
東急田園都市線・あざみ野駅から線路沿いをたまプラーザ駅方面に歩いて6分ほど、閑静な住宅街の一角に、放課後等デイサービス・児童発達支援施設の「てらこや」があります。代表の淡田由貴さんは、たまプラーザ在住の二人のお子さんを持つ母親。二人目のお子さんがダウン症だったことから、障がいをもつ子どもたちが放課後を過ごす施設を自分でつくりたいと、2021年12月にてらこやを立ち上げ、現在では三つの事業を運営しています。
てらこやは、未就学児が対象の「児童発達支援」と、小学生から高校生までが対象の「放課後等デイサービス」を手がけており、いずれも「障害児通所受給者証」の交付を受けた子どもたち……つまり発達に不安があったり、障害があるなど、「集団生活をする上での困りごとがある子どもたち」への支援を行うための場所。モットーは、「一人ひとりのやりたいことを叶えつつ自立を促す」ということ。「18歳の卒業までに、好きなことを見つける」ということを目標にしています。

代表の淡田由貴さん。てらこやは「teracce-co-ya」と表記します。テラスとは家の飛び出た部分のことで発達の突出した長所・得意な所を表しています。そんな子ども達の長所を「照らしたい」という意味を込めて名付けたそう
てらこやの一日
朝は9時30から18時まで、1日10数名のスタッフで療育のサービスを提供しています。
1階の放課後等デイサービス「のびのび」では1日10人程度の子どもが通って集団活動を行っています。常駐している作業療法士が中心となり通所する子どもたちが楽しめるプログラムを提供しています。
2階の「わくわく」では1時間の個別支援を行い、より丁寧に一人ひとりと関わりたいとの思いから、「のびのび」開設一年半後にオープン。子ども本人が計画した活動に取り組んだ後、保護者の前で振り返りを行い、“承認する=褒めること”で自己肯定感を高めるプログラムを実施しています。
さらに、開所から3年半を迎えた2025年5月、通っている子どもたちの成長に合わせて中高生メインの放課後等デイサービス「てらこやプラス」を立ち上げました。ご飯を炊く、帰りに掃除機をかけるなど、自立した生活の基本となる衣食住に必要なスキルを楽しみながら身につけていきます。

取材中、活動室では好きな活動にそれぞれが集中する小中学生たちの姿がありました
家ではできないことを体験できる場所
てらこやの大きな特徴の一つが、季節折々の畑活動やアートなど、家ではなかなかできないことを日常的に行っていることです。その理由は、「やったことがないことを障がいの有無にかかわらず経験させたいから」。その背景を、じっくりと由貴さんにうかがいました。
由貴さんのお話によれば、現行の制度では、子ども向けと大人向けでサービスが異なるため、利用者はてらこやを卒業した後、新たな大人向けのサービスを一から探さねばならないのが現状だそう。
「放課後等デイサービスの18歳での卒業後、働いたり就労支援の場に通うことなく、日々を過ごすだけの暮らしになる人も少なくありません。そういう暮らしの中で、余暇を充実させることが人生を豊かにするのではないでしょうか?
自分の好きなことがわかれば、それを趣味にしたり、自分で楽しい時間を持つことができます。でも、何が好きかわからないまま大人になってしまうと、空いている時間は何をしてよいかわからず、時間を持て余してしまう。そういう人もたくさんいるのです。
ここは、18歳までの施設です。発達に特性がある子の中には、“やりたいことを見つけることが難しい”という子が多いんです。だからこそ、ここに通う間に、やりたいことを一緒に見つけることを目標にしたい。たくさんの経験の中での“楽しい・できた”の積み重ねを経て、その子の好きなことを見つけるお手伝いができたらと思っています。
(福祉の分野ではよく「訓練」という言葉が使用されますが)子どもに“訓練”は必要ないんです。楽しいところからしか、才能は伸びないんですよ」と、由貴さん。
この言葉に、ご自身のお子さんが障がいを持っている当事者である由貴さんだからこそのてらこやのコンセプトであり、保護者の気持ちにも寄り添った取り組みなのだと感じました。そして実際に生き生きと活動に参加している子どもたちを見て由貴さんの言葉が腑に落ちました。

