

新型コロナウイルスの拡大により、子育て支援団体の活動が大きく制限されました。対面でつながりにくくなることで、必要な支援が必要としている人の元に届かないという情報のミスマッチをなくしたい。そこで森ノオトは2017年度から実施してきた地域活動団体向けの発信力UP講座や個別支援、今まで事業で培ってきた情報発信のノウハウや、集まってくるさまざまな子育て支援情報を活かして、当事者に響く情報発信の支援を行いました。
本事業は独立行政法人福祉医療機構の「WAM助成2022」として実施し、講座内容はそれぞれの団体が現在身を置くフェーズに合わせてのオーダーメイド。一方的な講義形式ではなく、どうしたらよりよくなるのかを団体の皆さんと一緒に考えることで、支援終了後も団体が情報発信を無理なく継続できることを目指しました。

成果報告会の会場となったアートフォーラムあざみ野
12月23日に行われた、全5回の伴走支援の成果報告会は、主催者であるNPO法人森ノオト理事長・北原まどかの挨拶から始まり、事務局長・宇都宮南海子の進行で各団体の成果発表に移りました。
登壇したのは青葉区内で活動する6団体。
nicoっと(障害児ママヨガサークル、コワーキングスペース「nicoっとステーション」運営)
かも☆ん(乳幼児連れの親子の居場所づくり)
かもマチ食堂(子ども食堂)
親子スキンタッチ(鍼灸、東洋医学に基づくスキンタッチ教室開催)
ままリズムぱぱリズム(ヨガやダンスを中心とした親子・多世代交流の場づくり)
NPO法人ピッピ・親子サポートネット(保育所、乳幼児一時預かり事業、学童等の切れ目ない支援提供)
この6団体のみなさんが、個別支援で取り組んだことや得られたことを軸に、団体紹介や広報への課題感、得た内容を今後どう活かしていくかを発表しました。

かもマチ食堂の 冨川貴子さん(左)。かも☆んとかもマチ食堂は、どちらも鴨志田ケアプラザで活動していて、運営メンバーが半数程度重なっていたため、途中から一緒に講座に参加しました。チラシデザイン講座で知った無料デザインツールのCanvaを使ってチラシを制作したところ、イベント参加人数が普段の4、5組から9組にまで増えたのだとか

親子スキンタッチ会の山田由伊さん(中央右)と桑野啓子さん(右)。キャッチコピー、チラシデザインの講義を通じて、伝えるには自分たちの中で伝えたいことを明確にする必要があると強く感じたそう。伴走支援中は自分たちのやりたいことを改めて明らかにしたり、同じく支援に参加しているままリズム・ぱぱリズムとの交流も生まれ、内にも外にも輪が広がりました。報告会当日はオンラインで参加、発表してくれました。担当したのは森ノオトの宇都宮南海子(中央左)、佐藤沙織(左)

ままリズムぱぱリズムの滝口美穂子さん(左)。活動内容のダンスを活かしてInstagramにリール動画を取り入れたところ、伴走支援期間の11〜12月の間でフォロワーが5%増加し、その他の媒体も順調にフォロワーや再生数が伸びているそう。さらに支援をきっかけに組織図を絵で表現して、活動への思いを共通認識とし、現場のスタッフの発信力の底上げにもつながりました

自分たちが目標とするNPO法人「街の家族」(青葉区)の活動を見学したことで、スタッフと利用者の垣根のない関係や、恩送りの中で組織内の人が巡っていく団体の在り方に改めて考えさせられたという nicoっとの池小百合さん(右)。この経験が自分たちにとってのバリューの明確化につながり、今後SNSでは「fact(行動したこと)」の発信に力を入れていくと話しました

