(text、photo:隂山綾)
絵本作家のこがようこさんのお話し会「Co-coya de 昔ばなし ~入梅~」というイベントへ参加しに、横浜市緑区の中山にある753 villageまで行ってきました。横浜市緑区中山の住宅街で、地主が提供した空き家をリフォームして活用し、地域交流できるようにする取り組み「753プロジェクト」として、以前から気になっていた場所です。そこにある職住一体型施設「Co-coya」での開催でした。
日本の昔ばなしには、私たちの祖先が何世代も語りついできた自然観、子ども観、人生観が込められているとのことで、「温故知新」をコンセプトに、二十四節気をテーマとした昔ばなしを皆さんで楽しみましょう、というのが今回の会だそうです。
まずは一般社団法人フラットガーデン代表の松岡美子さんからご挨拶がありました。この会場を提供してくださっている関口春江さんとこがさんと、昔話をやってみたいねと話し、生活に密着した手作りの飲み物やここで作られた野菜を味わえる会にしたいということが語られました。
次にこがようこさんの登場です!「このようにとてもゆるゆるとした会です。ゆるゆるとした場所です。私は絵本作家、紙芝居の脚本づくり、語り掛ける講演会などをやっています。子どもを通して絵本に出会い、子どもと読む絵本はなんて面白い!と思い、関わるようになり、語りにも出会い、生活に密着している昔話を聞くのが楽しくて、語りの世界に入って30年以上経っているという状態です。今日は昔話を語りますが、語り手聞き手ではなく、ナビゲーターとして気軽に季節を分け合えたらいいなと思っています」と会は始まりました。
「来る途中に田んぼがあり、蛙が鳴いている。おたまじゃくしを持ち帰ったことがある。母さんガエル、父さんガエルが、こどもは手と足がねえからと喜んでいたら、しっぽから引っ込んで、やはりカエルになってしもうた。だからまた、カエルになったとギャアギャア毎日毎晩鳴いているんだ」。
「こういった小さいお話を、やっていきますね。皆さんは周りで蛙、見ませんか?私は青葉台に住んでいるのですが、そこにはたくさんいます。こどもの国が近いので、そこの田んぼの中にいるようで、季節になると大合唱しています。蛙は生活の近くにあって、根差していたという感覚があります。小さい頃は大雨が降ると、道路に蛙が出てきて、うれしいと思っていたのに最近はあまり見掛けない。家の前に遊水池があるのですが、木が生い茂っていてすごいので、どこにでもいると思っていました」(こがさん)
「昨年新治小学校に行ったら、蛙の大合唱でした!」と観客の方からも声が上がりました。さらに「私は都筑区の港北ニュータウンに住んでおり、徳生公園と緑道でつながっている公園で、カエルが卵を産み付けたところに遭遇、おたまじゃくしがいっぱい泳いできて。啓蟄の頃でした」と答える方も。
「一緒くたになって生まれてきた。そんないいところを見られたんですね!
次回は蛙の専門家や里山交流センターの方を呼んで、日本の蛙はいなくなっちゃったのか?そういう話を混ぜながらしつこく蛙の話をしたいなと思います。私、蛙好きなのかな?今日は服装も蛙っぽい色合いですね」とこがさん。笑い交じりに続けます。
Co-coyaの管理人で、本業は設計、ここをリノベーションされている関口春江さんのお話もありました。
「土の空間って今のご自宅では非常に少なく、触れる機会もないと思います。土の空間は外より10%湿度が少ない状態。それを住宅に取り入れ、体験できる場所になればいいなと思って始めました。土の空間は昔の建築技法で、昔の営みや暮らしを感じることができ、それを現代の空間に置き換えています。優しい時間になるのではと一緒に企画させていただきました。お米もここで作られたものです。70年経っているこの建物から昭和のものをいっぱい出してきて、出てきた羽釜でご飯を二升炊きました」。
「古い羽釜でも、ちゃんと炊けるんですね。昔話の中には‘升’と‘合’とかも出てくる。なんかシンクロしている。リアルに体感できると面白いなと思います」とこがさん。
お茶碗、ご飯、お湯のみ?お酒の話もしたくて土とも関係ある、ということでとっくりのお話もありました。お酒が大好きなおじいさんが、生前はなかなか飲めず、酒を入れるとっくりになればたくさん飲めると、備前まで行って、亡くなられた後に土になり、備前焼のとっくりになったお話。折角とっくりになったのに、醤油入れとして使われ、嘆いていたところを和尚さんに助けられ、その後はたっぷりとお酒をいつも注いでもらったということでした。
「この話を聞いて、おいしいお酒が飲みたくなりませんか?先日島根倉吉でおいしいと言われるお酒を買ってきたので、大丈夫なら手酌でぜひ召し上がってくださいね」と、ここでご飯の時間となりました。各自持参したお茶碗、お椀で野菜たっぷりのお味噌汁と梅干しで炊き込んだつやつやのご飯をいただきました。
「ここの野菜は30年農薬はほぼ入れてないもので、梅干しは5年ものの小梅梅干し。梅雨時期は梅干しを一緒に入れて炊き込む習慣があり、腐敗防止になります」と春江さん。
ちょうど入梅の日ということもあり、梅の話に花を咲かせつつ食事が進みます。
各自作ってきた常備菜や買ってきたもの等を持ち寄り、その場に居合わせた皆さんとお話ししながら温かいご飯をいただく、体中においしさと温かさが広がり、とても素敵な夜となりました。
会の最後には、こがさんから「私は常々、赤ちゃんがお腹の中にいる時からぜひ語り掛けてほしいと言っています。最後にこの絵本を読ませていただきます」と岩崎書店より6月に発売された『おなかのなかのあかちゃんへ』(作:こがようこ/絵:くのまり)の読み聞かせがありました。
赤ちゃんが生まれてきたら季節ごとにこんな体験をさせてあげたい、こんなところに連れて行ってあげたいと、たくさんの夢あふれるワクワクするようなお話と、不安なこともあるけれど、生まれてくることを待ち望んでいて、一生大切にするよ、という語り掛けで締めくくられ、会場は温かい空気に包まれました。
語りでつながる素敵な夜がおしまいとなりました。私は子どもが生まれてもうすぐ9年、絵本の読み聞かせをするようになってから、絵本を通して昔の暮らしや色々な考え、世界を知り、子どもと一緒に学びながら、豊かな時間を共有することもできる。そんな絵本の魅力にどっぷりとはまっていました。この日会を通して、昔話の語りで、大人の世界でもその場に集う方々と時間を共有して、共に学び、語らうことができると新たな面を知ることができました。
こがようこさんの出たばかりの本、『せかいのあいさつ (全3巻)』(文:こがようこ/絵:下田昌克/監修:岡本啓史、童心社)を買って帰路につきました。子どもたちへの読み聞かせで世界を知るのにもぴったりな絵本。ここから広がるつながりがまた楽しみです。
Co-coyaの素敵な空間と共にタイムスリップをしたような、そして丁寧な暮らしぶりにも刺激を受け、とてもいい夜となりました。次回は秋のお彼岸の翌日、皆でぼたもちを作って食べながら語りを聞く会。皆さんもぜひ訪れてみてはいかがでしょうか?
Co-coya
住所:横浜市緑区中山5-9-1
アクセス:JR横浜線・市営地下鉄グリーンライン「中山駅」徒歩約10分
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