人が出会う場所に。青葉区鉄町にある「西法寺」を訪ねて
青葉区鉄町にある浄土真宗本願寺派 西法寺は2006年に新しく建立されたお寺です。
そのままの自分自身で、自分らしく安心できる場所がお寺であるという、西法寺の魅力とその心、そして夫婦二人三脚でたくさんの方とご縁を紡ぎながら、お寺を作られてきたその歩みをお聞きしました。

田園都市線・市が尾駅をでて横浜上麻生線(県道12号)を柿生方面にまっすぐ進むと、鶴見川沿いに田畑が広がるのどかな景色があります。春にはれんげやよもぎ、秋にはすすきとあぜ道になじみ深い草花が咲く、昔ながらの自然が豊かな青葉区鉄町。2006年、その高台に「西法寺」は新しく建立されました。西法寺のご住職の妻である西村奈々美さんが、私のヨガ教室に通ってくださったのがご縁で、昨年(2023)の秋から西法寺で私はヨガ教室をひらくようになりました。

お寺のお堂は畳が心地いい、広々とした落ち着く空間です。詳細は末尾のInformationをごらんください

折々の季節が窓の景色となり、時には晴れ渡る青空を眺めながら、時には雨音を聴きながらのヨガの時間は心静かに落ち着かせてくれる、私の大切な時間です。

 

ヨガの後、みんなで一緒にお茶をいただくのですが、おしゃべりをしながらくつろぐ姿や心をひらいてご自分の話をされるのを見て、なぜお寺ではこうも心が自由になるのだろう、そしてお寺でのヨガはどうしてこんなに心が鎮まり、安心感に包まれるのだろうと不思議に思いました。

 

お寺の魅力を感じるにつれもっとお話を聞きたいと、ご住職である西村信也さんと坊守さんの西村奈々美さんに話しを伺いました。

ご住職(右)と坊守さん(左)。坊守さんとは、坊=お堂を守ることから生まれ、今は住職の妻を指すことが多いそうです

福岡県北九州市に生まれたご住職と佐賀生まれの奈々美さんはお二人ともご実家が浄土真宗のお寺だったそうです。お見合い結婚で出会われ、その後7年の時間を経てご結婚されました。

 

西法寺は2006年に建立(こんりゅう)された新しいお寺です。

最初は、奈々美さんのご実家のお寺にご住職が婿養子として入る予定でしたが、関東に新しくお寺を開設するという選択をお二人は選ばれました。

少子化の流れを考えても 新しくお寺が建つということ自体が私には驚きでした。

 

ご住職は龍谷大学、また同大学院で仏教を学ばれただけでなく、さらに「宗学院」という浄土真宗の中で最も仏法を究めた方々のもとで3年間学ばれたそうです。

ご住職はその学びを「仏教を文字でなく、実感のあるものとして伝えたい」と願い、それをそばで見ていた奈々美さんも「自分や家族、訪れる人の人生に活かされるものであるという思いがご住職は強かったので、実家を継ぐより新しい道を選ぶ方がいいのかな」と思ったと、当時を振り返ります。

 

結婚から2年目。新しくお寺を開く場所を探す間、東京の築地本願寺へ引っ越すことになりました。本来は、ご住職が単身で築地本願寺に滞在する予定でしたが、「来ちゃいました」と引越し当日に家族であらわれ、あれよあれよと引越しのトラックが到着。前例がなかったにもかかわらず「もう来てるのだから仕方ないだろう」と受け入れてもらったそうです。

その時、長女が2歳次女0歳、それも生後2カ月の首もまだ据わらない頃と聞いて、私も生後半年の次男を抱えて引越しをした経験があったので当時の大変さを思い出しそれは大変だったでしょう?と聞くと「一生懸命だから大変という気もなかった」と奈々美さんは笑って話し「いろんな人が支えてくれ、人とのつながりがあってのこと」とご住職も言葉を添えました。

 

引越し前にも妊娠30週ほどの大きなお腹を抱えて、千葉や埼玉、神奈川といろんな路線に乗ってこれから開くお寺の場所を探したそうです。

ご住職は、田園都市線下り路線の市が尾駅をでたところ、青葉インター付近で視界がぱっと開けるところを見て「ここがいい」と決めたそうです。「お釈迦様が仏説阿弥陀経の中で説かれた『祇園精舎』という場所が『街の中では騒がし過ぎる、人里離れ過ぎると意味がない』と決められましたから、お釈迦様に倣ってこの場所に決めました」とその時の胸中を語ってくれました。

 

奈々美さんも「田園都市線だけおじいちゃんもおばあちゃんも高校生もみんな『どうぞどうぞ』と妊婦の私に席を譲ってくれたので、こういうところなら初めてのところでも子育てしやすいかも」と感じ、この地域を選ぶきっかけになったそうです。

 

それぞれの目線の違いが夫婦の魅力としてお寺の空気となっているように私は感じました。

 

こうしてお二人の意見も一致してこの地域で物件を探し始め、見つけたのが鴨志田町にある現在の「鴨志田惣菜店」のある場所でした。景色がよく、今のお寺のように風通しもよく、お庭があり、畳の大きな座敷の部屋があることも珍しく、あきらめずに交渉したそうです。

 

そして2003年1月、西法寺の前身となる「青葉布教所 西法寺」として、檀家さんゼロから始めました。

 

