横浜市都筑区にある幼稚園、りんごの木こどもクラブが主催する「夏季セミナー」は、1991年から始まり、今年で28回目になります。
今年は8月8日(水)、9日(木)の2日間にわたって開催され、全部で6部構成。間に、自由参加のワークショップなどもありますが、基本的に一つひとつの講座が独立しています。
りんごの木は1982年に、代表の柴田愛子さんをはじめ、
子どもと直接関わる、いわゆる幼稚園の機能を持つ「りんごの木子どもクラブ」と、メッセージの発信基地としての「出版部」、そしてこの夏季セミナーのような間接的に子どもと関わる「ワークショップ」の3つを軸に運営しています。
発足当時から”発信型”や”企画型”の保育者が多かったというりんごの木。「自分たちも講師としても参加できるし、自分たちが話を聞きたい人、面白い人を呼んで、みんなで豊かな保育にしていこうよ」という思いでこの夏季セミナーは始まりました。
このセミナーの大きな特徴は、「保育者の保育者による保育者のためのセミナーである」ということ。一般的な保育セミナーは、企業のプロモーションの一環として行うことが多く、いくつかの講座がセットになっていて、興味のある無しに関わらず、まとめて参加しなくてはなりません。でも、このりんごの木の夏季セミナーは、1コマごとに予約し、受付をします。「本当にあなたが聞きたいものだけを聞けばいい」という主催側の意図があります。これは、開催当初から揺るがない、りんごの木がこだわっているところです。
毎回このセミナーの講師としてお招きしている汐見稔幸さん。
りんごの木スタッフが「今、汐見先生にお伺いしてみたいこと」を、毎回みんなで考え、提案します。
汐見先生も、「おお、そうきたか!」「わかった、やってみよう」と、まるで宿題のように、どんなお題が来るかを楽しんでくださっているのだとか。
保育現場で子どもと関わりながら感じること、子どもを取り巻く社会状況から思うあれこれ、憤っていること、先の見えないこと、歴史的な経緯を辿って考え直してみたいこと….…など、保育者からも本気の投げかけをしています。
今年のお題は「保育と教育はどう違うの?」
実際の保育の現場にいるりんごの木スタッフが本当に聞きたいことだからこそ、参加者も興味を持ち、支持するところなのだと感じます。
映画とその映画に関わる人のお話をきく、という企画もここのところ定番になって来ました。今回取り上げるのは、は『ニッポンの教育』というドキュメンタリー映画です。
この映画は実は第一部の「挑む」と第二部の「日本の教育」という2作品あるのですが、スタッフで鑑賞したところ、「一部のここがいいけど、二部のここも外せない…、しかし両方では長い」。そこで、監督に頼んで、今回のセミナー用に一部と二部を合わせたダイジェスト版を作っていただくことに。え?そんなことできるんですか?
「頼んでみたら、できちゃいました」というのもなんだかりんごらしい。
今回初めて講師として出演していただくのが、鍵盤ハーモニカ奏者の松田昌さん。
松田さんの名前は知らなくても、CMやテレビ音楽など、きっとどこかで松田さんの曲に触れたことはあるはず。
教育現場では教材として使われることが多い鍵盤ハーモニカですが、松田さんによると、実は「とても繊細で伴奏もでき、独奏もでき、アンサンブルにも向いている。息づかい次第で色々な音が出せ、試行錯誤しながら自分の音を見つけることができる楽しい楽器」なのだそう。
今、各地で開催される松田さんの講演会にはピアノやエレクトーンの先生、演奏家の方が多いとのこと。この日は、講演に合わせ、もう一人倉沢大樹さんという演奏家も参加してのセッションもあります。音楽の新しい扉が開くかも?
シンガーソングライターの新沢としひこさんは、普段は実技講習などを加えた講演会で人気の講師ですが、りんごのこと、このセミナーを知っているからこそ、ここでは必ず「コンサート」です。
「保育者は自分にご褒美をあげて、自分が元気になる時間にしようね」と、コンサートは必ずセミナーの最後。
実は、今回の隠れたテーマが「コミュニケーション教育」です。4部で講演する柴田愛子さんのテーマは「子どもと子どもの繋がり」。5部後半の講師菊池省三さんの講演テーマはまさにそのもので「コミュニケーション教育」です。
実は、このテーマは、後からついてきたものなのだそう。
今りんごの保育者たちをはじめ、保育界のみんながそれを大切に思っているのかもしれない、と真弓さん。
このセミナーは、子どもに関わる人なら誰でも参加できます。
保育者や、保育現場に関わる人、教員、かつて関わっていた人、お父さんお母さんも。
真弓さんは、りんごの木夏季セミナーの魅力を次のように語ります。
「自分の子どもだけではなくて、“全体的な子ども一般”という、ちょっと引いた目で子どもをとらえる良い機会になれば。子どもってこういう面があるし、うちの子はこうだけどこういう子もいる。それは比較ではなく、色んな子がいて、みんな違ってそれぞれが素敵、ということを実感として得られるセミナーだと思う」。
「そして自分自身にも発見がある。その切り口が音楽であったり絵本であったり、理論的なことであったり教育であったり、ただ単に自分のためのコンサートであったり。子どもを忘れて自分に向き合う。でも、その後子どもに会った時に関係がちょっと柔らかくなったり、お互いにうれしくなるような、そんな向き合い方のための時間なんじゃないかな」
実はこのセミナー、託児が付いていないのです。聴講するには、子どもをどこかに託して行かなければなりません。
私も、最初、子連れで参加できたり保育がついていればもっと行きやすいのになあ、と思っていました。
でも、お話を伺っているうちに、「子どもをどこかに託して、母としてではなく、一人の個人として、自分のための時間として参加するからこそ得られるものがあるのでは」という思いに変わりました。
この夏、自分のための時間を作り、自分が今本当に聞いてみたいものを自分で選んで、参加してみませんか?
第28回 りんごの木夏季セミナー
【8月8日(水)】
ワークショップ:立花あいこさんの造形かがく遊びをやってみよう
紹介者:蝶間林裕美・佐藤清美(りんごの木スタッフ)
10:00〜11:00
参加自由(材料費300円)
第1部:音楽(鍵盤ハーモニカ)との出会い
講師・演奏:松田 昌さん / 演奏:倉沢大樹さん
12:30〜14:30
第2部:保育・子育ての真ん中に絵本を
講師:大豆生田啓友さん
15:30〜17:30
第3部:保育と教育はどう違うの?
講師:汐見稔幸さん
18:00〜20:00
【8月9日(木)】
第4部:子どもと子どものつながり
講師:柴田愛子さん / 青山 誠さん
9:30〜11:30
第5部:映画「ニッポンの教育」
12:30〜14:30
第5部:講演「コミュニケーション教育」
講師:菊池省三さん
14:40〜16:40
第6部:コンサート「いつも新しい明日で」
出演:新沢としひこさん
18:00〜20:00
詳細はこちら
http://ringono-ki.org/summer_seminar.html
日時:8月8日(水)、9日(木)
場所:溝の口・高津市民館 大ホール
川崎市高津区溝口1-4-1ノクティ2(丸井12F)
http://www.city.kawasaki.jp/takatsu/category/111-11-1-8-0-0-0-0-0-0.html
参加費:各講座 3,240円
お申し込み: http://ringono-ki.org/seminar_application.html
お問い合わせ:りんごの木
電話:045-941-0683 または045-941-0850
E-mail:ringo@lares.dtl.ne.jp
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