“地域ではたらく”をテーマにした森ノオトの「Hello local work」プロジェクト。
はたらくを通じて、わたしたちが暮らす地域の今、未来を見つめます。
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「働いていなくてもいなくても預かる」ーー。子育て中の当事者の方たちの一時保育のニーズを受け止め、NPO法人ピッピ・親子サポートネット(ピッピ)は、2005年に一時保育に力を入れた認可保育園・ピッピ保育園を開きました。
それから17年。いつも目の前の一人の“困った”に向き合いながら、新たな事業を立ち上げ、現場から制度を変えていく提言も続けています。
今年、新たに仲間を迎えたいと、「ピッピおやこの広場はっぴぃ/一時預かりのおへや ここ・はっぴぃ」「となりのいえ」「デイサービスさくら」「ピッピ保育園/ピッピみんなの保育園」の4事業所がスタッフを募集しています。
スタッフを募集する事業所のメンバーに集まっていただき、ピッピではたらきながら感じていることをお聞きしました。
目の前のひとりのために、事業が生まれる
ー ピッピでは、ニーズに合わせてさまざまな事業を立ち上げてきました。どんなふうに事業が生まれているのでしょう。
橋本富美子さん(となりのいえ): ピッピ保育園ができて1年目に、自閉症の子がいたんです。その子が養護学校へ進学していったときに、その子に「学校と自宅以外の居場所をつくりたい」と考え始めました。そうして、「となりのいえ」ができたんです。 一人の「困った」から事業を立ち上げ、そこから制度設計のための声をあげ、制度化につなげます。そして、「横浜市障害児居場所づくり事業」(今の放課後デイサービス)が生まれ、多くの人に利用してもらう状況をつくってきました。フットワーク軽くさまざまなことを展開するところがピッピの魅力です。
その子は学童を卒業しましたが、いまはピッピの相談支援事業で関わっています。保育園で出会ったかわいい男の子が今では20歳すぎの成人になりました。事業を自分たちでつくるからこそ、長い期間その子と関わり続けることができます。
ー 橋本さんがはたらく「となりのいえ」は、 小学1年生から高校生まで多年代の子どもたちが通います。障害の有無を問わず、障害の種類は肢体不自由や発達障害とさまざまな子どもが利用しています。 外遊びや屋内での造形活動など、スタッフも子どもと一緒になって放課後の時間を楽しんでいます。
小山俊一さん(となりのいえ): 大学の4年間ピッピの学童保育でアルバイトをしていました。卒業後は別の場所に就職しましたが、地域に根ざした自由な保育と、学齢期の面白さへ魅力を感じていて、昨年ピッピへ戻ってきました。今は学童保育の責任者として、常勤で働いています。 ピッピで働くことの面白さは、高学年の子どもも多く、幅広い年齢の子どもに接することができることです。子どもの主体性を大事にして、ルールがあまり設けられていないので、毎日子どもがいろんな姿を見せてくれることが楽しいですね。
佐藤恭子さん(となりのいえ):放課後デイに通う子は、環境の変化に弱い子どもも多いので、スタッフの入れ替わりが少ないピッピでは「いつも同じ大人が迎えてくれる」という安心感を感じてもらっているようです。
堤彰子さん(となりのいえ): 私はここでおやつを作ったり、子どもと一緒に遊んだりして過ごしています。人に食べてもらうこと、喜んでもらうことが大好きで、最初はそれ仕事でやっていいの?って驚いたほどです(笑)。となりのいえには障害がある子もいて、年齢層もさまざまです。法人全体を見ても、事業所は違っても0歳から高齢者までを見ているから、はたらくメンバーが自分が一番「できる」ところにアクセスできます。 みんなで話し合いながら決めていくので、みんなの意見が違う時には大変さもありますが、ゆるっと着地していく、だんだん調整していくということも学んできました。
少人数だからこそきめ細やかに
ー デイサービスさくらは、定員6人の小規模の高齢者向けのデイサービスの事業所です。住宅街の一軒家に小規模保育や多世代交流スペースを併設した「大場町みんなのいえ《わたせハウス》」が拠点です。子どもたちやサロンを訪れる方々との交流を大事にし、子どもたちの声が響くまるで家庭のようなあたたかな環境です。