ご住職によると、お寺と檀家さんとのつながりは江戸時代、徳川幕府が定めた寺請制度(すべての人がいずれかのお寺の檀家となり身分証を受けとる制度)がもととなり、宗教的なつながりというよりは今で言う戸籍を管理する意味合いが大きいものでした。ですが、ご住職は江戸時代以前の、信仰として自然に人がお寺に集まってきていた、そういう時代にあった信仰の在り方を「そういうことに本当になるのだろうか?いやなるはずだ、そういう景色をみてみたい」と思い、新しくお寺を開くことを決めたそうです。

 

「仏教の教えというのは魅力的なもので、人に絶対必要なものだと思っている」と話すご住職さんの話にうなずきながら、奈々美さんは檀家さんがいないという当時の状況を「怖かったです、ほんとうに」と振り返りました。昔からの檀家さんがいるお寺がご実家だった奈々美さんは「保守派の代表みたいな私だったのに、そういう思想を注入されて伝染しちゃってその景色を私もみてみたいと思うようになった」と話します。

 

そして実際、自然と人が集まってきたそうです。ご住職が手作りした掲示板を家の前の花壇にたてたり、大学の教授に来てもらい子育て教室を開催してみたり、当時からあったスーパー三和鴨志田店の前のベンチでご住職が話しかけられたり、いろんなきっかけでお寺に人が集まるようになっていきました。

こちらは現西法寺の掲示板。言葉は奈々美さんが書かれています

それから2年半。ようやく今の鉄町の土地に出会い、2006年10月、浄土真宗本願寺派 西法寺が建立されました。

お寺を開くためにはさまざまな手続きが必要でした。2011年2月9日に宗教法人として認証され、調整区域であったため横浜市に土地の開発許可をとり、税務署にも税金の申告方法を相談し、前例のないことが多い中、手探りで多くの人の助けを借りながら新しいお寺を整えていきました。

今ある鉄町の西法寺の地は、もともと江戸時代から大正時代くらいまでお寺があったそうです。そこにまたお寺が建つと言うことで役所や税務署の方も好意的に、いろんなことを教え、協力してくれました。

 

そして実際にお寺という場所ができると、お寺に来る人たちにも自分の居場所としての意識が芽生えたり、徐々に新しくお寺に訪れる方が増えたりしたそうです。

窓の外には緑ゆたかな樹木と、遠くまで見渡せる開放的な鉄町の景色が広がっています

西法寺の本堂の造りは縦長で、両側の壁となるところが全部掃き出し窓となっています。

荘厳で、威厳があるようなお寺のイメージよりも、軽く明るく、安心して入ってきてもらいたいと願ってこのような造りにされたそうです。

 

「権威とか、訳のわからない縛りが私は好きじゃない。自由でいいと思うんですよ。それぞれがどう感じようか自由でいい」とご住職。「浄土真宗の教えに私が生きていたら特に言葉で説明をする必要はないと思っています。ただ一緒にいるだけで伝わっていく、もし伝わらないとしたら自分の精進や覚悟が足らない。自分の未熟さだと思う」

 

今の若い方は法話を聴いたこともない方も多いですし、必ずしもそういった仏教の教えにかかわらず、人が訪れる場所としてのお寺でありたい、と。いろんな人と出会う場所にしたいと、お二人は話します。西法寺はお寺の行事以外にも、ヨガやお茶のお稽古、絵手紙教室など、人が出会う場所として地域にお寺を開かれています。

本堂で映画を上映して、お茶でも飲みながら映画で人生や仏教を味わう講座「仏教でシネマ」をこれからやりたいそうです

「安心(あんじん)」と言うのを浄土真宗のお坊さんたちは学ぶそうです。

どんな人でも自分が自分であることを受け入れられるように、その人がそのままその人らしくいることで安心できるような場所がお寺であり、そうして自分が自分自身であることをお寺という場で受け入れられていると気づくと、自分が幸せであることに自然と気づいていく。それが足るを知るということにつながっていくと話されました。

 

 

今年の夏、お寺には樹木葬の場所ができました。墓地には「倶会一処」と刻まれた石碑があり、見上げると樹木が風にやさしく揺れています。

ヨガにくる方々が笑顔になって帰られる背景には、ご住職や奈々美さんのこうした思いがあるからだ、と私は気づき、お寺で出会う人とのご縁の中で、私の「安心」も育まれていくのかな、と迎え入れてくれる人たちの温かさにあらためて感謝しました。

倶会一処(くえいっしょ)とは「仏説阿弥陀経」に出てくる「俱(とも)に極楽浄土において先立った方々と会う」という意味の言葉です

Information

浄土真宗本願寺派 西法寺

郵便番号:〒225-0025

住所:横浜市青葉区鉄町1654

TEL:045-349-7977

公式HP: https://aobazansaihouji.net/

 

ヨガ教室(Yoga Homeそらといろ)

水曜11:00~12:00

月2回の不定期開催です。9/11.25

どなたでも楽しめるやさしいヨガです。

予約:https://reserva.be/soratoiro

公式HP:https://sorato-iro.com/

 

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この記事を書いた人
新楽 津矢子ライター
横浜市青葉区在住。地元鴨志田を中心に、フリーのヨガインストラクターとして活動中。生きる素は、ヨガ。笑顔の素は、おいしものを食べること、自然を感じること、親しい人と笑いあう時間。エコで丁寧な暮らしを田舎でしたいと思いつつ、身の丈にあうことが一番!と一歩ずつの生活を楽しんでいる。
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