語りかけは赤ちゃんへの最高の贈り物 作家で語り手、こがようこさん
こがようこさんの手がけた絵本は、赤ちゃんとお話ができる素敵なツール。9月には赤ちゃんと一緒に楽しめるわらべうたの絵本も出版されました。こがさんの絵本を読むと、赤ちゃんもママも笑っちゃう!?そんな素敵な絵本を作るこがさんは、青葉区在住の絵本作家さんです。

人気の絵本

赤ちゃんや幼児向けの絵本作家であるこがようこさん(以下、こがさん)。絵本作家としてだけでなく、紙芝居脚本家、絵本コーディネーター、語り手、語り手たちの会理事、といういくつもの仕事をこなしています。どれも、子どもたちと絵本やお話の世界をつなぐ仕事と言えるかもしれません。

 

 

私が、こがさんの絵本と会ったのは、昨年取材したボランティアグループ「おはなしひなたボッコ」のお話会でした。メンバーの方が『語りかけ絵本 いちご』(ぶん・え=こがようこ/大日本図書)の読み聞かせをしてくれました。聞き手は0歳から2歳ぐらいの子どもたちですが、みんな集中して絵本をじっと見つめています。そのうち、読み手がいちごを食べるまねをすると、子どもたちも次々と前にやってきて、いちごを食べる動作を始めました。なんとも言えぬ、ほほえましい時間が流れ、「シンプルなのに子どもたちを惹きつけるこの絵本すごい!」とびっくりしたのを覚えています。

子どもたちに大人気の絵本。こがさんの手がけた紙芝居などもお話会で人気だという
「語りかけ絵本」シリーズ 『いちご』『ひよこ』(ぶん・え=こがようこ/大日本図書)

 

 語り手として

絵本作家、紙芝居脚本家としてお話を作るだけでなく、自ら語り(※)をするこがさん。今回の取材より前に、こがさんが理事を務める語り手の会で勉強中の私は、こがさん自作のお話を聞く機会が2回ほどありました。『あんぱんひとつ』と『やきゅうにいこう!』というお話でしたが、どちらも子どもに向けたものでした。それぞれ、小さな女の子の役、野球少年の役にすっかりなりきって語ってくれたこがさん。こがさんの人柄がにじみ出るような明るくて楽しい語りは、聞いているだけで元気が出てくるのです。もちろん、子どもたちだけでなく大人たちもしっかり楽しませてもらいました。こがさんは方言での語りなども好きだそうで、語り仲間の間では「こが弁」と呼ばれているのだとか。ぜひ聞いてみたいです。

 

(※)語り、語りかける:ここではこがさんの著書を参考にした意味で用いています。

 

 

耳で聞くおはなしを「素話」「ストーリーテリング」、あるいは「語り」と呼びます。素話、ストーリーテリングはストーリー(物語)を伝えることに主軸があり、語りは語りかける行為そのものまでを表す言葉です。

『保育に生かすおはなしテクニック〜3分で語れるオリジナル35話つき〜』(著=こが ようこ/小学館)

 

『保育に生かすおはなしテクニック〜3分で語れるオリジナル35話つき〜』保育園や幼児教室で約15年間働いた経験もあるこがさんは子どもたちと密に付き合い、語りかけてきたという。「日常にお話がころがっている、誰もがお話を語る……そんな世の中って素敵じゃない?」とこがさん

 

 

 絵本作家への道

こがさんは二人の女の子を育てながら、保育園や幼児教室で働き、また学校や地域での読み聞かせやお話会などのボランティアも積極的におこなってきました(お二人ともすでに成人しています)。

 

 

そんな経験を生かし、2000年から絵本と昔話を運ぶ手配り新聞『サマーサンタクロース』を隔月で刊行しています。A5サイズの小さな紙面には、わらべうた、簡単なお話など、小さな子どもと遊べるものがいくつも紹介されており、すぐにでも使えそう。絵本コーディネーターとしての、こがさんお勧めの絵本も紹介されています。定期購読を申し込むことができます。

 

 

そして、子どもの頃から空想好き、文章を書くのが好きだったというこがさんが、絵本作家への扉をノックしたのは同じく2000年ごろのことでした。『ねぎぼうずのあさたろう』シリーズ(福音館書店)の作者である飯野和好さんの「飯野和好おはなし絵本塾」に通うことを決め、絵本の勉強を始めたこがさん。絵本づくりの勉強を続けるうちに、こがさんの作品を飯野さんが出版社に紹介してくださったそうです。その時の作品は絵本にはならなかったということですが、その出会いをきっかけにして、月刊『おおきなポケット』(福音館書店)などの連載が決まり、現在の仕事につながったのだとか。

