「すべての地域活動と地域ニュース はSDGsにつながる」~木村麻紀さん
NPO法人森ノオトが主催する、メディア関係者と発信に興味がある人向けの勉強会「かながわローカルメディアミーティング」。第3回目は国連の定める持続可能な開発目標「SDGs」について学び、かたり合いました。その様子をリポートします!(写真・文:柏木由美子)

<<かながわローカルメディアミーティングの様子は、Youtubeの「森ノオト ローカルメディアチャンネル」の動画でご覧いただけます!(動画公開まで今しばらくお待ちください)>>
 
「かながわローカルメディアミーティング」第3回は環境ジャーナリストの木村麻紀さんをゲストに招き、2030年に向けて国連が掲げ世界の150カ国以上が採択した「持続可能な開発目標」であるSDGs(エスディージーズ:Sustainable Development Goals)を地域や自らの活動にどう生かしていくかを考えました。コーディネーターはフリーアナウンサーであり森ノオトライターでもある船本由佳さんです。
 
会場に入ると、SDGsの目標を表すカラフルな17個のアイコンが目に飛び込んできました。参加者はこのうち、自らの関心テーマにシールを貼ってから着席します。もっともシールの数が多かったのは、目標11「住み続けられるまちづくりを」。住宅や基本サービス、交通手段、緑地や公共スペースへ誰もがアクセスできることや、災害による死者や被災者数の大幅削減、大気や廃棄物による都市部の一人当たり環境影響の改善などが、具体策になっている目標です。他にも、目標12「つくる責任つかう責任」、目標4「質の高い教育をみんなに」、目標7「エネルギーをみんなにそしてクリーンに」をはじめ、ほとんどの目標にシールが貼られています。
 
SDGsは、2030年に向けて国連が掲げ世界の150カ国以上が採択した「持続可能な開発目標」。「誰一人取り残さずに(No one will be left behind)」という理念のもと、貧困や飢餓をなくすこと、ジェンダー平等や持続可能でクリーンなエネルギーの開発、気候変動に対して実効的なアクションを設けるなど、先進国と途上国において優先度は異なるものの、世界共通のテーマとして誰もが知っておきたい内容ばかりです。最近、企業が経営戦略としてSDGsに取り組むという話も多く、ローカルメディアとしても考えを深めておきたいテーマです。

SDGsの17の目標のうち、自らの関心テーマにシールを貼る参加者

参加者の関心が多岐にわたる様子を見て木村さんは、「まさにSDGsは、いろんな分野の人が一緒になってチャレンジしていく目標」と、SDGsの紹介を始めました。SDGsは、前身のMDGs(ミレニアム開発目標、2001~2015年)が途上国の目標であったのに対し、先進国を含めた全ての国の目標(ユニバーサリティ)であることが特徴の一つ。クリーンエネルギー、生物多様性、雇用、経済成長、まちづくり、人権など、先進国にも関わりの深い課題が盛り込まれています。
 
「政府が推進するだけでは、SDGsの達成はおぼつきません。ビジネスを通じた取り組みや、NGO・NPOの活動、そして市民活動などがボトムアップで積み重なって初めて達成されるものです。グローバルなテーマですが、アクションはあくまでボトムアップ、ローカルです」(木村さん)

木村麻紀さん/環境ジャーナリスト。環境とCSRと志のビジネス情報誌『オルタナ』副編集長、パルシステム生活協同組合発行情報誌『POCO21』編集長を歴任後、2013年に株式会社TREE(トゥリー)に合流


 
木村さんも参加する「SDGs.TV」は、SDGsを身近なものとしてとらえ、自らのアクションにつなげてもらおうと、17の目標に向けた国内外の取り組みをショートムービーで紹介しています。そのSDGs.TVのプロデューサーである水野雅弘さんが、特別ゲストとして来てくださいました。
 
水野さんは、イギリスのGreen.TVと提携して2007年に「Green.TV Japan」を設立した方。直面する気候変動や生物多様性損失の問題に、企業として、あるいは生活者としてどう向かっていくかを日本で発信することが目的でした。課題解決に取り組む団体はたくさんあっても、それぞれの活動は“点”のまま。“面”としてつながっていくにはプロモーションの手助けとなる共通のプラットフォーム(土台や基盤となる環境)が必要と考えたからです。この10年間で公開した映像は、本国のドキュメンタリーやアニメーションの日本語版や、日本で独自に制作したものも含め、200本以上に及びます。
 
そして2015年に国連がSDGsを採択したとき、環境問題の背景には人権や就労、貧困などの問題があること、そして武力紛争を招く負の連鎖を生みかねないことなどが、SDGsをツールとして使うことで理解しやすくなるのではと考えた水野さん。Green.TV Japanの映像を17の目標に配置換えし、2016年9月に「SDGs.TV」(https://sdgs.tv/)をスタートしました。

CRM水野雅弘さん/株式会社TREE(トゥリー)代表。マーケティング戦略コンサルタント。2007年に「Green.TV Japan」を設立。生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)の開会式映像をはじめ、多くの映像コンテンツをプロデュースする


 
SDGs.TVの目的は3つあります。1つは、17の目標に向けた取り組みや現状を、圧倒的な情報量を持つ映像の想像力、共感力を生かして伝えること。2つは、対話のツールとなって人々のアイデアや行動を促すこと。そして最後は、自治体や市民団体などの取り組みを世界と共有するプラットフォームになることです。

「SDGs.TV」で公開されている、キャスター国谷裕子さんのメッセージ映像「誰一人取り残さずに!」をみんなで視聴


 
SDGsの浸透に向けて水野さんは、
「目標の背景や意味を問う能力がとても重要になってきます。もちろん知識も必要ですが、大量生産・大量消費による“負の連鎖”を生まない、新しい価値観を育んでいくためにどうすればいいか。そのプロセスに焦点を当てて欲しい」と語りました。例えば、今回の参加者がもっとも関心を持っている目標11「住み続けられるまちづくりを」は当然、食糧の調達や省エネなど、他の目標とも大きく関係してきます。
 
