
食に困っている人たちへの支援や親子支援、多世代が交流できる居場所づくりなど、志をもって活動をしているのに「広報」がなかなか上手くいかず、団体の価値が伝わらない、集客が難しい、寄付が集まらない……。森ノオトは、そんなジレンマを抱える神奈川県内のボランタリー団体を募り「パブリックリレーションズ・サポート・プログラム」を実施し、半年間に渡って広報の改善支援に取り組みました。
この事業は昨年度から引き続き2024年度も、かながわボランタリー活動推進基金21成長支援事業として、神奈川県から受託運営したものです。

成果報告会は、かながわ県民センター2Fホールにて開催。質疑応答を交えながら熱のこもった成果報告が10団体によって行われました
今回のプログラムには10団体が参加し、2024年8月から2025年2月にかけて約半年にわたり行われました。講座は2回の全体研修と、各団体の抱える課題に寄り添いながら森ノオトがオーダーメイドのサポートを行う3回の伴走支援、オンラインフォローアップ1回の、合計6回を実施。最終日となった2月28日はその集大成として各団体が半年を振り返る成果発表を行いました。
当日は神奈川県ボランタリー活動推進基金審査会会長の中島智人さん、かながわ県民活動サポートセンター所長の清水明さん、アドバイザーとして参画してくださった、横浜市、川崎市、平塚市で市民活動分野の中間支援をされている伊吾田善行さん、浅海須美子さん、坂田美保子さん、ソーシャルコーディネート神奈川の藤枝香織さん、一般聴講でお越しくださった皆様にもご同席いただき、各団体の取り組みの成果を共有することができました。
各団体の成果報告
成果報告会では、この半年間、10団体の皆さんがそれぞれ何に取り組み、どんな「成果」を生み、団体にどんな「変化」が訪れたのかを発表していただきました。ひとくちに「神奈川県内のボランタリー団体」と言っても、活動内容はもちろん、団体の事業規模や活動年数もさまざま。抱えている悩みもそれぞれで、森ノオトのオーダーメイドの伴走支援も十団体十色と言えるものでした。
ここでは3つの団体をピックアップして6カ月間の成果と変化をご紹介します。
◾️ NPO法人フードバンク浜っ子南(横浜市戸塚区)

コロナ禍設立のフードパントリー、フードバンク事業の寄付強化広報に取り組んだ「 NPO法人フードバンク浜っ子南」
NPO法人フードバンク浜っ子南は、横浜市戸塚区を中心とした市内南部で、主にひとり親世帯への食品支援や、市内のこども食堂や学習支援団体等への食べ物の配送、家庭や企業・団体などで消費しきれない食品を集める事業を行っています。関わるスタッフはボランティアで、食支援ニーズの高まりとともに活動量が増え、食品管理や倉庫の維持などの運営課題があります。広報によって日々の運営を支える寄付を募る必要がありました。
【課題】
寄付+ボランティアモデルとして成り立っている団体。活動の原資は寄付であり、寄付者への情報を適切に伝え反響をはかる仕組みをつくることで、寄付集めをしていくために団体に関わるメンバーが広報に取り組む充実感や納得感につながると考えた
【成果】
・関わる人のインタビューによってどんな人が寄付者になり得るのかの解像度を高め、寄付メニューを検討した
・団体の「強み」「価値」を言語化し、寄付プラットフォームSyncableページやポスター、チラシに反映した。企業・法人へのアプローチにも活用することができた
・クラウドファンディングを軸とした広報計画を立てた
【変化】
「団体の強みを言語化でき、納得感をもてた」
「内部への情報共有や、一人ひとりの役割分担が明確になった」
「自分の気持ちや活動の意義を言葉にして表現することの大切さを学んだ」
◼️ふらっとステーション・とつか(横浜市戸塚区)

