この道20年、職人の作る絶品ジェラート! ジェラート専門店「Quattro Panchine」
「ジェラートの宝石箱!」と思わず言いたくなる鮮やかさ。色とりどりのジェラートを眺めれば、旬を感じる新鮮な果物や野菜、香ばしいナッツなど魅惑的なメニューがずらり。お店の工房で作られたフレッシュなジェラートを味わえるお店「Quattro Panchine」を紹介します。(写真 山田あさか)

東急田園都市線藤が丘駅からまっすぐに伸びる並木路、もえぎ野公園、そして柿の木台の郵便局を通り過ぎると、ケヤキの木陰にジェラート専門店「Quattro Panchine(クアットロパンキーネ)」の看板が見えてきます。
この春オープンしたQuattro Panchine、オープン前からその店構えを目にした人たちに「柿の木台にまたおしゃれなお店ができそう」とささやかれ始め、「ジェラート屋さんみたい!」と通りすがりで目にした情報が期待とともに広がっていました。

そして、5月1日の開店から約半年経った今、お店を訪れた人たちがそのジェラートの圧巻の美しさと美味しさを思わず誰かに伝えたくなり、私の友人たちのインスタグラムやFacebookでしばしば見かける噂のお店になっています。そんな「Quattro Panchine」のシェフジェラティエーレ(ジェラート職人)磯部浩昭さんにお話を伺ってきました。

9月上旬のショーケース。スイカ、トウモロコシ、いちじく、イタリアンバジルなどが並び、夏の終わりを目でも、味覚でも味わえる(写真 南部聡子)

「Quattro Panchine」は、イタリア語で「4つのベンチ」という意味です。その名の通りに、お店の入り口には、ゆったりとした木製のベンチが4つ並んでいます。

このお店の名前の由来には、素敵なエピソードがありました。

磯部さんが大学を出て仕事を始める時に、「いつか飲食店のお店を自分で開きたい」という夢を抱いたそうです。その夢を温めながら、20年間シェフジェラティエーレとして二子玉川の有名なジェラテリアでこの春まで働いてきました。そこで同僚として出会った加藤光風さん、井上亮さんと立ち上げた株式会社トリフォリオのお店が「Quattro Panchine」だそうです。

トリフォリオでは、ジェラートの製造は一手に磯部さんが引き受け、対外的なお仕事を加藤さんが、マシーンなどの技術的なことを井上さんが担当しています。

加藤さんは若かりし頃イタリアに留学し、長靴型の半島のつま先の町、レッジョカラブリアに居たことがあるそうです。その当時、加藤さんが仲間たちといつもふらりと集まっていた場所に、たまたま4つのベンチ、クアットロパンキーネがありました。

「クアットロパンキーネで会おう」。いつしかそれは仲間の合言葉に……

街角のベンチに仲間と腰掛けて時間を忘れて語らい、誰しもが笑顔だった。その愉快で何気なくて満ち足りたひと時……。
そんなひと時をお客さんに味わってもらえるようなお店にしたいという思いが、この店名に込められているそうです。

ベンチには、親子連れや、お友達同士など、様々な組み合わせの人たちがジェラートを手に、のんびりお喋りをしている姿が見られる

さて、店内に入ると、ショーケースにある色とりどりのジェラートが目に飛び込みます。

「フルーツや野菜そのものを最大限、そのまま活かせるのがジェラートの魅力です。一番美味しい旬の味をお客さんに味わってもらいたいと思っています」と磯部さん。数々の果物や野菜から作られたジェラートを眺めると、季節の恵みを感じる楽しみがあります。

こちらは旬の味「浜なしのシャーベット」と定番の味「チョコラータクラシッコ」

ジェラート作りに欠かせない野菜や果物は、鮮度が抜群の地元野菜を中心に使っています。特に多くは、横浜市内の女性生産者グループ「農娘会(のうむすかい)」の方々から採れたてのものを仕入れているそうです。
浜なしや、浜ぶどうはもちろん、新生姜にブルーベリー、レモンバジルやドラゴンフルーツ、バターナッツパンプキン……。次々にラインナップの移り変わるショーケースを眺めていると、横浜市内でこんなにも豊かに農作物が栽培されているのだなあという驚きや感動があります。

9月中旬のショーケース。バターナッツパンプキン、浜なし、巨峰など実りの秋の気配が満ちていた

「鮮度が一番な地元の素材を使うことで、素材が持つ美味しさをそのままジェラートに込めてお客さまにお届けできます。また、お店のあるこの地域と縁のある結びつきが出来ていくことも楽しみでもあります。お店を始めてから恵まれた出会いが重なり、地元とのつながりが自然と広がっていきています」と磯部さん。
「自然と広がって」と磯部さんは言いますが、磯部さんの持つ明るさ、ポジティブな雰囲気がきっと人とつながる力となり、広がりを作っているのだと思います。私の方がこの街での暮らしは長いはずですが、お話しているうちに、なんだか街の頼れる兄貴と話しているようなラフな気持ちになっていました。

