神奈川の未来に種をまく~若手農家と食卓をつなぐやさいや金次郎~
東急田園都市線・藤が丘駅から徒歩5分、ゆるやかな坂道をのぼっていくと、和テイストの趣あるお店が見えてきます。店先につやっつやの野菜たちが並ぶこの店が、2018年6月にオープンした「やさいや金次郎」です。ふしぎな店名の由来と、こだわり抜いた野菜について取材をしてきました。(2022年ライター養成講座修了レポート・福田友美)

5年ほど前、ある限られた地域で生育・保存されてきた品種、「在来品種」の野菜に興味を持っていた私。

色々なお店へ電話で問い合わせたところ、オープンして間もない「やさいや金次郎」で取り扱っていることを知り、買い求めに行ったのが出会いのきっかけでした。

在来品種の野菜の他に有機や無農薬野菜も目に入り、幼児期の子育て真っ最中だった私はうれしくてアレコレ買って帰ったことを覚えています。

ここの野菜は、安心して食べられる食材を基本としたわが家の食事を、今でも支えてくれています。

「栽培期間中農薬化学肥料不使用」や神奈川産の農産物をブランド化している「金次郎野菜」を示すシールが貼られ見分けやすい工夫がされている

「やさいや金次郎」は農水産業の振興を専門にコンサルタントを行う「株式会社流通研究所」(神奈川県厚木市)の直営店です。2012年から神奈川県内の若手農家とともに、こだわりの農産物を販売していこうと検討を重ね、初めての直営店として藤が丘に「やさいや金次郎」がオープンしました。

 

その季節ならではの農産物がそろう店内。取材に訪れた11月初旬はサツマイモの紅はるかやシルクスイート、シャキシャキとした食感と甘みが特徴の太秋(たいしゅう)柿など県内外の野菜や果物が並び、お米や味噌、ハチミツやジュースなどの加工品も取り扱っています。

大勢の農家さんが映った横断幕。この横断幕を見ると手にとった野菜が一層可愛らしくみえるのは私だけでしょうか

まるみのある響きと日本らしい名前のふしぎな店名、由来が気になりますね。株式会社流通研究所の販売事業部マネージャー・主任研究員上田諭さんにお話を伺いました。

農産物直売所旗横が店長の城間秀典さん、中央はスタッフの小泉悠子さん、右端が株式会社流通研究所の上田諭さん

「やさいや金次郎」の「金次郎」とは、神奈川県小田原市生まれの偉人「二宮金次郎」からきています。二宮金次郎は江戸時代末期に農村復興に尽力しました。「自分の利益や幸福を追求するだけの生活ではなく、この世のものすべてに感謝し、これに報いる行動をとることが大切で、それが社会と自分のためになる」という報徳思想を掲げていました。その思想にもとづいて生産された農産物をブランド化した「金次郎野菜」を中心に取り揃えています。

お店に並んだどの野菜も「見てみて!」といわんばかりに光っているのは、味と鮮度に妥協なく真心こめた賜物だからだとうなずきました。

 

 

果物にも「金次郎野菜」のシールが。キウイフルーツやみかんは時期によって品種を替えながら販売しています

以前「朝どれレタス」を購入したことがあるので、朝どれ野菜にもこだわっているのか伺ってみると「朝どれにこだわるというより、おいしいものを提供したい」と上田さん。トウモロコシやレタスなど朝どれにむいているものと、クリやサツマイモのように貯蔵して甘みを引き出した方がおいしいもの、それぞれの特徴に合わせて提供されています。これから出回り始めるイチゴは、市場では難しいほど完熟してから収穫しすぐに出荷しているのだそう。「これができるのは地場ならではの強み」と自信をのぞかせます。

 

完熟してからの出荷ということは、廃棄のリスクも高くなるのではと心配すると「イチゴって安くないからおいしく食べてほしいじゃないですか」と心打つ言葉が返ってきました。

 

珍しい農産物や加工品も「やさいや金次郎」では取り扱います。神奈川県オリジナルトマトの「湘南ポモロン」や収穫時期が短いイネ科の植物マコモの茎が肥大化した「マコモダケ」、今では作り手が少なく幻の大豆とまで言われている津久井在来大豆100%使用したお味噌……。酒匂川から直接取水した水で栽培された神奈川生まれのお米、特級A評価品種「はるみ」は市場に出回ることが極めて少ないお米なのだそう!「他では見ない発見や面白さを」との思いもあるのだとか。

自信をもってスタッフが農産物を勧められるよう、まずスタッフに試食してもらったり、食べてみないと分からない珍しい野菜もあるので野菜ソムリエと連携したりと「わざわざ来てもらうにはどうしたら?」の工夫も続けています。

 

 

水分量が多くジューシーに作られた椎茸と自然環境の中で木の栄養だけで育った椎茸。2種類の椎茸を食べ比べるのもおススメ

「地元農家を支え、地元農産物のPRを柱としながら『やさいや金次郎』が生産者と消費者をつなぐ役割を今後もしていきたい」と話す上田さん。「若手農家が自信と責任をもってお客さまへお届けする」、「神奈川の未来に種をまく」という思いからオープンし今年4周年。「今、彼らは若手農家ではなくベテラン農家になっていますけど」と笑って話す上田さんに、農家さんとの信頼関係を感じ、今後もますます「やさいや金次郎」への期待とエールの気持ちが膨らみます。

 

今回の取材で、普段の買い物では知ることができなかった店名の由来や深いこだわり、どれを買おうか迷った時、スタッフに聞くとその時のオススメを的確に教えてもらえた理由も知れ、自信をもって紹介したい「わが家の定番店」となりました。

 

※掲載写真に写っている価格は取材時のものです。販売価格は変動することがあります。

Information

住所:神奈川県横浜市青葉区もえぎ野6-5

東急田園都市線・藤が丘駅から徒歩5分

営業時間:10:30~18:00(感染症対策のため時間変動あり)

定休日:木曜

電話番号:045-507-3455

https://yasaiya-kinjiro.business.site/

Facebook:https://www.facebook.com/ryukenkabs/

Instagram:https://www.instagram.com/kinjiro831/

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この記事を書いた人
福田友美ライター卒業生
神奈川県出身。栄養士として会社勤めし、結婚とともに退職。息子の食物アレルギーをきっかけに食や暮らしを丁寧に日々重ねていきたいと思うように。娘から昆虫のかわいさを教わっている。家族と47都道府県旅行することが夢。
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