戸塚区内でのコミュニティ拠点の移転・統合に伴う広報に取り組んだ「ふらっとステーション・とつか」
2025年春に、拠点の一つが移転統合することが決まっていた「ふらっとステーションとつか」。移転に向けての準備と並行しながら、閉じる拠点での活動を振り返り、新たな拠点で活動を合流していくための心構えをつくるためのヒントがここにあるはずだ、と、わざわざ忙しい時期に本事業のエントリーを決意。11年の歴史と思い出が詰まった冊子ができあがりました。
【課題】
NPO法人くみんネットワークとつかが運営する二つの居場所のうち「ふらっとステーションとつか」が閉まり「交流広場とつか」に合流することになり、ボランティアや参加者が戸惑うことなく活動を行うことができるように広報していきたい
【成果】
・「仲間に伝わる手作りチラシ」の講義を受け、チラシや通信に入れるべき情報を整理。実際に広報紙作りにチャレンジした
・役割分担を決め、スケジュールを立てて実行する、という広報紙作りのサイクルを見える化
・移転に伴う記念紙作成のほか、毎月発行の新しい通信が完成
【変化】
「誰のために何のために広報をやるのか、ということに立ちかえることができた」
「これまではWordが使える人=広報の人として一任していたが、役割分担をすることでさまざまな人が広報に関わってもらえるように変化した」
「日程を考えてスケジュールを組んで進めていく、ということができるようになった」
◾️ ままリズムぱぱリズム(横浜市青葉区)

ダンス等の表現教育で子育て支援・多世代交流団体を行う「ままリズムぱぱリズム」。ファンドレイジング体制を見直すなど、組織基盤強化広報に取り組んだ
「ままリズムぱぱリズム」は青葉区で2017年に子育て中のママが中心となってスタートした、子育て当事者による子育て支援の団体。ヨガやダンス、ミュージカルなど、表現教育を軸に活動が、赤ちゃんからシニアまで、多世代に広がってきました。活動は順調に広がっているけれど、運営は常に赤字状態。このままでは活動が持続可能ではない……という課題意識から、自信を持って広報するための組織基盤強化に取り組みました。
【課題】
時間とお金のマネジメント手法を身につけ持続可能な運営体制をつくる。元気で明るく華やか、広報に意欲的な団体だが、組織マネジメントの定義があいまい。事業量や広報量に対して事業収支が厳しく、このままでは組織としては持続可能な状態とは言えないので、それを打破するためのマネジメントを検討した
【成果】
・「お金」と「時間」のマネジメントについて講義を受け、過去のイベントの事業の収支と時間の使い方を表にして可視化
・2025年の年間事業計画・予算計画を立てた
・スタッフ&パフォーマーへのスキル&意識調査アンケートの実施で、収益源を把握した
・シアター事業のビジネスメニューを整理し、HPやチラシにまとめた
【変化】
「イベント参加者のためだけの広報ばかりを作ってきたが、学校や企業にむけてのtoBの広報を考えられるようになった」
「団体の専門性の言語化を行い、ターゲットや収益源が明確になった」
「各事業ごとの予算・時間・人への予算化をする管理運営スキルが身についた」
全10団体の取り組みは以下の通りです。
<参加団体一覧>
・フードバンク浜っ子南(コロナ禍設立のフードパントリー、フードバンク事業の寄付強化広報)
・ままリズムぱぱリズム(ダンス等の表現教育で子育て支援・多世代交流団体の組織基盤強化広報)
・ジャスミンファクトリー(性別・障害を超えたインクルーシブな農園·居場所の広報と法人化)
・ふらっとステーション・とつか(戸塚区内でのコミュニティ拠点の移転・統合に伴う広報)
・特定非営利活動法人よこはま里山研究所(横浜市南区「里山の入口」はまどま活用企画と地域広報)
・NPO法人みどりなくらし(食と環境でつながる川崎市の子育て支援団体・拠点の組織内広報)
・みんなのさいわい(NPO・地域団体・企業のプロボノ・ファンドレイジング支援団体の外部広報)
・みんなの放課後クラブ(横浜市中区本牧で子ども・多世代が斜めの関係を築く団体の広報体制づくり)
・NPO法人霧が丘ぶらっとほーむ(横浜市緑区の多世代交流・多文化共生のコミュニティカフェの広報)
・一般社団法人re net結(理事が世代交代した横浜市磯子区のコミュニティカフェの地域向け広報)

