こころのバリアフリー&ビューティマガジン「Co-Co Life女子部」は「障がいや難病の女性が一歩踏み出すきっかけを提供したい」と創刊されたフリーペーパーです。「オシャレ』「恋愛』「グルメ』など、普通の女性が好むカテゴリーに、障がい当事者ならではの必要情報をプラスして編集されています。雑誌の企画や編集を行うのも、登場するモデルも障がいのある女性。その制作現場には、経験豊富なプロフェッショナルのサポートがあり、障がいの有無に関わらず多様な価値観を持つ人たちが関わり、世に送り出している季刊誌です。 2016年から編集長を務める元山文菜さんは、変型性股関節症による中途障がいがあり、人工股関節を入れて生活をしています。5歳の娘の母であり、ワーキングマザーでもあります。
Co-Co Life女子部の活動は、障がい当事者の生の声を元に誌面を構成できることが強み。その活動は冊子やwebでの情報発信だけにとどまりません。サポーター制度を設けてリアル交流会を開き、そこから新しい企画も生み出しています。
「真の目的は読者の行動を変えること」と元山さん。目立つことをよしとされない環境で育った方も多いため、おしゃれやお出かけに前向きになれなかった読者が「交流会に参加する」ことを目的に、明らかにイキイキとしてきたこと。読者モデル経験をきっかけにファンがつくほど人気になった人などもいるそうです。障がいのある女性たちがこれまで諦めていたことに挑戦したり、仲間と出会って活動を始めたり、様々な事柄を前向きに捉えるきっかけになっていることに手応えを感じています。
また、障がいのある人、ない人が一緒に誌面を作るためには、ダイバーシティマネジメント(性別・年齢・人種・障がいの有無など、参加者の多様性を組織強化に生かしていく手法)が必要不可欠です。編集の現場でダイバーシティマネジメントを意識した例として、「私たちの恋愛&結婚」をテーマにした号の話をしてくれました。この号の表紙は、ウエディングドレス姿の車椅子女性とそのパートナーがモデルを務めています。
その表紙に関して、元山さんと、過去には人気女性雑誌を手がけていた、健常者でありながらプロの編集者としてCo-CoLife☆女子部の編集に関わるスタッフの意見に食い違いがありました。元山さんは、自分自身が障がい者になり恋愛や結婚には臆病になった経験から「ウエディングドレスという直接的な写真は、障がい女子にとっては直接的すぎる気がする」と主張。対して、スタッフの女性は編集のプロの目線から「もっと深入りすることで、一定の読者に深く刺さらないか?」と語り、意見を交わしたそうです。
結果、今までの「Co-Co Life女子部」にはなかったウエディングドレスのカップルが表紙という号が誕生しました。見る人の気持ちに刺さったのか手に取る人が多く、いつもよりも配布が進み、メディアからも問い合わせがあるなど、反響が多かったのだそうです。
「私だけの意見なら、当たり障りのないものをつくり続けることになったと思います。一方、担当編集だけの意見だと、当事者の女の子には受け入れられないでしょう。しかし、こうして多様な人が混ざり合う環境で冊子を作ることでいろんな人の意見が出てくる。私だけの価値観じゃないものが生まれました」。
単一的な価値観だけでは出てこないアイデアが生まれる環境。ダイバーシティが生かされる組織づくり。
それは近い未来、誰にとっても必要になってくるテーマでしょう。フリーペーパーの編集の現場を通して、どのように多様性のある人たちとともにやっていくかを考えぬいてきた元山さんは実体験からの話でした。
さらに元山さんは、「Co-Co Life女子部に関わった当初は“障がい者”としてのある意味弱い立場しか求められていなかった時期もあった」と経験談を話し、「障がいの有無ではなく、何ができて何ができないのか、これを理解し合うことが大切です。ただこれは本人でさえ認識していないケースもあります」と語りました。
例えば、障がいのある人の中でも自分の障がいを許容している人とそうでない人がいます。障がいを許容している人は、できることできないことをはっきりと伝えられるケースが多いそう。「私も中途障がいがわかった頃は、事実を受け止めきれず長く苦しみました。自分の障がいを受け止めきれたあとは、とても楽になりましたし、多くの人との協働作業も進むようになりました」と元山さん。
「例えば、薄毛を笑いにできる人もいれば、できない人もいるのと同じで、障がいをコンプレックスに感じている障がい者もいれば、許容し自分の障がいを笑いにできるくらいの人もいるのです。障がい者を取材したり、共同作業を行う際には、相手が“受け入れているのか”、これもポイントだと思います」と話しました。
