青葉区は、都市部でありながら、暮らしのそばに緑がたくさん残されています。横浜市で最多数の 232もの公園があり、公園を自主的に管理するグループ「公園愛護会」の数も 196と最多。街路樹の本数も市内ではダントツのナンバーワンで15,414本、個人邸を彩るガーデニングも盛んで、青葉区はまさに「花と緑のまち」と言うことができます。
そんな青葉区らしさを、次の世代にもつなぎながら、多世代が交流していくまちづくりをしていくことを目的に、2018年度よりNPO法人森ノオトと青葉区が協働で「フラワーダイアログあおば~花と緑の風土づくり~」を実施しています。この事業を通してたくさんの「対話のタネ」をまくことで、区民が主体となって花と緑の風土づくりを実現していくためのアイデアを集めてきました。
2020年2月14日の「花と緑の地図づくりワークショップ」には、スタッフも含めて39人が参加。はじめに、これからのフラワーダイアログ事業の展望について、森ノオトの事務局長で事業責任者の梅原昭子から説明をしました。
フラワーダイアログでは、今後「花端会議」を広げていく活動をしていきます。花端会議とは、現代風の「井戸端会議」のことです。井戸に代わって、花壇や樹木を囲みながら、老若男女、多世代が暮らしや地域のことを情報交換して、おしゃべりをする機会が増えればいいな、という思いを込めています。
この「花端会議」という言葉を青葉区に持ち込んだのは、あおば花と緑のサポーターの代表を務めている齋藤世二さんです。2018年8月4日におこなったフラワーダイアログあおばのキックオフイベントで壇上から区民に呼びかけ、ゲストの三上真史さんも「定期的に花端会議、みなさんと一緒に実現していきたいです」と呼応し、区民から大きな拍手で賛同を得たのでした。
その花端会議を広げるきっかけとして、「公園の日」をつくったら? という発案がなされたのは、昨年2月8日におこなった「フラワーダイアログ(対話交流)~青葉区らしい花と緑の風土づくりとは?」でのことです。「パーク」として語呂がよい毎月8日・9日を「公園の日」と名付けて、公園に出向くことから始めたらよいのでは、という提案が青葉区在住の女性からなされました。
こうした経緯を梅原から説明し、さらに「青葉区は横浜一公園の数が多い。つまり、公園のまちと言ってもいいのでは。堂々とそう言いましょう!」との声に、会場がドッと盛り上がりました。「公園のまちだから、公園の日がある。公園で過ごす日、公園で何らかの出会いがある日。まずは、区内の公園を大切な風土としてめぐってみてほしい。そこから一歩踏み出して、花と緑を通じたまちづくりに関わってほしい」と梅原は呼びかけました。
「花と緑の地図づくりワークショップ」では、青葉区を「たまプラーザ・あざみ野エリア」「江田・市が尾エリア」「藤が丘・青葉台エリア」「田奈・恩田・こどもの国エリア」の4つに分けました。それぞれのエリアの地図を大きく印刷したものを囲んだ4グループで、それぞれに情報を出し合う作業をしました。
最初は、居住エリアごとのグループで地図に追加する情報を集め、30分ほど話してから、グループを自由に行き来して、別のエリアの情報についても話し合う、という流れにしました。普段なじみの少ないエリアでも、ふせんに書かれた情報を見て「行ってみたい」という気持ちになったり、誰かの思い入れが深い情報を知って共感したり。
「駐車場のフェンスを上手に使っているモッコウバラ」「江田駅前の歩道橋の早咲きの桜の木」「イヌホオズキの群生地」「イチョウの黄葉がすごいカバ公園」「地元に住んでいる方が、公園で遊ぶ子どもたちのために、木を剪定したり、花を植えたりして、緑と花でいっぱい!」「秘密の花園公園。個人邸の庭のようにカワイイ鉢物が置いてあったり、道具もこだわり」「谷戸沿いにキンランの群生地がある」……
この日、地図の上に集まった情報は200以上。この情報を生かし、森ノオトでは、今までまちにあまり興味のなかった人でも、巡ってみたくなるような、「青葉区の花と緑の地図」づくりに取り組んでいきたいと思います。
続いて、青葉区役所周辺の緑化・美化ボランティアをしている「あおば花と緑のサポーター」の海上くに子さんより、活動の紹介がありました。
「あおば花と緑のサポーター区庁舎グループは20名ほどで区役所周辺の花壇の手入れを中心とした活動をしています。昨年のような猛暑の時には、水をたっぷりやらないと花が枯れてしまうので、1日おきに水やりに行き、3人で1時間ほどかかりました」と話し、きれいに手入れされている花壇を維持する苦労ややりがいについて話した海上さん。花をみてきれいだなと思ったらまずは一声かけ、次にお手伝いの一歩を踏み出せるようになれば、こうした活動が持続していくのではないかと続けました。
地図づくりの後は、オーガニックなガーデニングを進めている造園家で、株式会社Q-GARDEN代表取締役の小島理恵さんの講演を参加者みんなで聞きました。
小島さんは「ガーデンづくりを通じて、地域の景観・環境の向上に貢献する」ことをポリシーに、自然の摂理にしたがった植栽を、土づくりから時間をかけておこなう造園家です。箱根にある「星の王子様ミュージアム」をはじめ、公共施設、マンション、飲食店、個人邸まで幅広く手掛けており、オーガニックガーデナーの育成にも力を注いでいます。
小島さんは海外のガーデン事情にも詳しく、英国やオランダの事例を数多く紹介。ヨーロッパでは、その地域の環境に即した植物を植えることにより、農薬を使わないオーガニックガーデンが増えているそうです。オランダで最も注目を集めるガーデナーのピート・アウドルフ氏の手がける庭を紹介しながら、「枯れた姿も美しい、タネになった姿も美しいというコンセプトで、手入れは一回切り戻すだけで終わり、という庭がトレンドになっています」という新潮流を教えてくださいました。
小島さんは、「これからの都市公園における緑の役割として、健康活動・コミュニティ醸成、防災・減災、環境保全、経済・活力の維持向上があると、国交省では提唱しています。台風の大型化や、災害が頻発している昨今、都市公園が災害時の緩衝地帯としての役割を果たすなど、レジリエント(柔軟で強靭)な仕組みづくりが求められます。花を植えることはコミュニティづくりにも役立ちます」と、花と緑のまちづくりの社会的意義を定義しました。
小島さんは最後に、米国・ニューヨークの貨物列車の廃線跡地につくられた公園「ハイライン」の運営方法について紹介しました。「自分が公園づくりの担い手になることから、植物のオーナーになる、寄付で支えるなど、さまざまな参加の仕方があります。何か特別なことをしなくてもいい、お金を出すことでも支えることができるんです」という、寄付文化が根付いている米国の市民参画のパワーに圧倒されました。
会の最後に梅原が「青葉区での活動から、最後は世界の市民参画のあり方まで知ることができ、励みになった」とまとめ、フラワーダイアログの次年度に向けてのスタートを切ることができました。
地域や自然と調和したまちをつくる。人々が一歩を踏み出すきっかけをつくる。
「フラワーダイアログあおば~花と緑の風土づくり~」事業では、2020年度に、地域での花と緑を通じた対話のきっかけをあちこちでつくっていきます。
フラワーダイアログあおば~花と緑の風土づくり~についての記事は、こちらのリンクからご覧ください。
https://morinooto.jp/special/hanatomidori/
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