枠を超えたら、同じことに関心のあった同世代の子たちと出会えたこと、一緒に考えてくれる大人が背中を押してくれることで、涼くんの中でとても世界が広がっているのでしょう。
その後、涼くんの保育園時代の友人である和泉澤祐奈さん(いずみさわゆな・あざみ野第二小・6年)がメンバーとして加わりました。青葉区内の小学6年生の3人が3役として中心になり、その保護者や藤崎さん、地域の方でWelc0meの運営を進めています。8月にはたまプラーザ地域ケアプラザの登録団体としての登録ができたことで、活動のきっかけとなった映画『マイクロプラスチック・ストーリー ぼくらが作る2050年』の上映会が実現することに。11月5日(土)の上映会&活動報告会、オンライン上映会は11月13日(日)まで(申込は11月8日(火)まで)開催予定です。また、森ノオト主催の「あおばを食べる収穫祭2022」(11月23日(水・祝)・藤が丘駅前公園)のステージでのゲストとして登場してもらいます。誰でもウェルカムという思いとマイクロプラスチックを「0(ゼロ)」にしたいという思いを込めて、名付けた「Welc0me」。副代表の桃寧さんは、「新聞に載ってたねと友だちに声をかけられるのですが、Welc0meの活動自体に興味持ってもらえることがまだ少ない。ウェルカムの名前の意味でもあるように、もっとたくさんの人に来てもらいたいです」と呼びかけています。
この取材を通して、ずっと感じていたことがあります。
私も子を持つ親として、子どもが社会課題や問題に関心を持った時、どんな風に向き合うとよいだろう。きっと、その感性を生かすのも消してしまえるのも大人だと思うのです。Welc0meの活動は、子どもたち発の問題意識を、まわりの大人たちが一人の人として向き合っていることで、その淡く熱い気持ちを前進させることができている。そして、子どもだけではできないチャレンジを、大人に頼ることで広がりや継続につながっていると感じました。
笹井淳さんは「子どもたちのいる世界って、学校が中心でまだまだ狭いと思うんです。広い目で世界を感じられるような情報を与えられるのが親なんだろうなと思います。そして、親の力だけではできないこともたくさんあるので、まわりに協力してもらうということもすごく大事なんだと私自身も気づいたことです」と話してくれました。
森ノオトは2009年からエコやサステナブルなライフスタイルを提案した記事の発信を軸に、子育て世代のメンバーが中心になって活動してきました。ずっと、未来世代への思いやり、と背負っていた責任のようなものがあったように感じます。気付いたら、私たちの子ども世代が、未来をともにつくる仲間になっている。ということの喜びと心強さを感じられた取材となりました。
マイクロプラスチック・ゼロ・コミュニティ「Welc0me(ウェルカム)」
・オンライン上映
『マイクロプラスチックストーリー ぼくらが作る2050年』
日時:11/3(木)〜13(日)
料金:500円
申込〆切:11月8日(火)
申し込みはHPより
https://welcome0microplast.wixsite.com/my-site
・Facebookページ
https://www.facebook.com/welcome.0.microplastic
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