森ノオト編集部「毎日がロケハン♪」チームがゆく!大学学食めぐり 東京科学大学すずかけ台キャンパス編 
2024年に東京工業大学と東京医科歯科大学が統合し、あらたに東京科学大学が誕生しました。日本最高峰の理系大学の学食は、一体どんなところなのか気になりませんか?キャンパス内レストラン「Kitchen MOTOTECH」(キッチンモトテック)は、学生はもちろん地域住民にも愛される魅力が満載です。

東京科学大学すずかけ台キャンパスは、東急田園都市線・すずかけ台駅から歩いて5分ほどのところにあります。主に理工学系の大学院生が所属する、緑に囲まれた静かな環境で、学部生中心の賑やかなキャンパスと比べて、落ち着いた雰囲気が漂っています。

 

学内でひときわ目を引くのは、工業的デザインを感じさせる直線的なフォルムの建物群と、多国籍の学生や教員が集う国際色豊かな光景です。さまざまな言語が飛び交い、世界中から優秀な人材が学びに来る研究機関であることを感じさせてくれます。

学食棟はキャンパスの中心にあり、芝生に囲まれた気持ちの良いロケーション。おしゃれな円形の3階建ての建物の2階がKitchen MOTOTECH。1階には庶民的な生協食堂もある

Kitchen MOTOTECHは、学生の日常の一部でありながら、いわゆる「学食」とは一線を画した、料理も雰囲気も格別なレストランです。なんとシェフはフレンチ出身の本格派!学生が毎日利用するには若干贅沢な価格かもしれませんが、一流のお味やボリュームからすると破格です。一般の方にも開放されていて、近くに住む私も地元の仲間たちからの高評価をかねがね耳にします。

本日のメニューはこちら。メニューは主に3種の日替わりで、最上段が「シェフのおすすめ」だそう。セットのドリンク・スープ・デザートは、それぞれ+100円(アイスドリンクは150円)という驚きの価格(取材当時)

 

壁は全面が窓になっていて開放的。四季折々の風景がパノラマに広がる。心地よいソファ席や、一人席も充実

注文はレジカウンターでの前払い方式で、キャッシュレス決済も対応しています。お会計後にオーダー票をキッチンスタッフに手渡したら、番号が呼ばれるまで席で待つスタイルです。お昼時は学生と教職員で非常に混み合いますので、時間に余裕を持って来店することをおすすめします。

 

実は、私自身がこのキャンパスで職員として働いて一年になり、MOTOTECHを日常的に利用しているファンの一人です。この日は仕事を通じて仲良くなった留学生と一緒にランチを食べながら、色々話を聞かせてもらいました。

 

トルコ出身の博士学生Emine(エミネ)さんと、修士学生Ece(エジェ)さん、モンゴル出身の修士学生Dagiimaa(ダギーマー)さんは、来日した時に同じ寮で出会った仲良し3人組です。ちょうど取材時はラマダン期間中だったのですが、ムスリムのエミネさんも「No problem!」と駆けつけてくれたのでした。

左から、エミネさん、ダギーマーさん、エジェさん。日没まで断食中のエミネさんに「ごめんねー」と言いながら、一同ハンバーグを満喫。ふっくらジューシーな仕上がりに感激!

MOTOTECHがお気に入りだという彼女たちに他にもおすすめメニューを尋ねると、学生たちの間で毎週金曜日の定番メニューとして心待ちにされている牛サーロインステーキが話題に。ステーキの日は大人気で、特に混み合います。

 

また、エミネさんは、「ここのカレーはどれも本格的で、本当においしい」と話してくれました。ムスリムの学生にも配慮があり、「毎日のメニューのうち、一つが必ずハラルフードになっているんです」とのこと。メニュー表に明記はありませんが、チキン料理がハラルフードに該当するのだそうです。

 

これは、ムスリムの学生たちの間で先輩から後輩に伝えられてきた口コミ情報で、「最初はここにハラルフードがあるなんて思ってもみませんでした」というエミネさんは、教えてもらってからは安心してMOTOTECHを利用するようになり、このような配慮がとてもうれしい、と話します。

 

「食事に利用するだけではなく、ここにはドリンクでリラックスしに来るのも好き」とエジェさんが言うと、「ケーキも本当においしい」「特にバスクチーズケーキが大好き」とエミネさんとダギーマーさんも声をそろえました。実はダギーマーさんはここでアルバイトもしていて、「ケーキはすべてシェフの手作りなんですよ!」と誇らしげに教えてくれました。

このあと追加したランチデザートのチョコチップシフォンケーキのインパクトといったらない。ランチに+100円でこのボリューム。これがまたケーキだけでお店を出してもいいくらいおいしいのだ

学生たちとおいしいごはんを囲みながら、こうして何気ない会話を交わす時間は、私にとって、この職場での何よりの楽しみです。日々の食事をきっかけに国を超えて人と人のつながりが生まれる心地よさが、この場所には流れています。

 