 

 

その後、2011年にこがさんが文章を手がけた初めての絵本『あたし おねえちゃんなの』(文=こがようこ、絵=スティーナ・ヴィルセン/クレヨンハウス) が発売されました。

 

左『あたしおねえちゃんなの』。こがさん自身は一人っ子。兄弟がほしくてたまらなかったという。朝、ゴミ出しに行くお母さんに「赤ちゃんが捨ててあったら拾ってきてね」とお願いしていたのだとか。右はきなちゃんシリーズ。「きなちゃん『こしょこしょきなちゃん 10にんのきなちゃん』(作=こがようこ/童心社)

読んでいるうちに、「子育て、楽しんでね。大丈夫、大丈夫」とこがさんが近くで応援してくれている気持ちになるから不思議。現在も定期購読することができる。右上のサンタクロースはお子さんが子どもの頃描いてくれたものだそう 

こんなに小さなサイズの紙芝居舞台があるのですか?と驚いていたら、ご主人お手製だそう

 

 

 わらべうた絵本がもたらす温かな時間

保育や幼児教育にたずさわり、自らも語り手であるこがさんは「語りかける」ことの大切さを伝えていきたいと言います。

 

 

“おかあさんからあかちゃん(特に言語を獲得するまで)への働きかけで大切なのは、目と目を合わせること。微笑みかけること。言葉をかけること。指と指、体と体がふれあうことだと思います。わたしはこれらを「語りかける」行為と考えています。”
(サマーサンタクロースより引用)

 

 

こがさんの作品の根底に流れているものは、「語りかける」ということ。この度、出版されたわらべうたシリーズはまさにそのものという感じです。

 

 

『わらべうたでひろがるあかちゃん絵本』シリーズ

『ねーずみねーずみ どーこいきゃ』

『へっこぷっと たれた』

『おせんべ やけたかな』

(構成・文=こがようこ、絵=降矢なな/童心社)

 

新しいのになつかしさを感じる絵本。降矢ななさんの絵はずっと見ていても飽きない。登場人物の表情や仕草をじっくり観察していると発見があって楽しい 

手遊び歌で楽しんでからわらべうた絵本の読み聞かせに。ママやパパにこちょこちょされたり、おててを食べられたり、子どもたちは大喜び。この絵本があればわらべうたがより身近なものになるように感じる

この絵本は、口に出して読むだけで、優しいリズムが流れます。それは赤ちゃんも大好きなリズムです。

この三冊は、わらべうたの温かさ、素朴さはそのままに、そして、わらべうたを知らない世代のママたちにも受け入れやすいようにと作られたのでしょう。

 

 

子どもと一緒に、わらべうたで遊ぶ時間というのは、こんなにも穏やかに、ゆったりと過ごせるのだということを、この絵本たちが大人たちに教えてくれるように思います。

 

「語りかけられて育った赤ちゃんは無意識のうちに、ここに生まれてよかったと感じ、愛されている喜びを知ることができるようになる」とこがさんは言います。だからこそ、こがさんは繰り返し言います。「いっぱい語りかけて。いっぱいさわってあげてね」と。

 

 

こがさんの絵本は、文章は少ないものが多いのですが、ママやパパの声を通して読むその絵本は、文章以上に赤ちゃんに「大好きだよ。あなたが大切だよ」と語りかけてくれることになるでしょう。

Information

絵本と昔話を運ぶ手配り新聞「サマーサンタクロース」

定期購読はこちらから

おはなしおやつHP

http://www.ohanashioyatsu.com

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この記事を書いた人
山田麻子ライター
横浜市青葉区在住。中学生女子、小学生男子の母。料理の仕事歴25年以上。管理栄養士。森ノオトでの初めての取材をきっかけに、絵本、詩、素話に出会い、その世界の虜に。以来、絵本と飲み物やお菓子の相性を考えるのが楽しみに。図書ボランティア活動、おはなし会のお菓子作りなどに心ときめく。現在の夢は「語り手」になること。 ブログ:スマイル*ごはんを始めよう
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