マルシェは生きた学びの場。寺家ふるさと村を未来につなぐ鴨志田緑小の挑戦
青葉区の寺家ふるさと村四季の家で年4回行われている「JIKEマルシェ」。地産地消の推進だけでなく、近隣の公立小学校とのコラボによって、生きた学びの場としての広がりを見せています。鴨志田緑小学校の取り組みを紹介します。

昔ながらの田園風景が残る横浜市青葉区の寺家ふるさと村。この風景を未来世代に残したいという思いから、寺家ふるさと村四季の家を会場に2021年より「JIKEマルシェ」が開催されています。横浜市環境創造局が主催し、四季の家が運営、森ノオトでは広報を担当するなど、官民が連携して運営を続けてきました。

毎回、朝イチからお客さんが押し寄せる。毎年実施している来場者へのアンケート調査では、マルシェへの来場頻度が増えると、地産地消や景観保全というマルシェのコンセプトへの理解が深くなることがわかった

地産地消をテーマにし、寺家町周辺でとれたお米や新鮮野菜、季節の加工品、地元の食材にこだわったお弁当やスイーツ、花苗や石けんの販売など、毎回15〜17 店舗が出店。2020年12月の実験的な開始から約2年間にわたって年4回、季節に合わせた開催を続け、毎回平均して300名以上の来場者が訪れ、徐々に地域のマルシェとして認知が広まってきています。

食品だけでなく、花苗の販売も

そんなJIKEマルシェの取り組みが、地域の中でより広がりを見せています。

横浜市青葉区鴨志田町にある「鴨志田緑小学校」は創立40周年、全校児童約370名の公立小学校です(2023年度)。学区内に寺家ふるさと村があり、農地と住宅地が隣接した農的な暮らしを身近に感じられる教育環境がとても特徴的な地域です。鴨志田緑小では2023年度、5年生と6年生が総合的な学習の時間を活用して、自分たちの足元の地域である「寺家ふるさと村」について学びを深めることに取り組みました。

2023年7月に四季の家で行われた6年生の授業の様子。横浜市環境創造局と四季の家の職員による話を熱心にメモしている子どもたち。30年以上前の四季の家が開館した頃の映像や、江戸時代の地図も投影されて、なぜ寺家ふるさと村ができたのか?この風景を残すためには?を考える時間に

JIKEマルシェの広報を担当している私は、四季の家で行われた6年生の授業を見学。その帰り、6年1組の担任である岡田悠一郎先生から声をかけられました。「子どもたちに、寺家ふるさと村についての取材や記事を書くことについて授業をしてもらえないですか?」。自分の子どもたちも通う小学校で、子どもたちの学びに貢献できることが嬉しく、すぐにお返事したことを覚えています。

 

そして、7月。寺家ふるさと村の魅力を壁新聞にまとめるという6年1組の教室を訪ねて、 情報を誰に伝えたいのか、どんなことが伝わるといいのか、ということなど記事をまとめる上でのポイントをお伝えしました。私自身が緊張していたこともあって、とにかく時間内で伝え切るということに集中していたら、たった一コマなのにぐったり疲れ、毎日授業をしている先生方に尊敬と感謝の念が…!

 

その頃、お隣の6年2組では、こちらも同校の保護者の方が講師となって、動画の撮影と編集に挑戦。動画のテーマとなったのは、鴨志田緑小学校に伝わる「寺家雑煮」。毎年、学校菜園で収穫された野菜を使って、子どもたちが雑煮にして食べているのだそう。そんな寺家雑煮の魅力を、関係する人にインタビューして動画をつくる。それだけでもユニークな取り組みですが、7月に行った授業での四季の家との縁もあり、なんと12月のJIKEマルシェで実際に雑煮を作って子どもたちが販売する、という大きなチャレンジをすることになりました。

右側は6年生によるマルシェ出店のお手製チラシ。「近所の子がこのチラシ持ってきてくれたの」と来場した方も

鴨志田緑小学校では、元々、鴨志田町内の農地を活用して、「かもの子農園」という学校菜園に取り組んでいます。毎年5年生が中心となって、1年間を通じて野菜の栽培と収穫を体験し、校内で保護者向けの販売会も行ってきました。今年度は、校内での販売会に加えて、6年生と同じタイミングで、12月のJIKEマルシェで一般のお客さまにも野菜を販売してみることになりました。

かもの子農園で収穫の様子。畑の先生たちの指導の下で子どもたちが1年を通じて野菜を栽培している(提供・鴨志田緑小)