博士学生のNou(ヌゥ)さんとも、卒業まで何度もここで一緒に食事やコーヒーをともにしたことを、思い出します。ほぼ毎日MOTOTECHを利用していた彼がいつも迷わず選んでいたのは、その日のメニューの一番上に書かれた「シェフのおすすめ」。現在は母国・カンボジアで働いていますが、お互いの国の文化や季節の行事、研究や日常について語り合った時間は、今でも心に残る大切な思い出です。

「毎日ここに来る理由?正直に言えば、すずかけ台って他に店の選択肢がないから」と笑っていたヌゥさん。「でも飽きないですよ。何しろメニューは毎日変わるし、ライスやサイドメニューも付いていて、バランスもいいですから」

そんなMOTOTECHの温かい雰囲気を支えているのが、日々この場所で働いているスタッフの皆さんです。お店の顔として親しまれている社員の岩井真美さんに、大学内で働くことの魅力ややりがいについて伺うと、「同じ曜日に同じお客様がいらっしゃることが多いので、お名前を覚えてお声がけしたり、会話を交わしたりするのが楽しいんです。それに、『学生さんにおなかいっぱい食べさせたい』というシェフの思いをはじめ、ここで働くスタッフはみんな温かくて、仕事を前向きに楽しんでいる人ばかり。忙しい学生さんにとって、ここがホッとしたり、元気になれる場になるように、プラスの影響を届けられれば」と、キュートな笑顔で語ってくださいました。

西浦陽子さん(左)と岩井さん(右)は、混み合う時間帯もてきぱきと待ち列をさばいていくベテランの看板スタッフ。スタッフ同士とても仲が良いそうで、アルバイトのダギーマーさんが顔を見せると「ダギちゃんだ~!」と歓声で迎える様子からも、温かな関係が伝わってくる

 

日替わりメニューから彩り豊かな4品をご紹介。 左上:日替わりで最上段に表示される「シェフのおすすめ」、この日は豚フィレ肉とアスパラ丸ごと天ぷら。満足度の高いボリューム 右上:スタッフ岩井さん推しは、フレンチ出身のシェフならではの煮込み料理で、メニューの2段目に登場。この日は和牛すじ肉のトマト煮込み・ハッシュドポテト添え  左下:チキンのカレーはハラル対応。専門店顔負けの本格派で、ムスリム以外の学生たちにも大人気  右下:学生人気No.1のステーキ1000円(取材当時)は、毎週金曜日のお楽しみ

料理を手がける酒井浩二シェフは、かつて一流ホテルで多国籍のお客さんを相手にビュッフェを提供していた経験の持ち主。ハラル対応も特別なことではなく、「みんなが食べられるものを出すのは当たり前のことだから」と、飾らずさらりと話します。

 

ケーキや季節のフルーツを使ったタルト、焼き菓子までそろったスイーツに関しても、「あれば学生さんが楽しいだろうから。メニューのにぎやかしとして、趣味で作っているだけ」とあっさり話を切り上げます。しかしそのバリエーションの多彩さと、一つひとつに手間を惜しまない本格的な仕上がりは、にぎやかしの域を超えています。

学生にとって無理なく手が届くこと、毎日の食事に困らないことを何より大切にしているという酒井シェフ(左)。その熱い思いは、岩井さんたちスタッフにも通じている

 

学生に大人気の金曜日のステーキも、「一週間頑張ったごほうびとして楽しみの一つになれば」との思いから。シェフの飾らない物言いの向こうに、さりげない気遣いと優しさを感じる。多くは語らずとも、思いは料理にこめられている

〈取材を終えて〉

国籍も分野も背景も異なる人たちが、研究や仕事の合間にふと立ち寄り、ひととき交差するこの学内レストラン。地域と大学との接点でもあり、自分が暮らす沿線の一角に、こんなふうに人と人が出会い、交わる豊かな世界が広がっていることを、取材を通して改めて実感しました。食を囲んでつながるというささやかな時間の尊さや、それをそっと支えている人たちの優しさが、胸に残りました。

 

※編集部注

2025年度からチーム制が変わりましたが、こちらの記事は、2024年度「毎日がロケハン♪」チーム時代に企画・取材を進めていたため、タイトルを踏襲しました。今後は「森ノオト編集部が行く!」として、大学の学食をめぐるシリーズは続きます。

Information

住所:
神奈川県横浜市緑区長津田町4259 東京科学大学 すずかけ台キャンパス 大学会館2階

電話:045-744-9663(予約可

URL: Kitchen MOTOTECH

営業時間:10:30-16:00

ランチ:11:30-15:00

休業日:土日祝日

Instagram: https://www.instagram.com/kitchen_mototech/

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この記事を書いた人
日影愛ライター
湘南生まれ、南町田在住。企画上手な教師の両親と3人の兄弟のもとに育ち、中学・高校は鹿児島で寮生活。にぎやかな生い立ちからか、好奇心旺盛なイベント好き人間に。人との距離間はつい近めを好みがち。町や人の魅力を発見し、伝えたいです。
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