地元ブランド「横浜キャベツ」を支える女性たち。 〜神奈川区 加工倶楽部かながわ
「地元”横浜キャベツ”の美味しさを知ってほしい」。横浜市神奈川区のキャベツ生産農家の女性6人が集まり、キャベツを美味しく食べるためのドレッシング作りからスタートした「加工倶楽部かながわ」。5年目となった今年は、神奈川なでしこブランド2017にも認定され、ますます活躍の幅を広げています。

横浜市神奈川区の菅田町・羽沢町は、農業が盛んで多くの野菜が栽培されています。中でも、キャベツ農家が多く、キャベツ産地として全国的に有名な三浦キャベツ、群馬県の嬬恋キャベツの出荷時期の合間を縫って春と秋に出回る「横浜キャベツ」として知られています。
 
しかし、ここ10年、温暖化の影響などもあり、有名産地の出荷時期が変化したり、海外からの輸入キャベツが増えたことなどにより価格が低迷する状況が続きました。いまは、キャベツ専業ではやっていけず、他の野菜との兼業をする農家が増えてきています。
 
5年前、菅田地区で代々続くキャベツ農家として育った鈴木キヌ江さん(写真右)が、「もっと地元横浜のキャベツを知ってもらい、食べてもらえる機会を増えせないものか」と考えていたところ、近くに「メルカートかながわ」(JA直売所)の支店が開店することになり、店頭に加工品が少ないことから、何か加工品を作ろうと思い立ちました。
そして、地元JAの協力のもと、近隣で一緒に加工品づくりをする仲間を募集したところ、現在メンバーの6人が手をあげ、2012年7月に「加工倶楽部かながわ」としてスタートしました。加工場は、鈴木さんが所有するアパートの一室です。
年齢がバラバラな6人の共通点は、皆さんキャベツ農家のお嫁さんということ。そこで、キャベツの消費拡大を目指して、キャベツに合うドレッシングを作ることになりました。

県の農業技術センターから指導員に来てもらい、製法技術や衛生管理を学んだ(写真提供:加工倶楽部かながわ)


メンバーは皆、農家のお嫁さんであり主婦なので、手早く美味しいものを調理することはお手ののもの。しかし、製品として販売するためには、万人受けし、毎回同じ安定した味を作っていかなくてはいけません。そして、衛生面にも気をつけ、賞味期限がどのくらいになるか、正確なデータが必要です。

それぞれの材料の分量をどれくらいにするか、試作を重ねた(写真提供:加工倶楽部かながわ)


日々の農作業に追われる中、週1日火曜日の午後を作業日と決め、みんなで集まっては、試作・研究が続きました。そして、やっと生まれたのが、「キャベツに合うドレッシング(たまねぎ、ごま)と「浜なしたっぷりの焼肉のたれ」です。

いかにキャベツを美味しく食べるかにこだわった一品。メルカートかながわなどで販売している


できるだけ自家製の材料を用い、添加物を一切使わない、安心安全で自信を持って販売できるものが出来上がりました。そして、その年の11月の地域の農業祭で発表したところ、大きな反響を呼びました。
 
それまでの農作業は男の人が主体となり、女性は後ろについてやるものでしたが、女性だけで作り上げ、お金を生むまでになったという経験は自信につながった、と、メンバーの一人金子まゆみさん(左から2番目)は言います。
そして、農家の嫁という同じ環境であることが、年齢が違えども、あうんの呼吸で分かり合え、加工場に来て顔を合わせることで、日々のストレスの解消にもなる、というのは、平本タキ子さん(写真右から2番目)。
それぞれの家で何の野菜を栽培しているのか、どの時期が繁忙期にあたるのか、把握し合っている仲間なので、忙しい時期は手の空いた人でフォローしあいます。
今ではドレッシングの加工にも慣れてきて、活動日は月に2回、売れ行きに応じて生産量を調整し、余裕ができた時間を使って、新商品の開発をしています。
ここでの経験を元に、メンバーの中には自宅に加工場を持ち、自分の畑で取れた野菜や果物を使ってジャムなどの加工品を作る人も出て来ました。
でも、どんなに忙しくなっても、この月2回の「加工倶楽部かながわ」の活動は続けたい、と、メンバーは口を揃えます。
 
神奈川県が、県内の企業や団体から、女性が開発に貢献した商品(モノ・サービス)を募集し認定する「神奈川なでしこブランド」。今年は、69件の応募の中から、食料品・飲料商品では、この加工倶楽部かながわの「キャベツに合うドレッシング」と「浜なしたっぷり焼肉のたれ」も含めて6商品が認定されました。今後、なでしこブランドのお墨付きを得て、販路拡大への弾みがつきそうです。
 
森ノオトでは、今年8月から、横浜の女性農業者から料理を交えながら暮らしの知恵、生き方を学ぶ「横浜の地産地消を未来につなぐ体験講座」をシリーズで開催しています。3回目の10月10日は、加工倶楽部かながわのメンバーのうち、4名をお招きして、秋祭りの農家のおもてなし料理をテーマに、農家の習わしや季節行事の風習などを伺いつつ、調理のコツを、実践を交えて教えていただきます。
農家にとって、収穫を祝う秋祭りは今年も無事作物が育ったことへの感謝を意味する大切な行事です。昔ながらの地域文化を守りながらも、農作業で疲れた家族のためになるべく待たせず食卓をしつらえる、時短料理の達人でもあるメンバーの皆さんの手さばきは、きっと日常に活かせる知恵がたくさん隠れていることでしょう。ご参加をお待ちしています。
 

Information

【農家のお母さん発!横浜の地産地消を未来につなぐ体験講座 第3回】

平成29年度 横浜市経済局消費生活協働促進事業

講師のお話・テーマのクッキングのデモ・試食

「秋祭りと農家のおもてなし料理」講師:加工倶楽部かながわ

日時:2017年10月10日(火)10:00~12:30

会場:クッキングサロンハマッ子(JA横浜都筑中川支店3階)

(横浜市都筑区中川中央1-26-6)

横浜市営地下鉄ブルーライン、グリーンライン・センター北駅より徒歩1分

料金:2,500円

定員:15名

持ち物:筆記用具

申し込み方法:参加希望回 、氏名 、生年月日 、住所 、電話番号 、E-mailアドレス 参加動機 を記入の上、event@morinooto.jp まで、または下記のフォームからお申し込みください。

主催:特定非営利活動法人森ノオト

〒227-0033 横浜市青葉区鴨志田町818-3

TEL:045-532-6941/FAX:045-985-9945

共催:アートフォーラムあざみ野(男女協働参画センター横浜北)

後援:横浜市環境創造局、JA横浜

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この記事を書いた人
齋藤由美子ファクトリー事業部マネージャー/ライター
森ノオトの事務局スタッフとして、主にAppliQuéのディレクションを担当。神々が集う島根県出雲市の田舎町で育ったせいか、土がないところは落ち着かない。家では「シンプルな暮らし」関連本が十数年にわたり増殖中。元アナウンサーで、ナレーターやMCとしての顔も持つ。小6女子の母。
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