中津淳子さん(デイサービスさくら): 最大で6名の定員なので、利用者さんとスタッフがきめ細やかにコミュニケーションをとれます。お一人お一人の様子が見えて、丁寧に向き合える。入浴もゆっくり入っていただいたり、お話をゆっくり伺えたり。それがとってもいいんです。利用者さんにも「今が一番楽しいわ」って言っていただいているんですよ。本当にいい場所で…こんなふうにスタッフが自慢しちゃうくらいです。
ー 認可保育園のピッピ保育園、ピッピみんなの保育園も、それぞれ定員30人未満の小さな保育園です。スタッフ間のコミュニケーションもとりやすく、子どもたちを一人ひとり細やかに見守り、その子に合った保育を意識しています。
鹿野奈津子さん(ピッピみんなの保育園): 世の中に幸せな子どもが一人でも増えたら社会全体がよくなるんじゃないか。そんな思いから児童福祉に携わりたいと、保育士になりました。学校を出て小規模な保育園で働きたいと考えていたところ、ピッピと出会いました。
実際働いてみるとピッピはすごく地域に開かれた保育園で。一時保育では地域のさまざまな親子が出入りし、ただ預かるだけではない親子支援があり、利用者の方に寄り添っていると感じました。はたらきながら出産、子育ても経験し、他のお母さんたちと大変さを分かち合うことができたりと、苦労したことも仕事に生かせていると思います。
はたらく場は自分の居場所にも
ー 親子の広場はっぴぃ、一時預かりのここ・はっぴぃは、2010年にたまプラーザ・あざみ野のエリアで開設しました。乳幼児の親子の広場での見守りのほか、一時預かりもおこなっています。
皆川典子さん(はっぴぃ/ここ・はっぴぃ): 元々ピッピ保育園の一時保育の補助で働いていました。2年目の2010年、あざみ野・たまプラーザのエリアに、「一時預かりを併設した親子でいつでも遊びに来れる広場を立ち上げないか」と声をかけてもらったんです。
「広場ってなんぞや?」「自分にできるのかな」という不安が先立ちました。しかし自分たちで自分たちのやりたい事業をおこす。自分たちのはたらき方も自分たちでマネージメントすることがとても面白かったです。 広場立ち上げの際に、保育士の資格もとりました。
一時預かりのニーズは瞬く間に広がり、2011年にもう一室借りて『一時預かりのおへや ここ・はっぴぃ』を開所しました。今は広場と一時預かりを利用者さんが上手に選びながら、利用していただいています。
古賀恵子さん(はっぴぃ/ここ・はっぴぃ): 結婚して引っ越して、親戚が周りにいない環境で子育てをしていたころ、「広場はっぴぃ」ができたんです。産後は自分で思っていたより不安感があったのですが、広場に足を運び、自分の気持ちを吐き出すことで、気持ちが落ち着くこともあって。こういう場っていいなって思ったんです。
「恩返しをしていこう!」と思ってはたらき始めたんですけど、自分が支援するよりは、自分が受け取ることの方が大きいことに気づきました。
自分の居場所にもなりますし、訪れる親子からエネルギーをもらっています。子育てで困ったときには相談にのってもらいました。これはピッピ全体に言えることなんですけど、子どもへのまなざしがあたたかいんです。それをそばで見ていて、「こうやって声かけすればいいんだ!」と自分の子育てにも、とってもいい影響を受けました。
みんなができることを持ち寄って、ちょっとずつちょっとずつ、社会をよい方向に変えている実感があるところも、ピッピの魅力です。
地域ではたらくことの魅力
ー ピッピの各事業所では、自分の生活圏ではたらくことを選んだ人が多いのが特徴です。自分が生まれ育った地域ではたらく、ママ友に誘われて、自分が利用していた広場が今度は職場に。職場の近くで暮らすことを選んだスタッフも。地域ではたらくことの魅力ってなんでしょう。
鈴木恵さん(ピッピ保育園): 小規模で、おうちみたいなところがいいなと思ってつくり上げてきましたが、そう感じてもらえたのかなと実感できることがあります。
かつて一時保育を利用してくれていた大学生の子から「保育園の話を聞きたい」と問い合わせてもらったり、 近所のおばあちゃんが、「きゅうりがたくさんできたから」と持ってきてくれたり。近所ともつながっているし、卒園した後も戻ってきたいと思ってもらえている。
