できることを、細く永く。 ボランティアへのありがとうにあふれるこども食堂「ぶるーむクラブ」
千葉県柏市にある「ぶるーむカフェ」では、月に1回こども食堂が開かれ、私はそこで1年程前からボランティアとして参加しています。参加する中で感じることは、お客さんだけでなく、ボランティアも楽しく過ごせていること。運営しているぶるーむクラブの水井圭子さんと風間理恵さんにこども食堂への思いを伺ってきました。(ライター養成講座2024修了レポート:鏑木彩佑)

自然に囲まれた場所に佇むぶるーむカフェ

ぶるーむカフェってどんなところ?

ぶるーむカフェでは、月に1回18時からこども食堂が開かれています。運営するのは、障害のある子どもたちの自立とそのご家族への支援を行っている「社会福祉法人ぶるーむ」さん。地域交流のスペースとして、法人が運営している誰もが利用できる場です。

 

ぶるーむカフェの入口では、季節を感じさせるミモザがお出迎え。

その下には、木の実で作られた「もじゃもじゃ」が風にゆらゆらと揺れています。

取材の開始時間よりも少し早く到着したので、ぶるーむカフェの中で一休みしました。誰でも自由に出入りできるぶるーむカフェでは、本を読んだりお話をしたり、みなさんそれぞれ思い思いの時間を過ごしています。

 

大学に通う私がこども食堂でボランティアを始めたとき、コロナ禍の真っ最中でした。始めた理由は、何かをしなくてはならないという危機感を感じていたからです。他の人の人生は実りあるものだけど、私の人生は空っぽ。何もない。人との関わりが断たれ、ふさぎ込んでいたのかもしれません。そんなネガティブな感情からの出発だったので、こども食堂ボランティアをこんなに楽しくできるとは想像もしていませんでした。

ミモザともじゃもじゃがお出迎えしてくれました

地域の交流の場「ぶるーむカフェ」

ぶるーむカフェにいると、時間がゆったり流れていく感じがします。なぜぶるーむカフェで食堂を開くことにしたのか、話をお聞きしました。

 

水井さん:コロナ前は、調理場のある隣の施設のお部屋を使ってこども食堂を開いていました。でも、コロナになってからはそこを使うことができなくなってしまって。コロナ禍で1年半近くこども食堂を休止することになりました。

その間、どうしたら再開できるかをみんなで考えて、以前から地域の交流の場としてあったぶるーむカフェで食堂を開こうという流れになったんです。

 

風間さん:でも最初は、どうなることやらという感じでした。調理場と食事をする場所が離れているという問題は大きかったですね。また、以前は食事の前後に遊んだりお勉強したりする時間があったのですが、それも難しくなってしまって。同じような形での再開は難しい状況でしたが、それでもご飯だけは食べて欲しいなと思って、色々考えました。予約制にしたり、前半と後半に分けて入れ替えスタイルにしたり、予約制でお客さんくるのかな?と思いながらも恐る恐る再開した感じです。

 

水井さん:予約に関しては、今悩ましいことの一つです。予約の枠がすぐに埋まってしまって、来たい人が来られないこともあります。今後の課題ですね。

入口にあったもじゃもじゃ。カフェのお客さんが、公園の木の実で作り、持ってきてくれたそう

「こうしてみよう」の繰り返し

コロナで制限がかかる中、色々と工夫してこども食堂を続けているお二人。

ボランティアをする中で、これも工夫の一つなのかなと感じたことは、食事のスタイルについてです。ぶるーむクラブでは、床にマットを敷いて机を置き、その上に靴を脱いで座って食べます。なぜ、靴を脱いで食事をするスタイルになったのか、お話を伺いました。

 

水井さん:これはね、必要に迫られて(笑)。カフェでこども食堂を始めようってなったときに、カフェ内は土足だから、椅子と机を使えば靴を履いたまま食事ができると思っていました。むしろその方がお客さんも楽でいいなと。なんですけどね……。

 

風間さん:蓋を開けてみたら、来るお客さんの中には、1、2歳くらいのお子さんを連れたお客さんも多くて。靴を履いたまま椅子に座って食事するのは難しいよねってなって、苦肉の策で今のスタイルになりました。マットの上にちゃぶ台を置いて、靴を脱いで座ってお食事をする。これで一回やってみようかと。そうしたら、そのスタイルが結果的に良くて。お家の中にいるような感覚で、時間を気にせずゆったりくつろいだり、話が弾んだり。会場づくりによって、その場にいる人の心の状態は変わるのだと思いました。コロナが明けてからは、18時から20時の間を二つに分けて2部制で食堂を開いているので、前よりは食事の時間は決まっていますが、それでもみなさんくつろいでくださっていて、私もうれしいです。

ある日のこども食堂の様子(写真提供:ぶるーむクラブ)

ボランティアさんって何をしているの?

