12月の手仕事。一年の締めくくりに田んぼでしめ縄作り
12月の手仕事といえば、私は「しめ縄作り」を続けています。
2020年から続く里のengawaでのしめ縄作りは、収穫した赤米の藁(わら)を使ってしめ縄の縄を綯う(なう)ことから始まります。
にぎやかな中でも自分のしめ縄と向き合う時間は、一年間を振り返り、新しい一年に思いをはせるスイッチが切り替わるような時間です。

「出口さん!見て見て!ほら!」

里のengawaに到着すると、しめ縄作りのアレンジ部分を教えてくれる里井美由紀さん(atlier delphi)が弾んだ声で話しかけてくれました。美由紀さんが指さす先を見上げると、そこにはガラス細工のようなつやつやのオレンジ色の実がなった大ぶりの枝が。店主のAlexandre Gerard(通称:アレックス)さんがその枝を軒先に一生懸命縄で括り付けているところでした。

白樺の木に、実のなる違う種類の木が寄生して共存している「やどり木」。私は初めて見ましたが、森の中を歩いているとしばしば見つけられるそう

「かっこいいでしょう!すごく素敵なやどり木が手に入ったから、みんなに見てもらおうと思って!」。

「やどり木」は、一本の木に別の木が寄生した不思議な木の枝で、美由紀さんが持って来たやどり木は白樺の木に、オレンジ色の実がなる別の木が寄生した木の枝でした。

 

参加者が到着するたびにうれしそうにやどり木の説明をする美由紀さんの声を聞きながら、アレックスさんと参加者の常連さんが、しめ縄作りに使う藁の「はかま」を取り除いていました。

里のengawaでのしめ縄作りワークショップは、縄を綯う前の藁のはかまを取るところから体験します。縄を綯う部分はアレックスさんがコツと共にわかりやすく作り方を説明してくれるので、初めて参加する方でも楽しく作ることができます。

藁のはかま取り。慣れてくると稲穂の部分が茎からスーッと抜ける感覚が気持ちいい。アレックスさんは手際よくはかま取りをしていました

私も途中から「はかま取り」のお手伝い。最初はどこまで剥いたらいいんだろう?と不安になりましたが、だんだん加減がわかるように。アッという間にこの日使う分の藁の準備ができました。

60本ずつ束ねられた藁。この日は15人の方が参加しました。3日連続で開催されたしめ縄づくりは連日満席の盛況ぶりだったそう

参加者が集まったところで、アレックスさんが作り方の流れを簡単に説明して、早速しめ縄作りがスタート!まず束にした藁をお湯につけて柔らかくします。手で揉むだけでなく、延べ棒でごりごりとしごくように柔らかくするのがポイント。縄が綯いやすくなります。柔らかくした藁をしっかり結んで一つに束ね、束ねた部分に大きな釘を通したら、田んぼへ移動しました。

お湯に藁を浸し、棒でしごいて藁を柔らかくします。少し心配になるくらい強くしごいても大丈夫。柔らかくなった藁は縄を綯う時にとても扱いやすくなります

みんなで田んぼにビニールシートの上にゴザを敷き、大きな角材を真ん中に置きました。そこに、釘を仕込んだ藁の束をトンカチで打ち付けていきます。

 

縄を固定して霧吹きで湿らせながら縄を綯います。ほとんどの人が初めて経験する工程ですが、隣同士声をかけ合いながら全員縄を綯い、土台となる輪っかができました。わいわいと他愛もない話をしながら手仕事をしていると、昔の人たちはこうして、手仕事をしながらにぎやかに一年を振り返る豊かな時間を過ごしていたんだなぁと温かい気持ちになりました。こんなにゆっくりと青空と太陽の光を浴びる時間も久しぶりだったことに気付きました。

アレックスさんが縄の綯い方を丁寧に説明してくれます。コツを掴めばスッスッと綯うことができます

 

