出張保育ママエールは、2004年、横浜子育てサポートシステムの提供会員(お子さんを預かる側)の方々からの発案で始まりました。横浜子育てサポートシステムは、安心して子育てができるよう、地域ぐるみでの子育て支援や、仕事と育児を両立できる環境をつくることを目的とした会員制の有償のささえあい活動です。横浜市に本部事務局を置き、地域の中で子どもを預けたり、預かったりすることで人と人のつながりを広げ、地域ぐるみでの子育て支援を目指しています。市民にとても喜ばれているサービスですが、提供会員側の心理として、いきなり知らないお子さんを一人で預かるのは抵抗があるかもしれない。子育てサポートで1対1の保育を始める前に、集団でお子さんを預かる経験をしたら心理的ハードルが下がるのでは?という仮説から立ち上げられたそうです。
同時に、個別での一時預かりだけでなく、自治体の会合や習い事、イベントなどに参加したいが子どもを連れての参加が難しい、または連れて行くことはできても集中して参加できないという声を聞き、需要がありそうだと感じたこともスタートするきっかけになりました。
ママエールでは「出張保育」という名前の通り、おもちゃ持参で依頼者の指定の場所に行き保育を行います。生後6カ月以上の健康なお子さんのみ、横浜市青葉区近隣エリアという指定はあるものの、依頼を受ける保育の目的はさまざま。公共事業・地域活動・子育てサークル活動・料理教室等の習い事など、ニーズに応える形で多くの場に出向いて出張保育をしてきました。スタッフは有償ボランティアという形で保育に携わります。
既に20年近く活動をされている、歴史ある団体ママエール。今回お話をお聞きした藤井さんは、2021年からママエールの代表を務めています。立ち上げメンバーだった、途中参画したものの当初から幹部として活動していた、といった経緯を想像していたのですが、代表になったきっかけは意外なものでした。
「立ち上げメンバーの一人でもある押久保さんに代表就任を打診された時は、『私には無理!』と断っていたんです」。
お子さんが幼稚園に通い始めたこともあり少し時間に余裕ができたため、2007年頃からママエールのスタッフに加わった藤井さん。ただ、ママエール以外にも子育てサポートシステムの提供会員や放課後キッズクラブなどのお仕事や地域でのボランティア活動をしており、ママエール一筋で活動していたわけではありませんでした。なので、なおさら驚いたと言います。
押久保さんはご自宅が近所で、プライベートなことも相談する仲。最終的にはそんな信頼する押久保さんからの「全面的にサポートするから!」という言葉に背中を押されて、話を受けることになりました。
それまでは、自分主体というよりは、中心メンバーが決めたことにならって活動するスタンスだったという藤井さん。しかし代表となってからは、自分が動かしていかなければ!という思いが強くなり、色々なことを調べてスタッフに情報提供したり、こんなイベントをやってみない?こんな仕組みにしてみない?と、活動の幅を広げていくための努力を惜しみません。
「飽きっぽいし、色んなことをやりたがりなんですよね。あとは、考えすぎない・気にしない。『何かにつながるはず!』と前向きに捉えて、まずはやってみることが多いです」。
ママエール代表のお話を受けたのも、そんなスタンスがあったからかなと藤井さんは言います。
「でも、昔からそうだったわけではないんです。子どもが生まれてから、かなりフットワークが軽くなりましたね。ずっと家にいても飽きちゃうから、毎日子どもを連れてどこかしらに出向く癖が付いたんです。青葉区の広報を見て色々なイベントに応募したり、今日は電車を見に行こう!と出かけたり。何か子どもが楽しめる場はないかな?といつも探して、よく出かけていましたね」。
夫は仕事が忙しく、土日も家にいないことがほとんど。毎日お子さん2人を家で世話しているのでは、気分も滅入ってしまう。そんな環境も、藤井さんを活動的にさせた理由の一つだったようです。
地域に恩返しをしていくために
新型コロナウイルスの流行で、ママエールの出張保育もなかなかできない期間が続きました。藤井さんは、活動が忙しくない時期だからこそ、体制を整えたり活動内容を見直したりということに腰を据えて取り組んでこられたそうです。最近では、以前定期的に出張保育をしていた団体からの依頼や保育園の園庭開放のサポートも再開したりと、徐々に活動も活発になってきました。コロナでなかなか人とのリアルなつながりが持てず閉塞感を持っていた人も多かったようで、久しぶりの園庭開放では涙ぐむママの姿もあったそうです。
