笑顔と愛がひろがる居場所「レモンの庭」
どんな世代にも気軽に話せる場所が必要。そんな思いから一般社団法人フラットガーデンを立ち上げた松岡美子さんは、長年子育て支援拠点の活動に携わってきました。いろんな人が交流できるように作られた多世代交流カフェ「レモンの庭」についてお話を伺いました。(2022年ライター養成講座修了レポート:石﨑絵美)

JR横浜線、横浜市営地下鉄グリーンラインの中山駅南口から徒歩10分、大通りを曲がると静かな住宅街が広がります。お庭に木を植えている家も多いからか、緑もたくさん見えてきます。その先の坂道を上ると、白を基調とした2階建ての一軒家「レモンの庭」があります。玄関にはたくさんの靴が並んでいます。挨拶を交わしながら、みなさん入っていきます。 

坂道を上り左手の建物がレモンの庭。この地域は空き家になった土地を再活用して、カフェ、シェアスペースなどがあります。「753(ななごーさん)ヴィレッジ」と呼ばれ他にも さまざまなイベントを行っています

 

「いらっしゃい」そう言って迎えてくれるのが、代表である松岡さんです。 

レモンの庭は一軒家を使った多世代交流のコミュニティカフェで、曜日ごとに縫い物や筆文字などを学ぶことができます。 

この日はニットカフェの日。手を動かしながらおしゃべりもする。そこには若い人も年配の人もいる。世代はバラバラです

 松岡さんは以前、東京都武蔵野市に住んでいました。そこに住んでいる時は、近くに小学生の子どもたちがたくさんいたそうです。まだ小さかった松岡さんのお子さんは、年上の子どもたちと遊んでいました。年上の子どもたちが年下の子どもたちを誘ってお世話している姿を見てとても楽しかったそうです。 

 

松岡さんが横浜市に引っ越しをしてきた時には、子どもがのびのび過ごせる場所がなかったそうです。そこで、親子のための居場所が欲しいと思い、さまざまな地域団体の活動を経て、2007年に、緑区地域子育て活動拠点「いっぽ」を立ち上げました。そこでは、小さなお子さんを持つ母親からの相談も受けていました。同時に、学齢期のお子さんの相談場所も設けていました。 

 

たくさんの相談を聞くうちに、さまざまな世代の親子の悩みにぶつかったそうです。幼児期を越えてからの相談場所が少ないこと、学齢期や青少年の支援が手薄なことに気づきました。相談場所がなく、親も子どもも心を閉ざしてしまう。そうなる前に、気軽に相談できる居場所を作ろうと思うようになりました。そんなとき石川県にある「シェア金沢」というどんな人も分け隔てなく暮らすコミュニティがあると知ったそうです。見学に行くとそこには、松岡さんが理想とする居場所がありました。 

そして、753(ななごーさん)ヴィレッジの一軒家をお借りすることにして、2018年、一般社団法人フラットガーデンを立ち上げて多世代交流カフェ「レモンの庭」をスタートしました。 

 

松岡さんが、さまざまなお話を聞くきっかけの場として「美子の部屋」を始めました。その名の通り、松岡さんとお話をする場所です。 

いろんな人が松岡さんの噂を聞きつけて、お話にきます。子どものこと、まちづくりのこと、相談事はいろいろです。 

「お話はさりげなく聞くものよ」という松岡さん。美子の部屋に参加してみると、「さりげなく」という言葉通り、寄り添うようにお話を聞いてくれます。松岡さん自身も障害を持つお子さんがいるということで、私も子どもの話を聞いてもらいました。障害児でもそうでなくても、子どもを認めて信じてあげること。いましかない子どもとの時間をより大切に過ごそうと感じました。 

 

美子の部屋は、月1回オンラインでも開催されています。そこには、身体の具合で足を運べない人も参加しているようです。ZOOMを使い、全国各地からおしゃべりをしにきます。松岡さんとその日集まったメンバーで気になる悩みを話します。先日は2021年に公開された自閉症の子を持つ家族をテーマにした映画『梅切らぬバカ』の監督、和島香太郎さんも参加されたそうです。松岡さんは映画の制作にあたり和島監督から 

 

取材を受けていました。そこから関係がつながり、美子の部屋も参加されたそうです。映画監督とおしゃべりができるなんて思いもしない出会いですよね。 

「スパイス一汁一菜」のランチ。提供されるランチだけ目当てに訪れる人もいる

レモンの庭では曜日によって、身体に優しい料理やスパイスを使った料理など、ランチを提供しています。ランチを作っているのは、実際には店舗を持たない方ばかりです。松岡さんの声がけによって、レモンの庭で提供することになったそうです。 

「私はやってみたい人の後押しをしているだけ。その人が好きなものだと頑張れると思うから」と松岡さん。ぬいものカフェの講師や筆文字の講師も松岡さんのひと声で来てくれる人ばかりだといいます。 

レモンの庭には、90歳を越えるおばあさんも来ています。最初の頃は、「耳も遠いし」と言ったりして、講座に参加することに意欲的ではなかったようです。刺し子やニット活動に参加して「今が一番自由だわ」と言ったそうです。それを見た松岡さんは、「人はいつだって始められて、できるようになるのだ」と感じたと言います。 

「ぬいものカフェ」の作品。縫い物が苦手な男性の方も通って一つの作品を仕上げました(左下)

今は、横浜市が受け入れたウクライナから避難している女の子も、レモンの庭に来るそうです。絵を描くことが大好きで「推し活DAY(サブカル部)」の時に通っています。スマホの翻訳機能を使いながら、同じアニメ好きな日本人の子と国境を越えて交流を深めています。そんな姿を見て松岡さんは「好きなものが真ん中にあると、国境も年齢も性別も越える」と感じたそうです。 

 

レモンの庭での思わぬ出会いの話を聞いて、人と触れ合うこと、話すことはいいなと感じました。松岡さんが心を開いて向き合ってくれるからこそ、安心できる居場所なのだと思います。いくつになっても、チャレンジしてつながれる。レモンの庭にはつながった人たちの素敵な笑顔と愛が広がっていました。 

Information

一般社団法人 フラットガーデン 

多世代交流カフェ レモンの庭 

 

営業日時:月・水・木・金・土 

10:00~15:00 

 住所:横浜市緑区中山5-4-7 

Tel&Fax:045-5125649 

HP:http://www.flatgarden-yokohama.com 

メール:flatgarden.yokohama@gmail.com 

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この記事を書いた人
石﨑絵美ライター
滋賀県出身。夫の転勤をきっかけで横浜へ。食べることとボディメイクが趣味。無理なくできることを実践しながら、身体の変化を楽しんでいる。障害児二人の子育てに奮闘しながら成長中。神社参拝も好き。
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