(文=子どものワークショップ代表・浦部利志也 / 写真提供=子どものワークショップ)
※このシリーズでは、「子どもを育てる」現場の専門家の声を、リレー形式でお送りしています。
ある時、モグラが泳いでいました。
でも、それは溺れまいと幅広い前足で懸命に水をかいている姿でした。場所は寺家ふるさと村の田んぼの横の大きな用水路です。活動中の5歳から2年生までの子どもたちも一緒でしたので、その光景にみんな大興奮。
でも、初めのうちは、みんなネズミだと思って見ていましたが、それがモグラだと分かると、俄然大騒ぎとなり、やれ「早く助けないと!」とか「目が見えないから登れないんだ!」とかで、いつの間にか助け役は私になっていました。
周囲には鉄柵がありましたが、私は柵をまたいで川に入り、パタパタと、お風呂のゼンマイのおもちゃのように手を動かしているモグラに近づきます。水の深さは30センチほどでした。川の護岸はコンクリートで傾斜もきついので、モグラは登れません。子どもたちは、その一部始終を見ています。そして、早く早くと急かします。私はモグラを水の中から両手ですくいました。
「やった!」と見ていた子どもたちは、安堵と喜びの声でした。しかし、私は直ぐにモグラを川に落とします。なぜかというと、とても痛かったからでした、モグラの手の力は凄まじく、手の平を土だと思い掘り始めたからです。びっくりするほどの力です。その後、見ていた方が袋をくださり、そこにモグラを入れて、岸まで持ち上げ、何とか川から救出することができました。子どもたちもきっとワクワクする体験となったと思います。
自然の中では、このようなワクワクするコトがあちらこちらで起きています。それは、美しさを伴いながら、小さな虫や草花などのミクロのレベルから、森や大気など私たちの体を包みこむレベルまで。ぜひ、子どもと一緒にワクワクするコトに出会ってください。
ではどうしたら、その機会を得られるのでしょうか? それはやはり、自然のある環境に子どもと出かけることです。できるだけ多く。そして、まずはのんびりと歩くことから。あれこれと話しをしながら、あまり次のことに焦らずに、時間をゆっくりとりましょう。そして、いろんなモノを見ましょう。次第に、なんだかその場に馴染んでいくような感覚が生まれて来ると思います。すると、自然の事象を捉える能力もアップしてくるので、あれ?と思ったら、足を止めて見てみたり、聴いたりしてみてください。すると、感動する出会いがきっと訪れます。
さて、話は変わりまして、モグラのその後のことです。袋に入れられたままモグラは、子どもたちの畑に連れて行かれました。ここなら安全ということで(でもミミズを食べるのはちょっと困るのですが)、みんなで円陣を組み見守る中、モグラをポトンと土の上に出しました。ザクザクザクザク……と土を掘り始めたモグラはたった5秒ほどで土の中へ! 歓声と共に姿を消したモグラ。今も子どもたちの畑に住んでいるようですよ。
**こどもに寄り添う専門家リレーコラムはこちらから**
子どものワークショップ(横浜市青葉区寺家ふるさと村)
寺家・ソダチの森
http://www.childws.com/sodachinomori/sodachino_senburogu/sodachino_senburogu.html
「あそびの日」
誰でもソダチの森に入れる日です。
日時:2018年6月10日(日)、7月8日(日) 10:00〜13:00
参加費:無料
お問い合わせ:090-1215-0585
<プロフィール>
浦部利志也(子どものワークショップ代表)
寺家ふるさと村を拠点に、里山の自然を題材にした子どもの自然体験と芸術教育「子どものワークショップ」を展開する。「ソダチの森のあそびの日」大作戦!子どもゆめ基金助成活動。
毎月誰でも参加できる「あそびの日」を定期的に開催している。
そのほか、子どもの環境デザイナーとしての活動や、大学で造形表現の分野で教鞭をとるなど、多方面で活躍している
子どものワークショップ(横浜市青葉区寺家ふるさと村)
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http://www.childws.com/kodomo_ws/zidomonowakushoppu.html
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