こちらは全10団体とアドバイザー、森ノオトスタッフとの記念写真!広報課題に目を背けずに向き合い、とことん考えぬいた半年間。それぞれに確かな変化の手応えを感じ、清々しい表情で発表にのぞんでいたのが印象的でした
今年度の支援の特徴として、広報のスキルアップだけでなく、団体の運営やマネジメント面で、収益や寄付をいかに集めていくかといったファンドレイジング支援に切り込んだ団体が複数ありました。これまでは一生懸命、自分が支援する相手(例えば、食料支援を必要としている方や、親子の居場所を求めている方)への広報に取り組んでいたけれど、ボランタリーでの支援が増えれば増えるほど、活動者は時間と体力、時に自己資金を投じていくことになります。身銭を削っての活動は息切れしていくため、その活動の価値に気づき支えてくれる新たな存在が必要になった時に、その相手にどう広報していくのか、というターゲットの変更に取り組んだ団体がありました。
ファンドレイジング支援になっても、あくまでも「広報」を切り口に、団体の価値をいかに「言語化」していくのかに取り組んだのが、このパブリックリレーションズ・サポート・プログラム自体の一つの成果と言えます。
「愛ある第三者としての森ノオトの役割」成果報告会講評から
最後に、この報告会にご出席いただいた皆様より講評をいただいたきました。
神奈川県ボランタリー活動推進基金審査会会長の中島智人さんからは「民間のボランティア団体が“いま必要としていること”を、民間の組織が見つけ提案をする。その自発的な営みを応援する、というのが県の責務だと思っている。民間が民間を支える、というのは、市民活動の根幹を支える上ですごくよい活動だと思う。豊かなボランタリー活動が豊かな社会を築く基礎になるのだと森ノオトがきちんと理解し、支援してくれたのがとても素晴らしかった」との評を頂戴しました。

中間支援団体のアドバイザーの皆様とは定期的なフィードバックを行い、プログラムの進捗を見守っていただいていました。ソーシャルコーディネート神奈川・藤枝香織さん(左上)、ひらつか市民活動センター・坂田美保子さん(中央)、かわさき市民活動センター・浅海須美子さん(中央右)、横浜市市民協働推進センター長の伊吾田善行さん(右下)
横浜市市民協働推進センター長の伊吾田善行さんからは「それぞれの団体のステップアップに大変驚かされた。上部だけの“広報”ではなく、組織の本質を見つめ直すきっかけになったのではないかと感じている。森ノオトはスパルタだったのではと思うが(笑)、組織課題を解決するためにはお尻を叩いてくれる愛ある第三者も必要。ほかの団体からもヒントをたくさんもらえたと思うので、この縁を大切にしてください」とのコメントをいただきました。
発表を終えたどの団体も充実感に満ちた晴れやかな顔で「これから」の話をしていたのが印象的でした。会場では、各団体の成果物のチラシやリーフレットを交換しながら、交流が深まっていく様子もあちこちで見られました。
小手先だけの「広報改善」ではなく、団体で活動する人がお互いに納得感を得て、実行力を伴う広報体制を確立できるようになること。その先に、市民活動が楽しいという空気が満ち、市民による活動がイキイキとなされている社会が叶うよう、これからも、森ノオトは、ローカルメディアで培ってきた情報発信のノウハウを生かし、広報の支援を行っていきたいと考えています。
森ノオトの「広報支援」のノウハウの詰まったレジュメを公開します!
森ノオトは、基金21の成長支援事業を受託し、2年に渡り合計20団体を「広報」の切り口からサポートしてきました。その前2年も含めると、伴走支援を行った団体は30団体にのぼります。今後はこの「パブリックリレーションズ・サポート・プログラム」を森ノオトだけが担うのではなく、神奈川県内の中間支援組織(市民活動支援センターなど)にも講座として活用いただけるよう、森ノオトの「広報支援」のノウハウを提供することになりました。
この講座内容を中間支援組織が使えるようになることで、より多くのボランタリー団体に広報支援を届けることができるようになると考えるからです。

展開用パブリックリレーションズ・サポート・プログラムのレジュメ
今後、森ノオトが培ってきた「社内広報(ビジョン・ミッションの共有と浸透)」と「社外広報(情報を届けたい相手を明確にする)」の二つのプログラムを簡略化して、希望する中間支援団体が自ら講座を開けるように、レジュメを公開します。 次年度以降、ぜひ、県内各地で市民活動支援を行う中間支援組織がこのレジュメを使って広報講座を実施していただけるとうれしく思います。
ご関心のある方は、以下の申し込みフォームにご記入ください。レジュメの閲覧リンクをお送りします。
https://docs.google.com/forms/d/17t_DBPXER70mESS5WX3dZKW5hcWtkSY96TUCzTlG_Fc/edit
これからも森ノオトは、NPO同士で「協働」しながら、県内のボランタリー団体が広報力を向上して、必要な支援を必要な人に届けられるよう努めてまいります。

・当事業の概要はこちら
https://morinooto.jp/2024/05/01/kikin21-2/
本プログラムおよび広報支援についてのお問い合わせ
認定NPO法人森ノオト
住所:横浜市青葉区鴨志田町818-3
TEL:045-532-6941
※リモートワークを推奨しているため、なるべくメールでご連絡ください

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