毎日ドラマがうまれている
横浜市都筑区のまんまるプレイパークは、毎週月曜日と火曜日と第2・4日曜日の11時から17時に開催しています。いつ来ても、いつ帰っても、そこは、公園なので自由です。

文=まんまるプレイパーク・西田清美 /写真=まんまるプレイパーク
*このシリーズでは、「子どもを育てる」現場の専門家の声を、毎月リレー方式でお送りしていきます。
 
プレイリーダーは、朝来て、まず倉庫の中から旗を出して、いつもの場所に掲げます。それが、「今日 まんまるプレイパークやっているよ」のしるし。

お店でいうとシャッターを開けて、「開店しま~す」……そんな感じ。

テーブルを出して、救急箱、工具箱、焚火の道具、けやきの木の下に、みんなが座れる大きなシートを敷いて……。

 

 

「昨日の ○○君 続きをしに来るかな……」

「最近 □□ちゃん 来ないな……元気かな」

 

 

遊び場は、あたりまえだけど子どもが主役。

子どもたちが、自分の時間を自分で過ごせるために プレイリーダーは、遊び場にいます。安全を見守るため、そして、何より子どもたちの心の安心を守るために。

 

12年前に世話人みんなで考えたメッセージとまんまるのシンボルマーク。何度も洗濯して、いろんな人が上書きして……ボロボロになったけど、いつも遊び場を見守ってくれています

 
3年位前だったかな。

ある方から漁師さんの網をいただきました。プレイリーダーが、それを2本の竹に結び付けネットにしたことで、バドミントンや、バレーボールの遊びが流行りだしました。

 

 

その日は日曜日で、中学生も朝から来ていました。人数もいるし、「バレーボールをしようぜ」ということで、広い場所にネットを張って始めました。が、草がぼうぼうで思うように動けない……、ボールを探すのも大変。

 

 

「ちょっと、この草、邪魔。草刈り機とかないの?」誰かが言いました。

「あるはずないじゃん」プレイリーダー。

「じゃあ、なんか草を刈れる道具ある?」

「ハサミしかないかな……」

「ちぇっ。じゃハサミでもいいよ。うぜーな」

とかなんとか言いながら、数名でハサミを持ってきて草を切り出しました。小学生の男の子と中学生のなんとも面白い光景でした。

 

 

しかし、なかなか作業は進まず。なんてったって普通の工作用のはさみでチョキチョキ草を切るのですから無理もないです。

 

 

「あー無理」

「やっぱ草刈り機じゃないと……こんなん何時間あったって無理」

(その通りだと思うよ)心の中でだれもが思うが口にせず。

「俺、草刈り機探してくる」

えっ」

「はっ……?これ、大人。

「俺も行く」これ、子ども。

で、行ってしまったのです。子どもたち。

ここは横浜市都筑区鴨池公園まんまる広場。住宅街の真ん中に位置しております。

 

 

でも、何が起きたと思います?

中学生が、草刈り機を持ったおじさんを連れてきたのです。

そしておじさんが、広場のバレーボールをするコートの草を刈り始めました。

子どもたちは、邪魔にならないように隅っこに座って、じっと作業の様子を見守りました。

 

 

終わったら、全員「ありがとうございました」と心のこもったお礼をしました。

普段は、「くそ」とか、「ばばー」とかそんな言葉しか発したことのなかった彼らでした。(プレイパーク内では……です。笑)

 

 

あとで聞くと、中学生は「誰か、草刈り機を貸してくれませんかー」と叫びながら住宅街を歩いたそうです。偶然ご自分の畑の手入れをされていたおじさんに出会い、お願いしておじさんが快くお話を聞いてくださり、ここに至ります。もちろん、何の面識もない二人。おじさんの優しさに、子どもたちはもちろん、そこにいた私たち大人も感動しました

 

そして、再開したバレーボール。

そこに自転車でたまたま通りかかった小学生3人(ログハウスに行く途中だったそうです)が、自転車を止めて広場に降りてきました。見ると、ピカピカのバレーボールを持っています。

 

 

「私たちもやっていい?」

「ま、いいけど」と中学生男子たち。ちょっと面倒くさそうでもありました。

しかし、彼女たちがコートに入ってプレイを始めたら

「まじかよ……」と焦りの表情。

 

 

小学生女子、うまいんです。レシーブ 、トス、アタック、決まる。

それまで我が物顔でやっていた中学生たちが、小学生チームに負けてしまい。

「もう一回やってよ」とお願いして、何度も試合が繰り返されていました。

おもしろそうなので、見ていた大人も加わっていました。

ちょっと本気のバレーボール。

 

 

プレイパークって、お友達と来る人もいるけれど、けっこう一人で来る子も多く、「ここに来たら誰かいる……」そんな安心感があるところです。

だから、この日のバレーボールも今日、ここで出会って仲間になった人たちでした。

 

 

途中から加わった小学生は、近所のバレーボールチームに所属していた子どもたちだったみたい。どうりでうまいはず(笑)

 

 

はさみで広場の草切りから始まって、大人も子どもも一緒になって本気のバレーボール大会で盛り上がった1日。誰も描けないドラマが、毎日生まれている。

遊び場は、そんなところです。

 

偶然みつけた竹の切れ端。夢中になってやすりがけ。なんのために? ただやりたいから、やりたいことに理由なんてない

 

のんびりした昼下がり。時間がゆっくり流れていく……

 

 

『人生に準備期間はなく、常に本番です』

 

 

新聞で見つけたこの言葉が心に沁みています。

夏休みが終わりに近づいて 、学校に行くのがつらい。そう思い悩む子どもたちに向けたメッセージでした。

大人になって困らないようにと、塾や習い事で忙しい子どもたちです。

でも、どんな将来だったら安心なのかな……。

 

 

新聞のメッセージは、

「今を大事にすれば、将来の自分を大事にできるようになります」。

そう締めくくられていました。

 

 

「遊び場」であるプレイパークは、子どもたちが大人に邪魔されず、自分の時間を自分のために使えるところ。自分で考えて行動し、だから失敗も成功も自分のもの。そんな「あたりまえ」を保証できるところでありたいと思っています。

 

「ちょっと、聞いてよ!今日さー」。学校であったあれやこれやを散々しゃべって帰っていく中学生。大きくなっても 戻れるところ。それは、ありのままの自分で大丈夫と思えるところ

Information

まんまるプレイパーク

毎週月・火曜日 毎月第2・4日曜日

11時〜17時
都筑区鴨池公園内まんまる広場
http://manmarupp.ciao.jp/

 


●10月8日(月・祝)11時〜15時
「YPCフェス」
まんまるプレイパークに横浜のプレイパークの仲間がやってくる!楽しい遊びのコーナーがいっぱい、プレイリーダーも集合するよ!家族でお友達と遊びに来てね!

 

 

Profile

西田清美

大阪府箕面市出身。そこで「あそぼう会」というお母さんたちの子どもの遊び場づくりをお手伝いしたことがプレイパークに関心を持つきっかけに。結婚を機に横浜市都筑区に在住。

まんまるプレイパークの代表であり、都筑区の一時保育「さんぽ」の保育士。

 

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