木村さんは最近、「すべての地域活動と地域ニュースはSDGsにつながる」と強く考えるようになったそうです。神奈川県藤沢市の団地内にできた小規模多機能ホーム「ぐるんとびー駒寄(こまよせ)」(木村さんが関わる「シェアする暮らしのポータルサイト」で取り組みを紹介しています)は介護拠点ですが、運営者は「持続可能な地域づくりをしていく」と明言。子どもたちの育ちにも寄り添っていると言います。

mass×mass関内フューチャーセンターのワークショップスタジオを使っての公開講座。グローバルな目標とローカルの活動がどう結びつくかに関心を持つ参加者が多数参加していた


 
「SDGsに対して、私が個人的に求めている視点は、同じ地域にいながら『分野が違う』と思っていた団体とも手を組んでいける。そんなきっかけにもなること。そして、メディアとして求める視点は、活動と活動をつないで新しい価値を生み出すきっかけを提供する。メディアはそんな重要な役割を担っていると捉えています」(木村さん)
 
後半は、木村さんの話題提供をもとに参加者が個人ワークとグループワークを行います。まず各自で、メディアとして自分が取材で取り上げる分野を5つ、社会の一員として関心のある分野を1つ、SDGsの17の目標の中から選び、それぞれどういうアクションで目標に近づけていくかをシートに書き込みます。そして、目標が似通っている者同士でグループを作り、自らのアクションを語ります。
 
活動テーマは違っても共通の目標を持っていたり、ターゲットが違っても実は情報共有することで新たな効果が出るのではと感じたり、参加者は短い時間ながらそれぞれのグループで気付きが得られたようです。
 
木村さんは、「SDGsを切り口に話すと興味関心が一気に近づく効果があるんだなと思いながら、皆さんの様子を拝見していました。自分の活動の中にどんな可能性があるかを感じながら、SDGsを自分たちの活動や情報発信の“物差し”として活用してください」と締めくくりました。
 
シートに書き込んだ目標とアクションを、この場だけで終わらせないように。それぞれが新たな取り組みを始めます。

グループワークで、自分が目標とするSDGsを紹介。多くの参加者が、シートにぎっしりとアクションを書き込んでいた

私は、横浜市青葉区で、ローカルメディア(フリーペーパー「スパイスアップ」)と、身近な自然に親しむイベント(あおば川ガール森ガールになろう!)を運営しています。双方の活動を通して、地域の一人ひとりの顔が見えてくると、「青葉区ってこんなところ」「青葉区民ってこんな人たち」という一般的なイメージに当てはまらないたくさんの課題を目の当たりにします。
 
世帯年収が高い区だと言われますが、貧困に苦しむ人たちや十分な教育が受けられない子どもたちもいます。宅地が増えていますが、その分、緑が切り取られています。駅の周りは人であふれていますが、駅から遠い物件は空き家が増えています。住みやすい街と言われますが、障害者を支援する施設は少ない街です。ローカルの目で見ると、SDGsの多くの目標が、私たちの地域においても同様に課題であることがわかります。
 
SDGsの「誰一人取り残さずに」という理念に共感し、ローカルから取り組まなければいけないことだと強く感じました。
 
かながわローカルメディアミーティングでは、メディアの最前線にいる人たち、これから情報発信を担う人たち、地域のクリエイターたちが、常に変化する時代の中でメディアが抱える課題を共有して、地域全体としての情報発信意識や、リテラシーの向上を目的としています。
 
次回は9月27日(水)にローカルメディア&クリエイターの「ミートアップパーティー」を開催します。ローカルメディア関係者、地域情報発信者の交流会を開催します。社会貢献起業家、社会活動をされている皆さんにもご参加いただき、メディアと社会活動の情報交換を行いながら交流を深めます。
 
メディア関係者の皆さん(新聞社・タウン誌・webメディア・紙媒体・テレビ・ラジオ……)、地域情報の発信を始めたい方、情報発信に課題を抱えるNPOや団体関係者、地域とつながりたいクリエイターの方、ご参加をお待ちしています!

Information

<ローカルメディア&クリエイター ミートアップパーティー>

2017927日(水)19:00–21:00

12月はデザイナーやクリエイターのプレゼンパーティーを予定)

・社会起業家・活動家、メディア関係、クリエイターによるミニピッチ

・参加者によるオープンマイクタイム有り

会場:mass×mass関内フューチャーセンター(神奈川県横浜市中区北仲通3–33

http://massmass.jp

参加費:前売3,000円、当日4,000円(フード+ワンドリンク付き)

主催:特定非営利活動法人森ノオト

TEL045–532–6941

Emailevent@morinooto.jp

共催:関内イノベーションイニシアティブ株式会社(mass×mass関内フューチャーセンター)

本事業は、神奈川県の「かながわボランタリー活動推進基金21」の平成29年度ボランタリー活動補助金を得て、特定非営利活動法人森ノオトが運営しています。

提供された個人情報は、今回の事業実施のみに利用し、その他の目的で個人情報を利用することはありません。

この記事を書いた人
寄稿者寄稿者
未来をはぐくむ人の
生活マガジン
「森ノオト」

月額500円の寄付で、
あなたのローカルライフが豊かになる

森のなかま募集中!

寄付についてもっと知る

カテゴリー

森ノオトのつくり方

森ノオトは寄付で運営する
メディアを目指しています。
発信を続けていくために、
応援よろしくお願いします。

もっと詳しく