イチゴのショートケーキやティラミス、思わず「これはなんだ?!」と、まじまじ見てしまうまん丸の「タルトゥーフォ」。どれもQuattro Panchineオリジナルのジェラートたち。見た目の可愛さもさることながら、食感や味わいも「たのし、おいしい!」という感じ

もう一つQuattro Panchineがジェラートに託しているものは「手作り」の美味しさです。

「以前のジェラート屋に勤めていた頃、研修で何度かイタリアへ行きました。その際、研修の合間に車を走らせ、ふらりと寄ったスイスの国境近くの小さな村で入った小さなバール。そこで食べた「チョコレートジェラート」の美味しさに驚きました。観光客が特に訪れる村でもなく、村の人々が暮らしの中でさりげなく食べている、店主のおじいさんの手作りジェラートが忘れられません」(磯部さん)

その特別ではないのに、格別な手作りジェラートの感動がお店の原点にもなっているのかもしれません。

「マンマの手作り惣菜」も並ぶ。カフェ、バー、レストラン、時と場合でお好み次第の居場所となるのがQuattro Panchineの魅力(写真 Quattro Panchine)

Quattro Panchineでは、乳化安定剤や着色料、香料など人工的なものは一切使わないそうです。それらを使わず、口当たりの良い滑らかさを出すために、米粉やこんにゃく粉を使うといったオリジナルな工夫をしています。「イタリア発祥のジェラートに、まさか米粉が!」と思いましたが、イタリアのお米の甘いスイーツなどを見かけたりしたことが工夫のヒントになったそうです。
食物繊維などの自然素材のものだけを使って作ることで、安心して食べられること、そしてより素材の持つ香りや風味を最大限に味わうことができるそうです。お店のジェラートの発色が鮮やかで「パキッとした色になる(磯部さん)」のも自然のものだけを使っているからなのだとのこと。

ナポリスタイルのエスプレッソマシーンと寺家ふるさと村のブルードアコーヒーの珈琲豆「天空ブレンド」で入れるカプチーノも香りが深く一押しの味

 

ジェラートを食べた後にはのんびりカプチーノを飲みながらお喋り。イタリアのビールやワインもあるので、時には昼から……(写真 南部聡子)

この取材の一週間後にジェラート発祥の地、イタリアのシチリア島パレルモで年に一度開催される最大のジェラートイベント「sherbethfestival」があり、イベントは、パレルモの大通りに世界中のジェラート職人のお店がずらりと並び、活気と刺激があふれる4日間になるそうです。
昨年イベントに参加した磯部さんは、「日本ならでは」のジェラートを楽しんでもらいたいと「ほうじ茶」のジェラートを出品、今年は「ゆず」を使ったジェラートを準備しているそうです。お店には昨年のイベントで出会った世界中のジェラート職人たちのサインの入ったユニフォームが飾られています。

ジェラートが縁で深くイタリアと関わってきた磯部さんは「イタリアには街にカフェやバール、ジェラート屋がいたるところにあり、いつも人で賑わっています。人生にある悲しみや辛さに国の違いはないでしょうけれど、それを超えて日々の暮らしを楽しもう!という、明るさやゆとりがいいなと思います。日本にも今よりもっと気軽に暮らしの中でカフェタイムを楽しめる風土が根づいて、子どもたちが『ジェラート屋さんになりたい』と将来の夢の一つとして語れるくらいになるよう頑張っていきたいです」と力強く話してくれました。

ダブル、トリプル……、どの組み合わせにしようか迷う時間もまた楽しい    (写真 南部聡子)

取材の後、Quattro Panchineのベンチでジェラートを手に、色づき始めたケヤキ並木を眺めました。
この通りには随分新しいお店が増えました。この街の風が新しいお店を呼び、お店は街の人の暮らしに新しい楽しみや出会いを運んで、一層街は活き活きとしていくのだなあと思いました。

 

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Information

Quattro Panchine

電話:045-299-2760

住所: 横浜市青葉区柿の木台13-3

営業時間:11:00-18:00

定休日:水曜日

Facebookhttps://www.facebook.com/quattropanchine/

HP:www.3foglio.com

onlineshop: https://4panchine.thebase.in

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この記事を書いた人
南部聡子ライター
富士山麓、朝霧高原で生まれ、横浜市青葉区で育つ。劇場と古典文学に憧れ、役者と高校教師の二足の草鞋を経て、高校生の感性に痺れ教師に。地域に根ざして暮らす楽しさ、四季折々の寺家のふるさと村の風景を子どもと歩く時間に魅了されている。森ノオト屈指の書き手で、精力的に取材を展開。
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