このローカルメディアミーティングは、地域で情報発信を行う人たちがつながりあい、現場での問題意識を共有し、切磋琢磨してより良い情報発信を行っていくことを目的としています。対話を通して、「良い情報発信とは何か」を探り、ここで得た学びと対話の内容を、ゆくゆくは神奈川のローカルメディアの行動指針の形にまとめていきたいと考えています。
参加した皆さんにもこの「行動指針の策定」を念頭に置きながら、元山さんの講演で感じたことを自由に話し合ってもらいました。
討論を深める中で「多様性と言われる中で、健常者と呼ばれる人でも困っている人もいるのではないか」「何をもって特別なのか普通なのか、線引きが難しい。ルールも作ることがいいことばかりではない」という声や「いつからそうした意識が始まるのか?義務教育の時点でクラスも強制的に分かれる、その時点からバリアが始まるのでは」といった課題提起がありました。
また、「障がいがある人が社会参加していくためにはいろいろな場所に出ていくことがとても大事だと思っている、Co-Co Life女子部がフリーペーパーでありながらその役割を担っていることは大事だと感じている」という当事者からの声や、自分と違う価値観を持つ人を取材することに対し「自分も相手も傷つくことを恐れていると誰も何もできない。踏み込んでいくのだから」という意見も出されました。
自分と相手は違うということ。間違ったラベルを貼らないように気をつけること。配慮は必要でも遠慮はいらないこと。障がいというテーマで始まりはしましたが、世の中の全員が当事者であるという実感を持って締めくくった会でした。
元山さんの講座とその後の対話の中には障がいの有無に関係なく、人と人として向き合う際に忘れてはならない大切なメッセージが込められていました。
かながわローカルメディアミーティング、次回は12月12日(火)にローカルメディア&クリエイターの「情報交換サロン」を開催します。ライターやカメラマン、クリエイター、デザイナー、メディア運営者など「発信」を生業にする方の交流会です。参加する方には、ご自身の作品を一点会場にお持ちいただき、活動を紹介しながら、横のつながりを深めていきたいと考えています。
1月19日(金)には、ウエブマガジン「greenz.jp」のコミュニティエディターで、寄付読者制度「greenz people」を担当し、日本初の寄付型メディア作りに取り組む植原正太郎さんにお越しいただき、公開会議スタイルで「寄付型メディア」に関する知識を深め、読者や支援者に支えられるメディアの仕組みについて語り合いたいと思います。
メディア関係者の皆さん(新聞社・タウン誌・webメディア・紙媒体・テレビ・ラジオ……)、地域情報の発信を始めたい方、情報発信に課題を抱えるNPOや団体関係者、地域とつながりたいクリエイターの方、ご参加をお待ちしています!
<ローカルメディア情報発信サロン>
2017年12月12日(火)13:00–15:00
・ライター・カメラマン・デザイナーなど参加者による活動プレゼン
・ローカルメディアに関する情報交換など
会場:mass×mass関内フューチャーセンター(神奈川県横浜市中区北仲通3–33)
参加費:2,000円(お茶とお菓子付き)
申し込みフォームはこちら
https://goo.gl/forms/AEC3UWkPWFHR54bq1
<ローカルメディア情報発信サロン>
2018年1月19日(金)13:00–15:00
・greenz.jpコミュニティエディター植原正太郎さんの講義
・参加者相互の話し合い
・ローカルメディアの行動指針に関する情報交換など
会場:mass×mass関内フューチャーセンター(神奈川県横浜市中区北仲通3–33)
参加費:2,000円
申し込みフォームはこちら
https://goo.gl/forms/s0TeUoJqtlgBvYSM2
主催:特定非営利活動法人森ノオト
TEL:045–532–6941
Email:event@morinooto.jp
共催:関内イノベーションイニシアティブ株式会社(mass×mass関内フューチャーセンター)
※本事業は、神奈川県の「かながわボランタリー活動推進基金21」の平成29年度ボランタリー活動補助金を得て、特定非営利活動法人森ノオトが運営しています。
※提供された個人情報は、今回の事業実施のみに利用し、その他の目的で個人情報を利用することはありません。
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