感謝の気持ちは最高のスパイス~中央林間 ネパールスパイス料理「E Masala」
「地域の方の健康をサポートしたい」。その理念のもと手作りを大切に、できるだけ化学調味料を使わず、栄養価の高い食材とスパイスたっぷりのおいしい料理を提供しているお店があります。地域の方に愛され、今年12年目を迎えたE Masala(イーマサラ)を訪ねました。(2022年ライター養成講座修了レポート・岸真由美)

森ノオトの拠点、横浜市青葉区からもほど近い、東急田園都市線・中央林間駅。今子育て世代から人気が急上昇しているこのエリアに、イーマサラはあります。駅から広々したフラットな道を5分ほど歩くと、万国旗や植物などが飾られた可愛らしい店構えが現れます。

店名の「マサラ」はスパイスの名称。そこに「何か響きがいい言葉をつけよう」と考え「イーマサラ」にしたそう

私とイーマサラの出会いは、今年の夏にお店で開催された、薬膳スパイスカレーのレッスンに参加したことでした。スパイス初心者の私でしたが、スパイスの多彩で味わい深いおいしさにすっかり虜に。加えて、レッスンをしてくれた店主バンダリ由美子さんの、インドでの経験や食に対する熱い思いに感銘を受け、今回改めてお話を伺いたいと取材をお願いしました。

お店のコンセプトは「心と体が元気になるパワースポット」。店内の天井には流木やたくさんの植物が飾られ、いきいきとした躍動感あふれるエネルギーを感じられます

元々料理が好きだった由美子さんがスパイスの魅力にはまったのは、19歳の時に訪れた南仏プロヴァンスでの経験から。オーベルジュ(宿泊もできるレストラン)に居候しながら料理を学んでいた由美子さん。そこのマダムがスパイス料理を得意にしていたこともあり、由美子さんも次第にスパイスの奥深さに目覚めていきます。

 

その後日本でフレンチのお店に勤めながら、休みがとれるとあちこち海外に行く暮らしを送ります。そんな中、由美子さんは「インドに一度行ってみたい」という思いを持つようになります。

初心者にお勧めのスパイスは「クミンパウダー」。肉や野菜を焼くときや、サラダやポタージュスープに。変わり種では焼き鳥や揚げナス、焼き魚にかけてもおいしいんだとか!

その思いを実現するべく、26歳で仕事を辞め単身インドへ。インドでは、ゲストハウスのお母さんの料理を手伝いながら、料理の腕を磨きました。「インドに行くと人生観が変わる」と聞くことも多いですが、由美子さんにとって一番変わったことは「死生観」でした。

 

「日本人は死というものが遠い存在っていう方が多いですよね。誰しもに訪れることなんだけど、どこか他人事のような。でもインドでは、家族や身近な人が亡くなることも多く、死が身近なものです。だから、生きていることや家族がいてくれることにありがたいという感謝の気持ちが強いんです」

 

そんなインドでの暮らしの中、今当たり前にあるものに感謝の気持ちを持てるようになった由美子さん。生きていること、家族が健康であること、穏やかな天気や水があることだって当たり前ではない。自然と調和すること、「人間は自然の一部なんだ」ということにも気付き、ここから食への意識も変わったと由美子さんは語ります。

イーマサラでは使い捨てやフードロス、ごみの削減にも取り組んでいます。こちらはおしぼりを使用しなかった時に正の字を書いてもらっているチャレンジボード

その後、ネパール人のご主人と出会い結婚。長男の出産を機に日本へ戻り、ご主人も呼び寄せます。そして2011年9月、ご主人の強い希望でお店をオープンすることに。

その時次男は1歳。まだまだ手がかかる時でしたが、ご両親のサポートも受けながら、由美子さんご夫婦、コックさんの3人で小さくお店をスタートさせました。

 

今ではスタッフも増え、お店は今年12年目に突入。入れ替わりの激しい飲食業界で、10年以上お店を継続していくことは大変な面もあったのではと尋ねたところ、「地域の方が本当に温かく応援してくださったんですよね。私自身も横のつながりを大切にしています」。自分たちの力だけではないと話すところにも、由美子さんの地域への思いを感じます。

スタッフはキッチン3名、ホール6名に。私が由美子さんを撮影していると皆さんも次々に撮影を始め大撮影大会に。仲の良さが店内の明るい雰囲気にもつながっています

初めてイーマサラの食事を食べた時、まず驚いたのがその軽やかさでした。カレーはさらっとした口あたりながらも、スパイスをしっかりと感じられ味に深みがあり、どんどん口に運びたくなります。初めて食べたダル(豆のスープ)は、体に染みわたるような優しくてうまみを感じるおいしさ。「また食べたい!」、そう思えるおいしさの秘密を教えてもらいました。