持ち前のフットワークの良さで、地域活動に参加しながら人脈を築き上げてきた藤井さん。あの団体とコラボしてはどうか、こんな場でも役に立てるのでは、など、ママエールの活動を広げていくためのアイデアは尽きません。ただ、潤沢なスタッフがいるわけではないというのも事実。広報をしすぎても、今のスタッフ体制では受けられる保育の依頼件数が限られています。できることを増やしていくためには、まずはスタッフの増員から、と藤井さんは考えています。
ママエールのスタッフは、下は40代から上は70代の大ベテランまで。いままで世代交代を繰り返しながら長く活動してきました。「自分や自分の子どもはこの地域に育ててもらったから、私も地域に恩返しをしたい」という熱い思いを語ってスタッフになってくれた方もいます。藤井さん自身も、少しでもよいから何か地元で子育て支援ができないかな、と思って関わり始めたのがママエールでした。
異なる世代がつながり、恩返しの連鎖が生まれていく。そんな地域活動の理想型を見た気がします。今後もそんな連鎖が広がり、ママエールの活動をサポートしてくれる仲間が増えてくれたら、と藤井さんは願っています。
とにかく子どもが好き。泣いてても、全部かわいい!
ママエールのスタッフにはどんな方が多いのかを藤井さんに聞いてみました。
「 とにかく、『子どもがかわいい、大好き!』『泣いてても、それでも何でも全部かわいいい!』という気持ちでやっているスタッフばかりですね。ベテランの70代のスタッフなんかは、孫のような感覚で接してくれます」。
長くお付き合いのある団体から久しぶりの依頼があった際には、「あんなに小さかったのに、こんなに大きくなって!」と目を細めたり。出張保育の場はあたたかな空気で満ちています。
出張保育の良さは、複数のスタッフやお子さんと集団で過ごせることにもあります。1対1で泣かれると辛くても、「あらあら、泣いてるね〜」「お友だちが心配してるよ〜」なんて会話しながら過ごすことで、仲間と一緒という安心感を持ちながら保育ができる。保育だけでなく、定例会議などの場も含めた他のスタッフとの交流も、スタッフ同士の息抜きになっているといいます。いきなり登録して活動、ではなく、まずは少しでも興味があれば、定例会を見学したり話を聞いてみるなどして接点をもってくれたらうれしいと藤井さんはおっしゃっていました。ただいまスタッフ、絶賛募集中です!
(取材を終えて)
素直で、軽やかで、自然体。藤井さんとお話していてそんなイメージを持ちました。藤井さんの朗らかな笑顔につられてこちらもつい笑顔になり、とてもあたたかな気持ちを持ち帰らせていただきました。
正直取材前までは、ものすごくビジョナリーでバリバリと精力的に活動されているような方なのかな?と想像していました。「子育て支援団体の代表」と聞くと、どうしてもそんなイメージが先行していたのですが、良い意味でそれを裏切られたなという感想です。
何か世の中の役に立ちたい、お世話になった地域に恩返ししたい。そんな気持ちを持っている方は多いのではないかと思います。でも、「私なんかにできるかしら……」「何かの団体に入って活動するなんて大変そうだし、責任も伴うし……」と躊躇してしまい、なかなか一歩踏み出せない方も多いのではないでしょうか。
私自身もその一人でした。でも取材を終えて、「地域貢献、社会貢献なんて大それた考えは捨てて、小さなスタートでよいのかも」なんて心が軽くなりました。そしてその一人ひとりの小さな一歩の積み重ねが、地域を良くしていく大きな力につながるのだと感じました。実際に藤井さんも、フットワーク軽く動いてみることで、どんどん活躍の場を広げてこられたのですから。
*本記事は、独立行政法人福祉医療機構の<WAM助成2022>として実施した取材記事です。
出張保育ママエール
公式ブログ https://mamayell2021.blogspot.com/
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hoiku_mamayell@yahoo.co.jp (ママエール代表 藤井様宛て)
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