しめ縄の土台になる輪っかができました。初めて作れた時は、自分でも作れるんだ!と感動しました

ここからいよいよアレンジをします。アレンジに使った素材は、赤いレッドブル―ニア、青々とした若松、白いナンキンハゼ、そしてアスナロやヒカゲカヅラ、縄を綯う際に使った赤米の稲穂で仕上げます。

左から、ナンキンハゼ、レッドブル―ニア、若松、アスナロ。アレンジは、どんな角度で配置するか直感でパッと決まる人もいれば、じっくり時間をかけて決める人も。それぞれのペースで作ることができます

同じ素材を使っても一人ひとり表情が違うのが不思議ですが、その人らしいしめ縄ができあがっていきます。

12月とは思えないほどの陽射しの中、ついに全員のしめ縄が完成しました。

水引が入るとグッとしめ飾り感がアップします。クセがつきやすい水引を扱う時は少し緊張しますが、思い切って丸めて、あまり何度も触らないようにするのがコツ

アレックスさんに、しめ縄作りワークショップを始めたきっかけをお聞きしました。

「里のengawaで米作りを始めて、収穫した時に藁がたくさん出て、何かできないかなと思ったのがきっかけだったよ。日本にしめ縄があることを知って、誰か作れる人いないかなと思ったけど、誰もいなかった。だから動画や本を見て自分でやり始めたんですね。ちょうどその時に美由紀さんが、里のengawa に来ていて、面白い!みんなで作ろう!と言ってくれたんです。初回のしめ縄作りをやろうと決まったのは開催の1週間か10日前でした」

しめ縄作りを始めたきっかけを話してくれたアレックスさん。藁を使って今後も色んなチャレンジをしていくそう。「この前は納豆を作ってみたよ!あまり納豆は好きじゃないけど、自分で作った納豆なら美味しいかもしれないと思って。食べたら美味しかった!」とうれしそうに教えてくれました

初めて開催した時の参加者は6人ほどでしたが、2022年は約15人ずつ1日3回開催する人気のワークショップになりました。毎年11月半ばになると美由紀さんのインスタグラムで募集が始まりますので、ぜひ皆さんも手作りのしめ縄作りに挑戦してみてください。

 

しめ縄作りの後は、青空の下で丁寧に作られたobentokanaさんのお弁当を食べました。野菜がふんだんに使われていて、一つひとつのおかずの味付けもバラエティーに富んでいて、見た目もときめく色合い!美味しくてあっという間に食べてしまいました。

里のengawaで作られているkanaさんのお弁当。色とりどりで美味しくてボリュームも満点!毎年人気のお弁当です

お弁当を食べた後は、なんと、みんなでゴザに寝ころんでお昼寝!ここまでがしめ縄作りのワークショップ、とアレックスさんは笑いながら「最高じゃない?」と言いました。田んぼの真ん中で雲一つない青空を見上げ、全身で太陽の温かい光を感じる。なんて贅沢な時間だろう、と、目を閉じて胸いっぱいに少しひんやりとした空気を吸い込みました。一年の締めくくりに、思いがけずご褒美のような時間でした。

美由紀さんとアレックスさん。会うだけでなんだか元気になってしまうお二人。「絶対晴れるんだよね、このワークショップ。すごいよね!」と美由紀さん。今回も素敵なしめ縄づくりを教えてくださり、ありがとうございました!

Information

・里のengawa

HP: https://satonoengawa.com/

Instagram: https://www.instagram.com/satonoengawa/?hl=ja

 

・atlier delphi(アトリエデルフィ)

Instagram: https://www.instagram.com/atelier_delphi/?hl=ja

 

・ obentokana

Instagram: https://www.instagram.com/obentokana/?hl=ja

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この記事を書いた人
出口ひとみライター
青葉区で社会教育に5年間携わり「人が生き生きとしている町」は自分たちで作れることを実感。その後、故郷富山県のアンテナショップで広報・イベント企画の担当を経て独立。富山と横浜2つの「ジモト」がゆるやかに繋がることが夢。星読み、アート、おにぎりが最近の関心事。一男一女の母。
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