いちおしメニューの「漢方ランチ」。セットで付いてくる漢方茶はパウダーになっており料理にかけてもいいんだとか。5種類の中から今の体調にあったものをチョイスしてもらえます

人気のカレーは、小麦粉を使わず玉ねぎなどの野菜をたっぷり煮込むことによって出てくる自然のとろみを活かしています。油や塩分も控えめ。イーマサラではできるだけ化学調味料を使わないことも心がけており、お店の料理はドレッシングやソースなども含めほぼ手作り。スパイスから手作りの自家製シロップを使ったドレッシングに、生の野菜をすりおろしたドレッシング。醤油麹や豆乳マヨネーズ(卵、乳製品不使用)なども一から手作りしているというから驚きです。

 

私たちお客の立場からするととても嬉しいことですが、それだけ手をかけることはお店側としてはかなり大変ではないでしょうか。そう疑問を投げかけたところ、「手間暇かけたものはそれだけエネルギーもおいしさも違いますから。栄養価の高い食事で地域の方の健康をサポートしたいという思いがあるから、そこは苦になりません」ときっぱり。

漢方ランチの前菜には、豆乳寒天、生カシューナッツクリームに自家製醤油麹などの体にいい食材や、山椒、シナモン、パプリカ、メティなど様々なスパイスがたっぷり使われています

そんな手作り食の大切さを体現しながら伝えている由美子さんが、食において大切にしているのは「自然界にあるものを食べる」ということ。「日本は添加物など不自然なものを摂取しすぎている」と、由美子さんは日本の食環境に危機感を感じています。私自身も昨年、胃腸を悪くしたことをきっかけに食生活を見直したのですが、その際最初に驚いたのが自分の口にしているものの添加物の多さでした。

 

とはいえ、いきなり全部を無添加のものへ変えることは難しい面もあります。そんな悩みを伝えると、「まずは知ること、気付くことからでもいいんです。食の現状を知らない方たちが多いので、まずは知ってもらう。それが大切だと思っています」。

スパイスたっぷりのチャイや薬膳コーラ、グリーンカルダモンとナッツから作られたアイスなど、手作りのドリンクやスイーツもラインナップ豊富(チョークのイラストは由美子さん作!)

そして、なにより大切にしてほしいことは「感謝をしていただくこと」だと由美子さんは語ります。「感謝の気持ちを持って食べるのとイライラしながら食べるのとでは、おいしさも違ってきます。楽しい気持ちで感謝の思いを持って食事をいただくことの大切さを、若いお母さんたちに伝えていきたいんです」。

 

由美子さんにこれからやっていきたいことを伺った際にも、その思いが強く反映されていました。「今後は情報発信に力をいれていきたいんです。特に子育てママさんたちに、健康や食事、体を整えることの大切さを伝えていきたい。それが未来の子どもたちの可能性を解き放てる環境づくりにつながっていくと思うんです」。

店内のボードにも手書きでお店の理念が。由美子さんの熱い思いがこういったところからも伝わってきます

今回お話を伺うなかで、何度も耳にした「感謝」という言葉。私たちはつい今あるものを当たり前として受け流してしまい、ないものに目を向けて不満を口にしたりしがちです。でも、「私の毎日なんてほんと奇跡の連続ですよ」と明るく笑う由美子さんのように、当たり前のことに感謝の気持ちを持ちながら暮らすことで、毎日の暮らしの充実度も変わってくるような気がします。まずは、「感謝の気持ち」という最高のスパイスを、今日の食卓から取り入れてみませんか?

Information

住所:神奈川県大和市中央林間4-28-24

アクセス:「中央林間駅」より徒歩約5分

電話番号:046-276-1875

営業時間:11:30~L.O.14:30、17:00~L.O.21:00(ランチは14:30まで)

定休日:なし(臨時休業あり)

HP:https://emasala.owst.jp/

Instagram:@e_masala

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この記事を書いた人
岸真由美ライター
兵庫県生まれ、兵庫県育ち。数年前より横浜に在住。なじみのない街を知るべく色々調べる中で、森ノオトに出会う。食べること、カフェでのんびりすることが至福のひととき。最近は発酵食や手仕事に興味があり、日々の暮らしに取り入れたいと思っている。
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