大好評で年末の恒例行事になりつつある「森ノオセチ」、2014年もまた大晦日に森ノオトメンバーの住む団地の集会室をお借りして、各家庭で作った手づくりおせちを持ち寄りシェアして来ました。
ひと家族でつくると種類も多く手間がかかるお節料理も、一人につき2〜4品を多めに作って持ち寄れば、とても合理的で手づくりのならではのやさしいお節料理が完成します。今回は9家族が参加してつくりました。そして前回と同様、何をつくるかは早い者勝ち!
この企画は、森ノオトのマネージャー・中島美穂さんが発案しました。2013年に森ノオトで開催していた「あおばECOアカデミー」で、地域のつながりをつくるためのアイデアに「それ、いいね!」と盛り上がり、お料理番長こと大西香織さんがとりまとめをして実現に至りました。
この日もはじめに大西さんから、お重の詰め方と壱の重、弐の重などの意味、キレイに詰めるためのポイントなどをレクチャーしてもらいました。
それでは、いざ! 持参した空のお重をもって、各自ビュッフェスタイルで詰めていきます。これがまたなんとも楽しい作業!
<編集長 北原まどか氏 担当>
スベリヒユという野草を夏に摘み塩蔵したものを、一晩かけて戻し塩抜きして、山形独特の打豆や人参、ちくわ、油揚げと一緒に煮含めるそう。
香りをよくするために胡麻油で炒めた甲斐あって、食欲をそそります。「ひょっとしていいことがあるように」という意味があるそうです。
夏のうちに日干ししてビタミンEを蓄えたスベリヒユの栄養を冬に摂る知恵でもあります。冬の寒さが厳しい地域には珍しい保存食がありますね。
蓮根は穴が空いていて、先の見通しがよいことから、おせち料理に頻繁に使われる食材です。飾り切りにしたものは、花蓮根とも言うそうです。
さっと湯通しして歯ごたえを残した蓮根を、熱があるうちに砂糖を溶かした酢に漬け込むという、とてもシンプルなもの。シャキシャキと甘酸っぱくて、箸休めにもなります。今回はてんさい糖を使ったら少し茶色っぱくなってしまったところ、だったら色をつけようと梅酢を足したら、逆に茶色い酢ばすになってしまったんだとか(笑)! 言われなければ気づきませんでしたが、それもまた森ノオトらしいエピソード。お味はとても美味しかったです。
こちらはさすがに手作りするのはむずかしいため、2013年と同様、生活クラブのもの。生活クラブのは、ぐちかまぼこで、紅も天然の着色なのでとても優しい色合いです。
<松山ちかこさん 担当>
北部市場で購入したという生の筋子から作った塩いくらは彩りにもよく、森ノオセチをよりいっそう豪華に引き立ててくれました。買うと少量でもとても高いイメージですが、手作りだと案外リーズナブル。そして余計な添加物が入っていないのも安心です。
いくらに続き、お節料理に彩りを添える一品。「海老のように、腰が曲がるまで長生きする」という祈りが込められているそうです。素材はいくら同様、北部市場だそう。素材の味を損ねないよう、余熱で仕上げたというところが節約家の彼女らしい!
「よろこぶ」と語呂合わせで、縁起がいいと言われる一品。一般的ににしんや鮭を入れて巻くところを、ごぼうと油揚げを巻いてありました。このベジレシピ、実は2013年に参加してくれたマクロビオティックの実践者でもある富山美希さんのレシピでつくったのだとか。ベジ料理とは思えないほどの食べ応えでした!
<清水朋子さん 担当>
鹿児島県にある丸山果樹園さんの、太陽の恵みをたっぷり浴びた大きな「まるちゃんきんかん」を使った丸煮は、とてもジューシーな味わいで癖になるほど美味! キビ砂糖と隠し味のお酢ですっきりとさわやかな甘さに仕上がっていました。金の冠と書いてキンカンというだけあって、豊かさの祈願が込められています。
「マメ(まじめ)に働き、マメ(健康)に暮らせるよう」など、長寿と健康の願いが込められている黒豆。素材はたまプラーザの自然食品店「礎波-SOWA-」で購入した北海道産の黒大豆だそう。有名な“丹波の黒豆”に比べると、粒は小さめですが、北海道の大地の恵みをたっぷり受けた黒豆はぷっくりと艶よく仕上がっていて、甘さも控えめでとても美味しかったです!
<中島美穂さん 担当>
特に言葉にかけているわけではないようですが、色や形が華やか(=伊達)で、おせちなどハレのお料理にふさわしいということで用いられているようです。卵とはんぺんは生活クラブのものを使用。生活クラブの卵らしく、やさしいレモン色でしっとりとケーキのような味わいに! そして実際、お腹をすかせて泣いていた森ノオトメンバーのおチビちゃんに、「ほらほら、ケーキあるよ?」と、しれっと泣き止ませていた美穂さんの姿が印象的でした。
卵の数が多いことから、子宝や子孫繁栄の願いを込めているそうです。数の子は北部市場で魚の卸業を営んでいる友人のお店で購入したとのこと。一つひとつ丁寧に薄皮を剥がす作業はとっても大変だったそうですが、案外キライじゃなかったとか……?!(笑)
<齋藤由美子さん 担当>
黄金色に輝く財宝にたとえて、豊かさと勝負運を願いが込められている栗きんとん。初参加の由美子さんは、前夜に9人分と9家族分の間違えに気づき、当日の朝から材料追加調達に走りばたばた制作したのだとか! 当日分は裏ごしがままならず、裏ごしのありなしと、あえなく2種類の栗きんとんになったそうです。しかし、そんなことを想像させないくらい、どちらもとても美味しい栗きんとんでした。むしろ私的には裏ごしなしの方が好みだったくらい……(笑)。
なじみの無い方がほとんどではないでしょうか? それもそのはず、島根出身の由美子さんの2品目の赤貝煮は、出雲地方の祝い料理なのだそうです。
昔は島根の中海で赤貝がよく獲れていたそうですが、今は獲れないので赤貝よりひとまわり小さい“サルボウ”を使っているそうです。私はすっかりこの赤貝煮の虜になってしまい、お酒がすいすい進んでしまいました……!
