そんな子育て中・妊娠中の乳がんを経験したママさん二人が、同じような境遇で乳がんと闘う仲間が気軽にお互いの話ができる“つながる場”をつくりたいと、大和市を拠点に「ハートリボン」というユニットを立ち上げ、乳がんママをつなぐ交流会や、勉強会などの活動をしています。
このインタビューは、私自身が二人と同じではないものの大きな病気をしたことがきっかけとなり実現しました。健康に漠然とした自信があった自分に急にやってきた現実と不安。それに一人で向き合うことは想像以上に大変なことです。
私の子どもの同級生のお母さんで、現在4歳のお子さんを育てる阿比留(あびる)亜佐美さんは、妊娠8カ月で乳がんを発症しているという診断を受けました。
病気の治療よりまずは出産を優先し、正産期の37週に出産。無事出産できたことに安堵したものの、病気の検査に時間をとられる日々……。そんな子育てと治療との両立の話をなかなかママ友には共有できず、孤独を感じながらも両方に向き合う毎日を過ごしていたところ、
家の近くの子育て支援施設のカウンセラーさんから同じく乳がん闘病中で子育てをする西尾愛さんを紹介されます。
西尾愛さんは、2017年にお子さんが2歳の時に乳がんを発症しました。病気が分かった時「なんで自分が?」と絶望的な気持ちになったそうです。
手術、抗がん剤から放射線ホルモン治療と、なかなか終わりが見えないしんどい治療。
それでも再発する人はいるという厳しい現実に直面します。
そんな経験を経た二人が「体の健康と心はつながっている」という気づきを共感し、乳がんの治療をしながらももっと前向きに楽しく生きていこう!と意気投合。
「同じ病気の人と気軽にお互いの話ができる、乳がんママがつながる“場”をつくろう!」と活動を始めました。
活動は、最初は大和市の施設で、乳がんママ同士がお互いの経験や思っていること、不安なことなどを話したりする交流会から始まりました。2021年から「ハートリボン」とユニット名をつけて、交流会のほかに講師の先生を呼んだヨガやフィットネス、勉強会を行ったり、インスタライブを毎週開催するなど、活動の幅を広げてきました。
ユニットの名前の由来は、乳がんの人の別の呼び方“ピンクリボン”から。みんなの心をつなげようという思いで“ハート”を入れて名付けられています。
活動序盤はコロナによる巣ごもり期間もあり、主にオンラインがメインでしたが、現在は広く乳がん経験者以外の方も募って対面でのイベントも定期的に開催しています。
今回ハートリボンが参加していた地域のカフェ主催のイベントでは、「入浴タオル」という乳がんの手術をした方が、公共の場で自然に胸元を隠せるようなアイテムをかわいくデザインして販売するグループとの対談なども行っていました。
「このような出会いがあるのもこの活動をしている楽しみ」と二人は話します。
活動をすることで、前向きな自分への変化と、これまでと違う人との出会いの変化を感じると。
「同じ病気の人には、他人を優先するまじめで頑張りやさんが多い」と語る西尾さん。みんなに“自分を大事にする”ことの大事さをもっと知ってほしい、“楽しむ”ことを大事にしてほしい。それが病気を遠ざける心の健康につながる、という思いがあるそうです。
今後の展望をお聞きしたところ、「この活動をもっと広く知ってもらいたい、乳がんを抱えるママさんたちがたくさんつながってみんなで元気になる大きなイベントを開きたい」と話していました。
病気は、普段は自分には遠いことだと思っていても、診断されたり発症することで初めて、突然に身近なことになる瞬間が訪れるものです。二人が話すように、子育て中だとついつい後回しになってしまいがちな、睡眠をとる・体を動かす・自分が楽しむ、などの自分を大事にすることの大切さ、“心と身体の健康はつながっている”という言葉に、自分が病気を経験したことでより深い実感がありました。
そしてこのインタビューを行う中で、「ピンクリボン」や「入浴タオル」、「乳がんサバイバー」など、私にとっては初めて出会うワードが度々出てきました。言葉だけではなく、きっと同じ苦しみを抱えたもの同士にしか通じ合えないことというのがたくさんあるのだと、二人のインタビューを通して気付かされました。
病気と子育てのはざまで悩みを抱える人が少しでも救われるために、同じ悩みを持つ人同士をつなぐ二人の活動の意味は大きいと感じました。
今も同じように悩んでいる人が一人で悩まなくて済むように、少しでも多くの人にこの活動が届きますように。
ハートリボン
Instagram: https://instagram.com/heart_ribbon12389?igshid=YmMyMTA2M2Y
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