
横浜市営地下鉄・下永谷駅から環状2号線方面に歩いて20分、一軒家や中層マンションが集まる一角が平戸永谷川沿いのプロムナードの入り口です。
2025年2月のある日、私はこの平戸永谷川沿いの河津桜を楽しむ「さくらまつり」に参加しました。春の訪れを告げる桜の花が好きで、伊豆で河津桜を度々観賞していた私は、150本もの河津桜が咲く川が身近な横浜にあると聞き、足を運んだのでした。
朝9時、主会場となった「神明広場」にはすでに人だかりが。寒波の影響か、まだ桜の見頃は迎えていなかったものの、たくさんの地域の方々に見守られ、開会式が行われました。

住宅街の奥の方、何やら人だかりが……?

わ!すごい人の数!!神明広場の中心で開かれた開会式を囲うように、老若男女、地域の皆さんが集っていました
花や木工作品、キッチンカーなど、町内会や近隣団体の出店が川に沿って並び、おまつりを盛り上げます。さらにまつりの一角では、小学校の生徒さんによる自然・環境をテーマにした総合学習の発表も。
開花した桜の株元で写真を撮る子どもたちの笑い声や、広場のベンチに腰を下ろしてくつろぐ市民のみなさんが、会場に温かな空気をつくっていました。

40ほどの地域の団体が参加協力しています

開会式が終わり、地元町内会の玉輿太鼓クラブのみなさんによる演奏が行われました

桜と記念撮影!熱心にシャッターを切る子どもたちの姿が
平戸永谷川水辺愛護会が港南区役所の後援のもと主催する「さくらまつり」は、今年で13回目です。「例年1000人ほどが訪れます。開花のタイミングと合えば、会場はもっともっと人で埋まりますよ」とにこやかに話すのは、会長の土屋清敬さんです。

平戸永谷川水辺愛護会の2代目会長・土屋さん。町内会長もしています。土木関係のお仕事を勤め上げたあと、妻と一緒に日本各地を旅して回ったそう
水辺愛護会とは、横浜市内を流れる川や小川アメニティ、せせらぎ緑道など、生活に身近な水辺の環境を保つため活動するボランティア団体です。地域住民や自治体・町内会、NPO法人などに所属する有志によって結成され、川の清掃や除草のほか、川沿いの花壇づくりや生き物調査、水辺施設を利用したイベント開催など、水辺を活かす活動を自主的に行なっています。
現在横浜で活動する水辺愛護会は99団体。活動の規模や回数に応じて横浜市から補助金を受けることができます。
平戸永谷川水辺愛護会では、主に60代の方を中心に80名の会員が活動しています。月2回ほどの清掃・整備活動にくわえ、春と秋の年2回近隣の学校や住民のみなさんとクリーンアップに取り組んでいます。

水辺愛護会の活動の様子。年2回のクリーンアップでは、周辺のお宅にポスティングするなどして協力を呼びかけるそうです(写真提供:平戸永谷川水辺愛護会)

川沿いには花壇や鉢がそこかしこに。川沿いの整備活動では、植栽や、除草を行い、クリーンアップ時には800ポットものお花を植えるのだとか!以前は川の中の除草なども行ったそうですが、現在は安全の観点からプロムナードの整備を中心としているそうです
平戸永谷川水辺愛護会ができたのは2004年です。
「今から25年前に平戸永谷川の改修工事が終わり、16年前に水辺を地域の憩いの場にと河津桜を植えました。植えた苗が盗難に遭ったり、花が思うように咲かなかったり……これまで色々なことがありましたが、今は立派な桜並木となりました。
川辺は普段からたくさんの方の散歩コースとなっていて、早朝から人が行き交っています」と土屋さん。

港南区制50周年を記念して植樹したクロガネモチの樹(写真中央)。愛護会をつくった前会長・大平力蔵さんを「思いの強い方だった」と話す土屋さん。創設当初を知るメンバーの方は「自分が子どもの頃遊んだ平戸永谷川で孫と遊ぼうとしたら、とても入れる環境ではなかった。これはなんとかしなければと立ち上がった」と語ります
私が水辺愛護会のお話を聞いていると、土屋さんだけでなく、ほかのメンバーのみなさまが代わる代わるお話を聞かせてくださいました。
長年市民に花と緑の育て方を指導してきたという方は、川沿いの花壇づくりを担当されています。また別の方は、社会教育指導員として働いた経験を活かし、助成金を上手に活かしながら水辺愛護会の活動をサポートしてきたと話してくれました。撮影腕章をしたメンバーは「野鳥撮影が好き。さっきもあそこにカワセミがいたよ」と笑って、手にした一眼レフカメラで会場の撮影に忙しそうなご様子。口々に活動のこと、平戸永谷川のこと……にこやかなお顔から、私はみなさんの活動の時間を想像します。

公園愛護会のみなさま。当日はあちこちでメンバーの方が活躍されていたため、集まることができた方に参加いただきました。水色の帽子がトレードマーク!
「それぞれができること、できる範囲で助け合いながら活動を続けてきました。地域はそんな“ざっくばらん”なつながりが大切だと思うんですね」と土屋さんは、会場に訪れる方に絶えず声をかけていました。

「ここに来れば顔を見られると思って」そんな言葉の掛け合いが印象に残りました
「さくらまつりのような場をひらけば、地域の人が顔を合わせて様子を聞き合う時間にもなります」と、土屋さんは水辺愛護会の活動を振り返ります。
「ここに住んで80年。まちなみは大きく変わりました。活動を続けるなかで大変なこともありましたが、このまちが好きだから苦にはなりません」土屋さんは穏やかに話してくれました。
(取材を終えて)
平戸永谷川へ向かう道、肌寒い空気を感じながら「桜は咲いていないかもしれない」と心配していた私。確かに河津桜はまだ満開ではありませんでしたが、だからこそ集ったたくさんの人々への驚きは増し、「さくらまつり」が地域に根付いている様子を感じ取ることができました。
住宅の間を静かに流れる川沿いには、一人ひとりの営みを持ち寄り、水辺を地域の憩いの場へと育てていったあゆみがありました。環境づくりから始まった活動は、水辺を基点に地域と人をつなぐ活動へと広がっています。

平戸永谷川水辺愛護会
*平戸永谷川さくらまつりは、例年2月下旬に開催されています。
*2025年度春のクリーンアップ活動を5/31(土)(雨天6/7)に予定しています。
8:45~開始式(神明広場にて)
会場:平戸永谷川「柳橋」~「永谷3号橋」
主会場:神明広場(下永谷神明社下、バス停「中永谷」下車)

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