てらこや館内には、あちこちに素敵なアート作品が展示されています

経験を大切に!無理にやらせることはしませんが、何に関心を持つのかを探って、興味を持った好きなことを生活に取り入れられる方法をスタッフみんなで考えていきます

てらこやは閑静な住宅地の一角にある元グループホームを借り受け、リフォームして使っています。てらこや全体で1日で支援できる人数は30人。この建物の規模がちょうどいいそう
失敗体験も大事
生きていく上では、失敗の経験も必要。てらこやでは大人がわざと失敗して「まいっか。次頑張ろう」という姿を見せることで、大人でも失敗はあること、恥ずかしいことではないと伝えます。
一方で、過度な失敗はさせないよう注意を払います。そうしないと子どもたちは次に挑戦することをやめてしまうから。てらこやが大切にする支援の一つが、失敗も肯定できるような心の成長を促すことなのです。

入り口の荷物置き場、自分の持ち物もきちんと管理できるように工夫がされています。「できた」という小さな成功体験が、自己肯定感を上げていきます
保護者と“きょうだい児”支援
てらこやでは、定期的に保護者会を開催し、活動報告会のほか、障がい児を持つ親どうしのリアルな悩み相談や、親なき後のお金についての勉強会なども行っているそうです。
さらに由貴さんは“きょうだい児”支援にも力を入れています。“きょうだい児”とは、障がいもしくは難病のある子の兄弟・姉妹を指す言葉。由貴さん自身の一人目のお子さんもきょうだい児。きょうだい児たちは、嫉妬、不安、孤独感、責任感など複雑な感情を抱えているといわれており、由貴さん自身、暮らしの多くの場面で第一子が我慢をしていることを目の当たりにしてきました。
「だからこそ、この子たちもサポートをしていきたい。同じ立場のきょうだい児どうしが集まり、共感しながら話し合える場で、親に言えないことを互いに吐き出してもらいたい。この時は自分たちが主役となり、素直な気持ちを言葉にして、気持ちを分かち合う。きょうだい児がより豊かな人生を送るためのサポートとしてこういう場はとても必要なんです」と話します。

きょうだい児支援の「きょうだい食堂」。小学生から大学生、20代・30代・40代までの幅広い年齢の「きょうだい」が集まるこの場は、“2025年東急子ども応援プログラム”の助成金を受け実施されています
その先の未来へ
由貴さんは、ここに通う子どもたちが大人になってもこの地域で安心して生活できるようにと、就労支援までこの地域で一貫して行えるようにしたいと考えるようになりました。
子育てのゴールは自立だと思う親は多いのではないでしょうか。初めは自分の子どものために始めたという由貴さんですが、今ではここに通うすべての子どもたちが“わが子”と思うようになり「私は60歳の還暦を迎えた時に“あざみ野のビックマザー”になるの!」と屈託のない笑顔でおっしゃいます。
(取材を終えて)
由貴さんのてらこやを知ったとき、私が数年前に障がい者の方たちの自己表現発表を目的とした「スペシャルビューティジャパン」のファッションショーのボランティアをした時のことを思い出しました。その時の主催のジェイソン・ハンコックさんがハワイでは障がいを持った子を「スペシャルニーズ」と表現すると話しているのを聞いたのです。スペシャルニーズは「障がいも個性の一つ」という意味で使われているそう。運動が得意とか、絵を描くのが好きなどがあるように誰にだって、得意不得意や好き嫌いがある。障がいも個性として受け入れていけば優しい世界が広がる、と思うのです。私は由貴さんの目指す一貫した支援の必要を感じ、これからの社会がそうなることを願います。

スタッフみんなで寄り添って支援しています
放課後等デイサービス・児童発達支援 てらこや
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