<持田三貴子さん 担当>
ご実家のお母さんが長年愛用しているお節料理の本を参考に、毎年つくっていたという一品。椎茸は昔から神様へのお供えものとして珍重されていることもあって、壮健などの願いが込められているそうです。生活クラブの干し椎茸で味付けをし、砂糖の代わりにミネラル豊富でやさしい甘みの羅漢果を使用しています。肉っけの少ないお節料理ですが、ハンバーグ感覚で子どもにも人気でしたね!
百合根は球根の鱗片が多く重なりあい、その鱗茎の数々が相合うことが和合に通じるとされているとか。
生活クラブの百合根と羅漢果を使用。ほくほくとお芋のような食感で、これまた子どもたちからも評判の一品!
<高山えりか(ピリカ)担当>
昔、田植えの肥料に乾燥したイワシを使い豊作だったことから、豊作祈願としての意味があるそうです。甘みには植物性のアガベシロップを使いました。さくっとなるまでしっかりフライパンで炒ってあるので、ちょっとお菓子感覚で子どもにも人気です。クルミを入れるか迷いましたが、今回は生活クラブの煎りゴマで。
芽が出ると「めでたい」を掛けて、出世祈願の意味があると言われています。クチナシで黄色に色付けて作るのですが、この黄色にはお金や豊かさを祈願しているのだとか。ちなみにくわい煮は昨年にひき続き担当させてもらったこともあり、皮を剥くのがとてもスピーディーになりました。最後の方は(自称)プロ顔負け! ってほどにまで!
<三ツ橋樹里子さん 担当>
山形出身の樹里子さん。毎年お母さんがつくった立派な棒鱈が実家からたくさん届くそうで、2013年も森ノオセチの一品に提供してもらいました。干して乾燥させた棒鱈を一度茹でこぼしたあと、弱火で6?7時間煮込み、やわらかくなった骨まで全部食べるのだとか。まどかさんのひょう干しと同じく、乾燥してある食材を使っています。本当に山形ではこういう料理が多いんですね! たらふく(鱈腹)食べられるように、という意味があるそうです。
こづけ、と呼ぶ地域もあるそうです。数の子同様、子孫繁栄の願いが込められています。一般的はたらこといえばスケトウダラですが、山形では冬に獲れる真鱈を使うのがポピュラーなんだとか! 地元では冬になるとたらこ炒りや白子や肝たっぷりのどんがら汁で、真鱈を余すところなくいただくそうです。うん、考えただけでも美味しそう。どんがら汁も、一度食べてみたいですね!
<大西香織さん 担当>
香織さんのなますは、落花生とごまをすり鉢であたり、米酢、砂糖、塩と合わせた和えごろもで、なんとも癖になるオリジナリティあふれる一品でした! 上には甘く煮た椎茸、酢ばす、ゆずの千切りをトッピングしていただきました。小さい頃からよく落花生の殻や皮むきをして、すり鉢でごりごりとあたるお手伝いしていた思い出があるそうです。なますに向いている白大根を使っています。人参と大根の色を紅白の色に見立て、おめでたいことの象徴でもある紅白のなますはお節料理には欠かせない一品です。
鶏のひき肉にパン粉、卵、白味噌を混ぜてオーブンで焼いた松風焼き。上にはけしの実をまぶし、縁起よく扇型に見たててカットしてあります。鶏肉の一部を調味料で炊き、他の鶏肉と一緒にすり鉢ですったという一品。さすが料理番長の香織さんらしく、とても手間がかかっています!
さあさあ、すべてを詰めたらついに完成!!
なんとも豪華絢爛!! 人それぞれ詰め方や器の違いもあって、メンバーの個性が出ていてとても面白かったです。
こうして、今回も無事オリジナリティあふれる森ノオセチが完成しました!
そしてなんと、ひと家族あたりの経費はたったの4,600円でした! 安いっ! お財布にもやさしい森ノオセチ。
大晦日に近所の仲間と集まって、子どもたちも混ざりながら、わいわい楽しくにぎやかに過ごすのも本当にいいものです。
数年前まで一人で頭を悩ませながら必死でつくっていたことが嘘のよう。
お節料理に限らず、ひと昔前までは、ご近所同士でのお醤油やお味噌の貸し借りや、多く作りすぎたおかずをお隣さんに分け合うなんていうことは、ごく普通の光景でした。そういった文化も最近ではどんどん薄れつつあり、ちょっとさみしいですよね。
この森ノオセチでは、昔の母たちがやっていたご近所付づきあいの光景を思い出させてくれます。私も子どもの頃はよく兄弟同士で「奥さんごっこ」と題し、「あら奥さん、お醤油かしてちょうだい?」な?んて、ベランダ越しに布団を干しながらお隣さんと会話をする母のまねをしていたっけ。
時代が変わった今も、そんな懐かしい光景を、時々こうして娘に残せたらいいなぁ……。そんなことに想い馳せながら、2014年最後の一日を森ノオトのメンバーと過ごしました。
みなさんもぜひ近所の友達や仲間と持ち寄っておせちのシェアをしてみてはいかがでしょうか?
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