さまざまな事業を展開するNPO法人ピッピ・親子サポートネットからは、親と子のつどいの広場事業と乳幼児一時預かり事業「はっぴい」の古賀恵子さん(中央)が発表。利用者の「(はっぴぃを)もっと早く知っていればあの時苦しむ必要がなかったのに」という言葉から、本当に必要な時に利用してもらうには広報の優先度を上げる必要性を実感したそう。現場の仕事に追われて後回しになっていたことを踏まえて、業務時間内に広報の時間を設定しました
自団体の魅力を伝えるためのチラシをどう作るか、作成したチラシをどこに置くか、団体の活動内容に合わせたインスタグラムの使い方など、講座で得た気付きをスピーディーに実践した団体が多く、その行動はSNSの再生回数やイベント参加人数の増加といった結果に結び付きました。
そのような具体的な発信に関する成果が聞かれる中、組織のあり方や活動するスタッフの気持ちの整理につながったという発表もありました。目標とする団体の活動見学や、組織図を絵で表現して団体内で整理・共有したケースも。「コロナの打撃から“何もできない”と凝り固まって、自分たちの考えが小さくなっていたことに、講座を受けたことで気付けた」という声もありました。
各団体発表終了後には伴走支援で講師を務めた高瀬桃子さん(キャッチコピー)と柴崎久美子さん(チラシデザイン)にも講評をいただき、「広報とは氷山の一角。見える部分を整えるためには、見えない土台を整える所から着手することが大切」「スタッフや利用者にとっての求心力や方向性という名の旗をどうやって振るか。それを手探りで見つけている団体にとって、広報を考え直した機会は理想実現への方向性を見出すきっかけとなったのでは」と結んでいただきました。

森ノオトは「WAM助成2022」を3本の柱立てで実施しています。講評後、2本目の柱である子育て支援団体への取材記事について、森ノオト編集長・梶田亜由美より説明。加えて森ノオトが毎月初旬に掲載している、地域の子育て情報への情報提供を呼びかけました
プログラムの後半は、2テーブルに分かれ、講師や森ノオトのメンバーも混じっての交流タイムとなりました。前半の発表も終わりリラックスした雰囲気の中、講座を受講しての感想や、発表を通して聞いてみたいことを団体同士で語り合いました。

それぞれの団体のチラシを交換しながら、日頃の取り組みや苦労を話しました
印象的だったのは、これまで同じ地域の中で存在をなんとなく認識し合っていた団体同士が、実際につながる言葉が飛び交っていたことです。
「SNSいつも見てます」
「実は昔、お世話になっていました」
多種多様な団体が、伴走支援を終えての達成感や変化を共有することで、その場は自然と一体感に包まれていました。団体の課題をテーブル全員で話し合う様子は、活動は違えどまるで一つの子育て支援チームのように見えます。

最後は参加者全員で記念撮影。事情で当日現地参加が難しかった方も、オンラインで駆けつけてくれました
参加した方々からはこんなお話がありました。
「チラシをカラーで作ることにすら発想が及んでいなかった。スマホでチラシを上手に作れた経験が、広報に対する気持ちを前向きなものにしてくれました」
「スキル面の向上をイメージしていたけど、それだけじゃなくて広報を通じて団体内部にテコ入れできた。メンバーと語り合うプロセスをつくり、自分たちの表現を口に出し合えるようになった」
「自分たちの団体が持つスキルが、他団体とつながることでお互いに成長できると実感できた」
この場に集まった方々は、実に個性豊かであったように思います。さまざまな道のプロや、恩送りの形で地域とつながる人。みんなが横につながることで、それぞれのフィールドで得たものがまた違う場所へと広がっていきます。そんな巡りが、きっと支援を必要としている人の元へつながっていく。その流れの一端として、ローカルメディアで働く私にできることはなんだろうと、改めて考える機会となりました。

2022年度実施した伴走支援事業をまとめた冊子を、2023年3月中の完成を目標に制作しています。各団体への詳しい伴走支援内容について知りたい方は、ぜひお問い合わせ( kouza@morinooto.jp )ください。
nicoっとステーション
https://www.instagram.com/nico.station/
かも☆ん
https://lafull.net/spots/spots02-nakazatohokubu/
かもマチ食堂
http://aosha.jp/children/04kamomachi.html
親子スキンタッチ
https://www.instagram.com/oyako_skintouch/
ままリズムぱぱリズム
https://mamarhythmpaparhythm.wordpress.com/
NPO法人ピッピ・親子サポートネット

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