デイサービスさくらに、義理の母が通っているんです。デイサービスでも「自分が年をとったら行きたいな」と思う場をつくっていますが、それは自分の生活圏だからこそ強く思えるのではないでしょうか。 社会全体を変えられたらいいけど、まずは身近なところでやってみて、そこから広がっていけばいいのかなって思います。
ー ピッピ保育園園長の鈴木さんは、下のお子さんが年長のころから働き始めて、最初は自分の子どもを送り出して14時ごろまでの働き方だったそう。お子さんが成長した今は、フルタイムの働き方に落ち着いたと言います。「鈴木さんのように、短時間からスタートして、少しずつ働く時間を延ばして常勤スタッフになったりと、預ける側だけでなく、はたらく人にとっても選択肢があります」と理事長の若林智子さん。
「ピッピではたらく人たちは、価値観や目標を共有できる仲間だと思っています。そんな仲間が近くにいることは心強く、仕事を通して人間関係が、人生が豊かになる、そう感じている人が私のほかにもたくさんいるのではないでしょうか」と若林さんは語ります。
「まずは目の前の一人のために」「まずはこの地域から」。ピッピで働くスタッフのみなさんの、地に足のついた言葉を聞きながら、ここでの仕事は、単なる仕事ではなく、暮らしたい地域をつくることにつながっているんだなと感じました。仲間を募集する事業所は4カ所ありますが、どこでも、つながる思いを感じられることでしょう。
(文・梶田亜由美、佐藤沙織)
NPO法人ピッピ親子・サポートネットは4事業所ではたらく仲間を募集しています。
◆ピッピおやこの広場はっぴぃ/一時預かりのおへや ここ・はっぴぃ
仕事内容:広場での親子の見守り、3歳児くらいまでの一時預かり
資格:不問。子育て支援員研修受講可能な方、保育士資格者優遇、
勤務時間:平日12時~16時、 または 8時15分〜16時半のうち 4時間程度。週1~2日
時給:1040円、交通費〜750円/日(実費)
勤務場所:青葉区新石川2-14-2-101サバスタマプラーザ101(はっぴぃ)102(ここ・はっぴぃ)(たまプラーザ・あざみ野駅から徒歩10分)
問い合わせ:p
広場 045-532-6021(担当:岡田)一時預かり 045-507-6872(担当:皆川)
◆となりのいえ
仕事内容:子どもたちの放課後の遊びや散歩のサポート
資格:不問。子どもの特性や社会福祉に関心のある方。子どもと遊ぶこと、制作活動、おやつ作りが好きな方歓迎
勤務時間:平日14時〜18時、学校休業日8時〜19時のうち3~4時間程度、週に1〜2日。時間応相談
時給:1040円、交通費〜750円/日(実費)
勤務場所:青葉区市ケ尾町719-8 森ビル参番館(市が尾駅徒歩10分ほど)
問い合わせ:学童保育 045-342-7087 放課後等デイサービス 045-974-0229
pptonarinoie@npo-pippi.net
◆デイサービスさくら
仕事内容:介護スタッフ。生活相談員、機能訓練指導員の有資格者も歓迎
資格:介護スタッフは資格不問(介護福祉士、看護師等の有資格者も歓迎)
勤務時間:平日8時半~17時半。週1〜2日、半日ワークからでも可。10時~11時半(看護師・機能訓練指導員)
時給:介護スタッフ1040円、生活相談員等の有資格者1100円。交通費〜750円/日(実費)
勤務場所:青葉区大場町174-280 (市が尾駅、あざみ野駅からバス)
問い合わせ:
sakuraohba@npo-pippi.net
045-777-6762(担当:平元、柳橋)
◆ピッピ保育園/ピッピみんなの保育園
仕事内容:保育スタッフ、調理スタッフ
資格:保育士資格保有者歓迎(働きながら資格取得も可)
勤務時間:平日7時半〜19時半、土曜7時半〜18時半、日祝8時半~17時半。早番や遅番の時間を含めて1〜2時間程度から。
時給:1140円(保育士資格者*別途早遅手当あり)
勤務場所:ピッピ保育園(青葉区荏田西3-1-9、市が尾駅徒歩10分ほど)、ピッピみんなの保育園青葉区市ケ尾町1161-8 くらしてらす2F(1階生活クラブ市が尾デポー)、同徒歩8分ほど)
問い合わせ:
ピッピ保育園
045-910-0662(担当:鈴木)
ピッピみんなの保育園
045-508-9523(担当:鹿野(かの))
NPO法人・ピッピ親子サポートネット
https://npo-pippi.net/
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