青葉ファームランドで出逢った おい“しいたけ”!と農福連携
JA横浜の直売所で「椎茸だしパック」を手に取り、アイデア商品だな~とパッケージの裏面表示を見ると、青葉区で作られていることを発見。その後、その椎茸は農福連携で栽培されているらしい、という情報を得ました。椎茸一大産地出身で椎茸LOVEな私、むっくが、青葉区の採れたて“しいたけ”と就労継続支援B型事業所の「青葉ファームランド」を取材しました。

やさ“しいたけ”~椎茸ハウスの様子~

東急田園都市線・市が尾駅からバスに乗って「中里学園入口」バス停を降りて徒歩4分程度。白い大きなビニールハウスに「青葉ファームランド」の看板。青葉区鉄(くろがね)町、バス通りを離れると農地が広がるエリアの一角に、椎茸ハウスと加工所がありました。

大きなハウスは手前が加工場です。椎茸をスライスして乾燥させ、乾燥椎茸を製造中

ハウスに入るとふわ~っと椎茸の香り。加工場では、みなさんがそれぞれのペースで作業中でした。なんだか、椎茸の香りもみなさんの空気感もふんわり和やかです。椎茸を計量して袋詰めする人、椎茸をスライスする人、乾燥する人、乾燥椎茸をパッキングして商品化する人。手際よく作業しながらも、雰囲気はあくまでも和やか。

ハウスの奥の部屋が菌床室(栽培室)となっています。菌床が棚にずらっと並ぶ様子は圧巻。菌床とは、おがくずなどの木材チップと米ぬかなどの栄養分を混ぜた椎茸を栽培する培地のこと。すでに椎茸の種菌が植え付けられています

菌床室では、にょきにょきと椎茸が生育中。思わず「かわいい~!」と声が出ました。椎茸には菌床栽培と原木栽培という方法がありますが、青葉ファームランドでは菌床栽培を導入しています。

 

菌床室での作業は「並べ(菌床を棚に並べる)」→「栽培(間引き・調整)」→「収穫(刈り取り)」→「けずり(菌床に残った石づきを取り除く)」→「浸水」→「並べ」を2回繰り返し、最後に「廃菌床(使用済みの菌床を廃棄)」という工程です。

こうやって削るんですよ!と見せてくださいました。ここでも、みなさん、テキパキ作業されているんだけど、やさしい……

ハウス内は湿度と温度が保たれているので、なんだか森の中にいるみたい。椎茸は、菌床を棚に並べてから、2~3日で育ち始めたものを、間引いたり調整したりしていき、最終的に10日程度で刈り取り、出荷しているそうです。

ハウスに入って、雰囲気のやわらかさと、みなさんがとても楽しそうに作業されているのを感じました。

 

 

うれ“しいたけ”~青葉ファームランドのこれまで WinWinの農福連携~

青葉ファームランドは、2018年に就労継続支援B型事業所としてスタートしました。

就労継続支援B型事業とは、障害者総合支援法における就労系障害福祉サービスの一つで、働きたいけれど、障害により、現時点では一般企業に就職することが困難な方や、一定年齢に達している方に対して、雇用契約を結ばずに働く場所を提供するところです。利用者は、作業分の工賃をもらって比較的自由に働くことができ、一般就労への移行に向けて支援が受けられます。

実は、森ノオトでは2015年に「タモギダケ栽培」で青葉ファームランドを取材していました。その際、「障害のある方の、就労支援の場として機能していけたら」というお話しを聞いていましたが、実現したのですね!