ぶるーむクラブのこども食堂では、ボランティアは調理班と会場班に分かれて活動しています。主に、調理班は献立を考えて調理をして、会場班は会場づくりと配膳をします。他にも、昼間に食材の準備をする人もいて、それぞれの生活リズムに合った活動ができているように感じます。ボランティアの年齢層は、中学生からお母さん世代までと幅広く、調理班と会場班を合わせて15人ほどです。

 

水井さん:「こうじゃなきゃいけない」みたいな形はなくて。こうしてみようかって意見を出し合って、色々試しながら今のスタイルになりました。でも今のスタイルでい続けなければいけないとは思っていません。ボランティアさんやお客さんが喜んでくれるとうれしい気持ちになりますが、それと同じくらい、「こうしたらどうかな」という意見をいただくこともとてもうれしいんです。こども食堂を運営していると、今のスタイルやこども食堂を行うこと自体が良くも悪くも当たり前になってくるんですね。

なので、ボランティアさんやお客さんが新しい視点で意見を言ってくれると、私たちも「そうか!」と気付くことができて、ありがたいです。

 

風間さん:今まで通りやるのも大事ですが、「言われたことをやる」の一歩先、何か気付いたりアイデアを思いついたり、そういう体験をボランティアさんに楽しんでやってもらいたいなと思っています。

ボランティアさんのつくった料理メニュー。ご飯、チキンと野菜のオーブン焼き、豚汁、サラダ、りんご

ボランティアへの感謝の気持ち

「ボランティアさんがどう感じているのか、聞いてみたい」と話すお二人。その背景には、ボランティアさんにも楽しく参加してほしいという思いがあるようです。なぜ、ボランティアのことをそこまで気にかけているのか、お話を伺いました。

 

風間さん:それはもうね、ボランティアさんがいないと成り立たないからです。

ボランティアさんは夜遅くに自分の時間を割いて来てくれているので、できる範囲内ではありますが、ボランティアさんの負担がないようにしたいと思っています。

こども食堂を開いている時間と、ここまで来て帰る往復の時間。自分の好きなことをできる時間を割いて来たいと言ってくれるのは、本当にありがたいです。

 

水井さん:ぶるーむクラブのこども食堂のサブテーマに、「ボランティアさんに楽しんでもらう」というのがあって。ボランティアをしてすぐに「では帰ります!」ではなくて、ボランティアさん同士でお話をしたり、料理のレシピを聞いたり、そこで生まれる交流を楽しんでほしいですね。

私は、ボランティアさんの参加が一回きりでもいいと思っています。その人の生活スタイルもあるし、来たくても来られない人がいるのも知っています。その一回の体験が大事で、その体験から思うことって必ずあると思うんですよね。

 

風間さん:その人の生活スタイルの中で、できることをする。細く永く、やれることを見つけてやる。ボランティアって、そういうことなのかなと思います。頑張りすぎると息切れちゃうから。お客さんもボランティアさんも、居心地の良さを感じてくれていたらうれしいですね。私たちが続けられているのも、私たち自身がその空間に居心地の良さを感じているからなのだと改めて思います。居場所は、生きがいにもつながるのかもしれません。

 

水井さん:私の中で、ぶるーむクラブのこども食堂がこうあったらいいなっていう姿があって。それは、一度こども食堂から離れたお客さんやボランティアさんが、ふとこの場所のことを思い出したときに、まだ続いている食堂であること。これからも色々なことが起こるとは思うけれど、もしそうあれたらと思うと、楽しみです。

 

 

(取材を終えて)

「こんにちは~!まだ少し早いから、休んでてね!」

取材前、私がぶるーむカフェに早く到着して待っていたとき、水井さんがカフェに入ってきて、そう声をかけてくださいました。

数分後、風間さんがやってきて、「今日は貴重なお時間をありがとうね」と言ってくださいます。お時間をいただいているのは私の方。それなのに、「ありがとう」と私の時間を大切にしてくれることにとても感動しました。相手の大切な時間をいただいているという感覚を持っているお二人にとって、ボランティアを大切にしたいと考えるのは自然なことなのかもしれません。お二人のその思いが伝わっているから、お客さんもボランティアも、ほっとする空間を楽しめるのだと思います。これからも、ぶるーむクラブさんのこども食堂が続いていくことを心から応援しています。

Information

住所:千葉県柏市中原1817-1

アクセス:東武アーバンパークライン・新柏駅から徒歩5分

HP:http://www.bloom.or.jp/publics/index/33/

X:https://twitter.com/BloomClub_KS

電話:04-7136-2324

日時:第一部18:00~ 第二部19:00~(開催日は毎月HPで公開)

料金:

子ども/無料

大人/100円

この記事を書いた人
寄稿者寄稿者
未来をはぐくむ人の
生活マガジン
「森ノオト」

月額500円の寄付で、
あなたのローカルライフが豊かになる

森のなかま募集中!

寄付についてもっと知る

カテゴリー

森ノオトのつくり方

森ノオトは寄付で運営する
メディアを目指しています。
発信を続けていくために、
応援よろしくお願いします。

もっと詳しく