世界的な日本食ブームにのって、日本酒はいま、「SAKE」として世界で注目をあつめています。
そんな日本酒造りを、米作りから、精米、醸造まで一貫しておこなっている「栽培醸造蔵」が神奈川県海老名市にあります。全国的にみても珍しい、言い換えれば貴重ともいえる存在が、江戸安政4年(1857年)創業の歴史ある泉橋酒造株式会社です(以下泉橋酒造)。
社名にも冠されている“酒造りは米作りから”という信念のもと、米作りに情熱を傾けているのが代表取締役社長の橋場友一さんです。
泉橋酒造で米づくりからの酒造を始めたのは、1996年のことです。
1995年に食糧管理法が廃止され、米の流通が自由になったことがあります。海老名周辺は耕地丹沢山系の相模原流域で、ミネラル豊富な地下水にも恵まれている農業に適した地帯です。約1200年以上前から耕地開拓がされていることからも証明されています。
橋場さんは1996年から自社田で酒米の栽培を開始し、1997年以降は地元生産者とつくる「さがみ酒米研究会」の会員農家と連携し、栽培面積を増やしてきました。2015年の栽培面積は40ヘクタール、うち15%に当たる6ヘクタールを自社栽培しています。環境を守り安全な酒米をつくるために、無農薬もしくは減農薬栽培に取り組んでいます。
さらにこだわるのが自社精米です。
田んぼで精米が始まっている」と、橋場さん。
日本酒業界では精米作業を委託するのが一般的なのですが、田んぼごとの酒米の状態を確認するためにも、自社精米は大切な作業と考えています。
しかも、酒米収穫後の乾燥や調整が精米に影響することもあり、最高の状態で精米するために、乾燥機まで導入しました。いかに精米作業には繊細さを要するのかわかります。
米作り、精米の次はいよいよ醸造です。
ここで泉橋酒造がこだわるのが「全量純米酒」であること。古代より米と米麹を原料として造られてきている伝統を、次代へとつなぐためです。実は、世の中に出回っている日本酒のうち、純米酒の割合は2割程度で、残りは醸造アルコールが添加されています。
橋場さんは「一般的に田んぼ一坪でできるお米がごはん25杯分で、純米酒1升分に相当する」と教えてくれました。一升瓶からみえる田んぼの大きさを想像し、その恵みに感謝できますね。
泉橋酒造の「全量純米酒」のラベルに描かれているのが、シンボルマークの赤トンボです。
橋場さんは「田んぼの景色を保つのは、とても大変」と言います。
高齢などで米作りをやめる農家が増え、トンボが飛び交うような田んぼが減りつつあるからです。赤トンボが飛び交う環境は、美味しくて安心していただける酒造りにもつながるとの想いから、泉橋酒造では赤トンボをシンボルマークとしているのです。
橋場さんが米作りから酒造りを始めて20年。ここ10年で米作りがますます楽しくなったと言います。
「機械は使ったその場から古くなるけれど、人の手は使えば使うほどどんどん上手くなる」
「ノウハウは会社についても、技術は人につく」
と、機材の導入はもちろん、米作りの技術の向上にも積極的に取り組んでいます。また、横浜のように小規模農家が多いところではまだほとんど見かけないICTの技術も自社栽培地に導入を始めました。
これからも泉橋酒造では、地域の農家とともに、米と向き合った伝統的な酒造りを後世につないでいってくれることでしょう。
hitomi’s point
橋場社長の「日本酒は、一緒に呑んでいる相手よりも酒の知識があるのが最高のつまみ」と名言とも言える言葉で始まった今回の講義。実はお酒に弱い小池も、橋場さんの話に興味が尽きることがありませでした。
しかも帰路、偶然一緒になり、スペシャルプライベート講座(?)まで受けてしまいました。そこでしみじみ感じたのが、橋場社長の田んぼ愛。「お酒売るよりも、営業よりも、農業!」と言うほどなのですから、その愛、深すぎます
泉橋酒造
住所:神奈川県海老名市下今泉5-5-1
※冬の酒蔵見学ツアーも実施中です。
酒のあさの(浅野商店)
下谷本町本店
住所:横浜市青葉区下谷本町525
藤が丘店
住所:横浜市青葉区藤が丘2-4-5
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