 

青葉ファームランド代表の三堀泰広さんは、根っからの地元っ子。代々農家を営む家に生まれ育ったものの、一旦は会社員になった三堀さん。東日本大震災後に、農家になることを決めました。その際、栃木県にある(株)アシストジャパンの椎茸栽培×福祉の事業を参考に、就労継続支援B型事業所として運営することを決めます。

 

鉄地区は農業が盛んな地域ですが、高齢化と後継者問題を抱えています。「農業を継続していくうえで、欠かせないのが人手。人手を確保するという課題を、福祉で助けられたんです」と三堀さんは言います。

農福連携にチャレンジした背景には、鉄小学校には支援級があり、三堀さんは子どもの頃から障害者を身近に感じていたことも影響しています。青葉区には障害者の就労施設がないことを知った三堀さんは、神奈川県の「かながわ憲章」でもある「ともに生きる」を実現したいと考え、農福連携の「就労継続支援B型事業」という現在の取り組みを始めました。その際、地域に障害者の就労施設を受け入れる土壌があったことも大きかったとのこと。

農家としては、人手を確保できることが、事業継続につながります。

一方、通年ハウス栽培で天候に左右されず、決まった手順で作りやすい椎茸栽培は、農業の中でも、一般的な就労が難しい方々にとって働きやすい農業であると言えます。利用者さんは、生活リズムを整えて一般就職の準備ができたり、工賃を得たりすることができます。青葉ファームランドは、生活の自立をめざす方々の第一歩を応援する場所になっています。

椎茸栽培は、まさにWin-Win(ウィンウィン)の両者にとってうれしい取り組みなのです。

 

 

たの“しいたけ”~青葉ファームランドで働く方々の声~

青葉ファームランドのTシャツです。かっこいい!

実際に働く方々にお話を聞くことができました。

2018年立ち上げ当初から働いている、伊藤さん。商品のシール貼りや、栽培では菌床の削りや浸水、並べ、廃菌床も担当

5年目の頼れる存在の伊藤さん。「青葉ファームランドを見学した時、アットホームな雰囲気にひかれて申し込みました。削りの作業が好きですね。自分が作ったものが商品になってお店に並ぶことで、役に立っていると感じます。青葉ファームランドの特徴は、雰囲気がいいこと。お昼ごはんがおいしいこと。カレーが好きですね。ここで知り合った仲間と、一緒に出かけたりして、楽しいです」。

村田さんは、20代。この日は計量と袋を閉じるシーラ―を担当していた

3年目の若手のホープ村田さん。「いいところは、ゆっくり作業できること。好きな作業は計量を合わせること。週4日出勤しています。みんなで作業しているのが楽しい。働いたお金は貯金したり、好きなものを買ったりです」。

 

「私でいいのですか?!写真はちょっと……」と明るくお話し上手なある利用者さんは、2022年10月に入ったばかり。「働くと休憩のバランスがよい職場です。お昼ごはんがおいしいんですよ!病気になったこともあり、健康的に働ける働き方が今の自分に合っています。困ったことがあったら、スタッフに相談できるのが心強いです」。

 

最初は2~3人から始まった事業所も、現在は約30人の方が登録しています。年齢も20~60代と幅広く、それぞれの障害や個性もさまざま。週1日から、午前だけ、午後だけといった、各自のペースに合わせて働くことができます。そんな環境で、青葉ファームランドが大切にしているのは、「それぞれの自主性を大事にすること」。

「一人ひとりの希望やペースに合わせて作業分担をしています」と話してくれたのは、サービス管理責任者の小林さん。小林さんは、前職も福祉のお仕事をされていたそうです。そうした職員の方々がいることが、この雰囲気をつくり出しているのだな、と納得しました。

毎日、おいしい手作りのお昼ごはんが出ることも、みなさん楽しみの模様。希望者には、「おでかけレク」という、年2回、自分たちが行きたいところに行く、というレクリエーションもあり、作業所の仲間同士のつながりを深めています。働く場であるとともに、居場所でもあるのだな、と感じました。

 

体調や気持ちの変化でシフト通りにいかないことや、感情表現が苦手で、仕事のつらさをうまく伝えられなかったり、作業所でのコミュニケーションの取り方に工夫が必要だったりと、これまで取り組みを続ける中で、課題もたくさんあり、試行錯誤しながら今の体制に辿り着きました。

このやさしい雰囲気とみなさんの「楽しい」は、ともに生きるため、多様性を活かす努力を互いに続けてきた結果なんだなぁと感じました。

 

 