それぞれの学年、クラスでJIKEマルシェ出店に向けた取り組みを経て迎えた12月5日。

館内ロビーには私が出前授業を担当した6年1組の壁新聞がずらっと並んでいます。

「散歩に便利 寺家っぷ」「大人から子供まで楽しめちゃうイベント」……。

四季の家を訪れた人に読んでもらうには、どんな記事だったら?どんなタイトルだったら?ということにこだわって、さまざまな観点で寺家ふるさと村の魅力がまとめられていました。

現在も四季の家館内の研修室脇の廊下に掲示されています

「いらっしゃいませーーー!!」

「野菜販売していまーーす!!」

 

曇天の寒空の中で、子どもたちの元気な声が四季の家の館内外に響きます。

午前中は5年生による野菜販売。かもの子農園で自分たちが収穫した白菜やにんじん、里芋、カブなどの旬の野菜を寺家雑煮セットとして、レシピと合わせて販売しました。マルシェスタート前から、一般のお客さんに加えて、子どもたの保護者も押し寄せ、会場内はたくさんの人であふれ、用意した100セットがすぐに完売しました。鴨志田緑小の保護者の方々は、JIKEマルシェに来場したのが初めて、という方も多く、「近所でこんなマルシェやっていたんですね!」と、子どもたちの野菜を買ったあとも、他の出店者さんのお店でお買い物を楽しんでいる様子が印象的でした。

野菜の販売班と呼び込み班にわかれて館内外でアピール。手作りのPOPも光っていました

午後は5年生と入れ替わりで、6年生が寺家雑煮の販売にやってきました。午前中から保護者が仕込んでくれた雑煮を、子どもたちが販売。汁をよそう容器には、「We love 寺家」というメッセージとオリジナルのキャラクターのシールが貼られ、子どもたちがこの日に向けて丁寧に準備を進めてきたことが伝わります。販売スタートと同時に長蛇の列ができ、終わってみれば、あっという間に130食が完売!私も駆け込みで購入することができ、寺家町周辺の食材を詰め込んだお雑煮で、寒い中外にいた体がほかほかしました。

寺家雑煮は、はやし農園のにんじんや、あおば小麦をこねてつくったすいとん、四季の家の味噌を使用。その他、かもの子農園で収穫された野菜や地域の方の手作りこんにゃくも。当日は6年生の保護者が朝から仕込むなど、地域の協力があってこそ寺家雑煮の販売が実現

小学校の出店や掲示を受け入れた四季の家の職員の用田英理子さんは、「一般の出店者さんもいる中なので、マルシェ当日まで子どもたちの出店に正直不安もあったのですが、蓋をあけてみたら、とにかく大盛況で。学校でたくさん準備してきたことが伝わって、きっと子どもたちも達成感を味わったのではないかなと思います。寺家ふるさと村が好き、という気持ちを持ち続けていってほしいです」と話しました。

動画に登場するオリジナルキャラクター「寺家雑煮マン」がニュース仕立てで関係者をインタビューしていく。子どもたちの動画編集技術に驚くほどのクオリティです

6年生が制作した壁新聞は現在も館内で掲示中です。またオリジナル動画「Welove 」というタイトルの約13分の動画は午前と午後の1回ずつ、館内入り口のモニターで放映。窓口のスタッフに声をかけると動画を流してもらうことも可能なので、寺家ふるさと村へ散策と合わせて子どもたちの力作をぜひご覧くださいね。

 

JIKEマルシェがテーマにしているのは「寺家ふるさと村の風景を未来世代に残したい」ということ。子どもたちのふるさとになっていく風景の中で、野菜の栽培・収穫から販売まで。そして自分たちの言葉とアイデアで、作物や地域の魅力を語ることができる。マルシェという場が、地域の子どもたちの生きた学びの機会となったことは、寺家ふるさと村の風景が残っていく、担い手を育てることの種まきになったと感じています。

JIKEマルシェのコンセプト「地産地消が進むことで、寺家町の農業が続き、美しい田園風景を残していきたい」をインフォメーションブースなどで掲示して来場者へメッセージを発信している

 

Information

JIKEマルシェは2024年度も開催予定で準備を進めています。詳細はSNSを中心に発信していきますので、フォローよろしくお願いします。

Instagram:https://www.instagram.com/jikemarche/

Facebookページ:https://www.facebook.com/jikemarche

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この記事を書いた人
宇都宮南海子事務局長/ライター
元地域新聞記者。エコツーリズムの先進地域である沖縄本島のやんばるエリア出身で、総勢14人の大家族の中で育つ。田園風景が残る横浜市青葉区寺家町へ都会移住し、森ノオトの事務局スタッフとして主に編集部と子育て事業を担当。ワークショップデザイナー、2児の母。
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