あたら“しいたけ”~青葉ファームランドがめざすこれから~

青葉ファームランドの強みはなんといっても生産性の高さと販路を持っていることです。

「生産に貢献してくれている利用者さんに、販売を通してお返したいと思っています」と三堀さん。工賃も上げていけるよう経営したいと工夫を続けています。

青葉ファームランドの「鉄(くろがね)しいたけ」商品。左から「生しいたけ」、「乾燥しいたけ(スライス)」、「椎茸だしパック」。JA直売所、ロピア、ファームドゥで販売中

「乾燥しいたけ」は、スライスされているので、切る手間がなく、すぐに戻る!便利なもの。だしパックに使われているのは、実は間引きした小さな椎茸。石づきを取り除いて乾燥させたものが、不織布パックに入っています。水につけるだけで、おいしい椎茸だしをとることができます!

 

三堀さんは、育った地域に恩返ししたいと言います。高齢化も進む地域で、買い物の場所が遠いことをあげ、土曜日に朝市をやりたいと計画中とのこと。

現在、新たなハウスも建設中。「色んなきのこを栽培したいと思ってます」と三堀さん。今後、椎茸以外のきのこにも、注目です!

 

青葉ファームランドは「働く場所をつくる」「居場所をつくる」ことから「地域へ開く」の次のステップへと進んでいます。

 

 

おい“しいたけ”!~椎茸を実食~

採れたての椎茸。ハウスでも購入可。「生しいたけ」150g(150円より)は、こんなにたっぷり!!

椎茸嫌いだったのに、ここの椎茸は食べられるようになりました!というスタッフさんがいました。どんな食べ方がおすすめですか?と聞くと、「やっぱりバター醤油ですね!!」と。めんつゆで煮たものも、お弁当のおかずにぴったりとのこと。

特においしいのは「軸」。おいしいので絶対食べてほしい!と話してくれました。

お話ししていたら、すぐにでも食べたくなって、取材の終わりに椎茸を購入。帰宅後、すぐに作りました!

採れたて椎茸のソテー~バター醤油~。「できたよ~」と食卓に出したら、一瞬で消えました……。「最近、椎茸ちょっと苦手……」という小学生の娘もおかわり!と。ジューシーで歯ざわりもよく、本当においしい!軸のおいしさも食感も、最高です!

青葉ファームランドの椎茸は歯ごたえがよく、味はやさしい。椎茸の独特な風味が苦手な人でも食べられた!というのも納得です。

直売もしているので、ハウスに行けば、採れたて椎茸を購入できますよ。採れたての椎茸が味わえるのは、地産地消ならでは!BBQで焼いて食べるのも、絶対おいしいと思います!椎茸といえば、食物繊維が豊富で低カロリー。30分ほど日光に当てると、ビタミンDが増え、旨味も増すと言われています。食べ比べてみるのもいいですね。私は、スライスした椎茸を冷凍保存してストックしています。凍ったまま、色んなお料理に使えて便利です。

やさしい空気で作られたおいしく体にもやさしい“しいたけ”、ぜひ味わってみてください!

Information

■青葉ファームランド

https://www.aoba-farmland.com/

 

■問い合わせ先:青葉ファームランド

TEL:090-8450-3052

e-mail:aobafarmland@gmail.com

 

■青葉ファームランド椎茸販売店:ハウス直売

〒225-0025 神奈川県横浜市青葉区鉄町518

 

■青葉ファームランドの椎茸が購入できる場所:JAハマッ子、ファームドゥ、ロピア

・JA横浜ハマッ子

たまプラーザ店、中里店、四季菜館店、瀬谷店、都筑中川店、みなみ店ほか

 

・ファームドゥ

あざみ野マルシェ、南町田グランベリーパーク、地産マルシェ新川崎、港北マルシェ、地産マルシェ大倉山の各店

 

・ロピア

港北東急SC、ノースポート・モール、川崎水沢の各店

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この記事を書いた人
成瀬優子ライター卒業生
3歳で包丁を持ち、今は食育フードコーディネーター。「キッズフードアドベンチャー」代表。海と山と温泉に恵まれた地で育ち、大学では海洋生物のおもしろさにはまる。子どもたちに「生の多様性」や「命のすごさ」を伝えたい。子どもと一緒に楽しむ!がモットー。
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